「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」では、紙オムツの宅内処理等に関する提案を優先課題として2018年度から求めている。パナソニックの「分離型紙オムツ処理による介護負担低減」は、その一つ。使用済みオムツから汚物を分離させ、オムツはゴミとして回収する方式を提案する。介護施設での導入を想定しており、重量や体積の低減をデータで計測し、使用感や導入意向をアンケートで検証する。

パナソニックの「分離型紙オムツ処理による介護負担低減」に用いるオムツ処理機のイメージ。使用済み紙オムツと水と塩化カルシウムを一緒に撹拌して紙オムツと排泄物を分離する(資料:パナソニック)
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使用済みオムツから汚物を分離する「固形物分離タイプ」

 国土交通省では紙オムツの下水道への受入に向けた検討を進めている。この一環として、「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」では、2018年度から紙おむつの宅内処理に関する提案を優先課題として求めている。宅内での高齢者本人や介護者の負担軽減を可能とする住宅・サービスや、高齢者向けの有料老人ホームなどでスタッフの介護負担軽減を可能にする施設・サービスなど想定する。パナソニックの「分離型紙オムツ処理による介護負担低減」は、この課題に対応する提案だ。

 国土交通省は2018年3月に公表した「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討ロードマップ」の中で、3つの処理方式を示している。パナソニックの提案は、固形物分離タイプに当たる取り組みだ。紙オムツから汚物を分離させ、紙オムツはゴミとして回収する方式だ。

国土交通省が示した紙オムツ処理方式「固形物分離タイプ」のイメージ。トイレ個室内で使用済み紙オムツから汚物を分離し、紙オムツはゴミとして回収する(資料:国土交通省)

 パナソニックが紙オムツの宅内処理に注目したのは、2014年ころに遡る。同社の女性社員がユーザー視点で新規商品やアイデアを提案する「女子会」の中でテーマに上がった。「汚い」「臭い」「かさ張る」を問題点として挙げ、「触りたくない」「コンパクトに」「臭い無しで清潔に」を実現する方法として、使用済み紙オムツ処理機の開発がスタートした。

 開発が加速したのは、2018年3月に国交省が検討ロードマップを公表したことだ。4月には「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」が優先テーマとして宅内紙オムツ処理を取り上げた。パナソニックは、試作機の作成と効果の検証を本格化するため、同事業に応募して、採択に至った。

 同社が開発する宅内紙オムツ処理機のポイントは、一旦、排泄物と結びついた高吸水性ポリマーを、再び水と分離させることだ。そのために、塩化カルシウムを採用した。

 パナソニックが採用した処理プロセスは、次のようなものだ。

  1. 使用済み紙オムツを処理機に投入
  2. 塩化カルシウム水溶液中で撹拌し、高吸水性ポリマーを失活させる
  3. オムツが含有する水分を脱水
  4. 脱水後のオムツを袋詰め

 4.で袋詰めしたオムツは、まとめて廃棄する。この段階で紙オムツの重さや体積を3分の1程度に減らせるという。処理機から排出する段階で袋詰めしているので、処理後のオムツに触れなくてよいので清潔で、作業性も良い。排泄物を含む排水は下水に送る。

パナソニックの紙オムツ処理機のイメージ。塩化カルシウムを用いて紙オムツの高吸水性ポリマーから水を分離する方法は、処理プロセス(上段)のようなイメージだ。設備イメージ(下段)は、使用済みオムツと水と塩化カルシウムをオムツ処理機に投入して、撹拌・脱水することで、水とオムツを分離する(資料:パナソニック)
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1時間以内に1フロア分をまとめて処理

 今回の事業では、処理装置を高齢者施設に導入することを想定している。施設での活用イメージは、次のようなものだ。

 各フロア10~20室程度の施設で、装置は各フロアにある汚物処理室に設置する。オムツの回収は、1日に4~6回、定刻に実施する。回収してきた使用済みオムツは、処理室でまとめて処理する。装置は大型の洗濯機のようなイメージだ。水、塩化カルシウム、使用済みオムツを投入して撹拌。紙オムツの高吸水性ポリマーと塩化カルシウムが反応して、紙オムツと水分を分離する。

 「作業の流れを想定して、処理時間は1時間以内、できれば30分程度を目標にしている」。開発を担当する同社メカトロ・システム技術部資源循環技術課の松田源一郎課長は解説する。オムツと水が分離できたら脱水し、排泄物を含む排水は下水へ流す。処理済みのオムツは、処理機で袋詰めした状態で排出される。

 処理後のオムツは重量や体積が3分の1程度になる想定だ。これを袋にまとめて屋外のオムツ保管室に搬送する。1台当たりの処理数は、1日100個くらい。1フロア20室で、5回交換すると100個程度になる。仮に使用済みオムツ1個の重量が300gなら、処理後は100g程度になる。使用済み紙オムツ100個の重さは30kg、処理後は10kgになる。これらを屋外に運び出す作業負荷が低減され、臭いの問題も改善したいと考えている。

高齢者施設での利用イメージ。各フロアで定期的に実施するオムツ回収に合わせて、回収した使用済み紙オムツをまとめて処理する。所要時間は1時間程度を想定している(資料:パナソニック)
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オムツ処理機で汚物と紙オムツを分離。汚物は下水に送り、紙オムツはゴミとして回収する(資料:パナソニック)
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アンケートは介護スタッフと施設運営者を対象に実施

 実証には、データ計測とアンケートを用いる。データを計測する項目は、以下の項目だ。

  1. 重量変化:処理前後で重量を比較
  2. 体積変化:45リットルのビニール袋に入るオムツの数で、処理前後を比較
  3. 臭気変化:汚物処理室やオムツ保管室の臭気を比較
  4. 作業時間:オムツ処理機を使用した場合に作業時間がどのように変化するかを確認
  5. 使用済みオムツを屋外に搬出する作業回数の変化を確認

 アンケート調査は、介護スタッフと施設管理者を対象に実施する。介護スタッフには、オムツ処理機を使うことで、「使用済みオムツの廃棄作業が改善されるか?」「作業環境(臭気など)が改善されるか?」を尋ねる。また、オムツ処理機の取り扱い方法で、分かりにくい点や使いにくい点があるかも確認し、装置の改善に生かす方針だ。施設管理者には、オムツ処理機の導入意向や、オムツ処理機1台が想定する入所者数として適しているのは、各部屋か、1フロアか、施設全体かを確認する。