凸版印刷が提案する「居住者見守り訪問介護サービス」は、3種類のセンサーを使って、生体データや居室内の移動データを取得し、居住者を見守るサービスだ。いずれのセンサーも居住者にストレスを掛けないよう配慮している。さらに、取得したデータを分析して、訪問介護事業者のサービスの向上や業務の効率化に役立てる。

凸版印刷の「居住者見守り訪問介護サービス」の概要。3種類のセンサーを使用する(資料:凸版印刷)
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プライバシーを確保し、ストレスを感じさせないセンサー

 内閣府がまとめた2018年版高齢社会白書によると、65歳以上の一人暮らし世帯は増加傾向にある。2000年頃は約300万世帯だったが、2015年には約600万世帯に倍増した。2040年には約900万世帯に増えると推計されている。こうした高齢者の一人暮らしを支援するのが凸版印刷の「居住者見守り訪問介護サービス」だ。

 「居住者見守り訪問介護サービス」は3種類のセンサーを用いる。睡眠の質を測定する「Sensing Wave」(センシングウェーブ)、室内の人の動きを検知する「人感センサー」、踏むと位置が分かる「ロケーションフロア」(位置検知床)だ。ベッドにSensing Wave、各部屋に人感センサー、脱衣所やトイレにロケーションフロアをそれぞれ設置する。Sensing Waveとロケーションフロアは、凸版印刷が開発した製品だ。3つのセンサーはいずれも、利用者のプライバシーを確保しながら、ストレスなく目的のデータを取得できるよう配慮している。

 Sensing Waveは、マットレスや布団の下に敷いて使用する。厚さ10~20cm程度のマットレスの下に敷いても機能するので、利用者は違和感なく使うことができる。横になっている利用者の心拍数や呼吸数などの生体データを非接触で取得し、睡眠状態をリアルタイムで解析する。入床・離床、寝入っているか目覚めているか、眠りが深いか浅いかなどを把握できる。

マットレスや布団の下に敷いて使用する「Sensing Wave」(センシングウェーブ)。利用者の心拍数や呼吸数などの生体データを計測し、これらを分析して眠りの質を評価する。コードでつながっている白い箱にはマイコンを内蔵しており、シート部のセンサーで取得した信号を解析する(資料:凸版印刷)
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高齢者施設などでの利用イメージ。複数の利用者のデータは、それぞれ同社のクラウドサーバーに送られる。介護スタッフは、パソコンやスマホで利用者の状態を把握できる(資料:凸版印刷)
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踏むとセンサーが反応するロケーションフロア

 日中の見守りには、人感センサーとロケーションフロアを使用する。人感センサーは居室に用いて、利用者が在室しているか否かを把握する。

 脱衣所やトイレには、ロケーションフロアを用いる。ロケーションフロアは、床材と一体となったセンサーで、床に敷いて使用する。圧力センサーを組み込んでおり、踏むとセンサーが反応する。しかも、圧力が加わると発電する仕組みで、その電気を使ってデータを送るので配線工事は不要だ。

 居住者は日常生活の中で床を歩いているだけで、その位置情報を発信できる。検出した位置情報はクラウドサーバーで管理するので、どこにいても確認ができる。脱衣所やトイレなど事故が起こりやすいが、カメラを設置するのは抵抗がある場所の見守りとして有効だ。床の広い範囲で反応があると、転倒の可能性があることも分かる。キッチン、お風呂、トイレ、脱衣所など、人感センサーとロケーションフロアのどちらが適しているかも検証する。

「ロケーションフロア」(位置検知床)の構成。センサーを組み込んだデバイス層をベースに、衝撃吸収層、樹脂基材層、コート層の4層で構成する。いずれも凸版印刷が独自に開発した素材を組み合わせている(資料:凸版印刷)
ロケーションフロアの設置イメージ。見た目は木質系の床材と変わりない。クッション性があり、転倒などのけがの防止にもつながる(資料:凸版印刷)

行動や眠りの質を「見える化」して訪問介護者にアドバイス

 利用者の行動データを分析し、凸版印刷から訪問介護者に報告する。訪問介護者は、このデータを基に利用者のライフスタイルにあわせた訪問介護を検討する。

 日中の見守りのイメージはこうだ。

 「お手洗いの回数は?」「入浴の回数は?」「日中の活動量は?」と気に掛けている。これまでは利用者にヒアリングで確認していた。「訪問介護見守りサービス」を利用すると、ヒアリングをしなくても把握できる。「お手洗いの回数は正常」、「入浴は介助が必要」、「日中はもう少し運動が必要」といった、利用者の状態を把握した上で、アドバイスができる。

行動履歴データを活用した日中の見守りイメージ。お手洗いの回数、入浴の回数、日中の行動量など、ケアマネージャーや介護スタッフが知りたい情報を把握できる(資料:凸版印刷)
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 訪問介護者が訪問できない夜間については、行動や睡眠の質を「見える化」して、訪問介護者に伝えてサポートする。

 例えば、浅い眠りの日は、「何か不安や心配事があり、ぐっすり眠れていないのではないか」と尋ねるよう促す。さらに、浅い眠りが続くようだと「日中の行動意欲が低下し、運動不足になり、深い眠りが減る可能性があります」「日中の運動不足は、筋力の低下につながり、日常生活が困難になる可能性があります」などのアドバイスをする。

 また、介護スタッフが常駐する福祉施設に用いた場合、介護負担の軽減や業務効率の改善を期待できる。例えば、利用者の離床時に介護スタッフへ通知する機能などを活用すれば、介護スタッフは就寝時間中の適切なタイミングで声掛けができる。さらに、眠りが浅い利用者に対しては、「自宅に帰りたいのか」、あるいは「何か心配事を抱えているのか」といった声掛けをして利用者の悩みを把握するきっかけとなり得る。

 「高齢者の独り暮らしを健康面でサポートしながら見守り、訪問介護者もサポートする。自立して暮らしたいという高齢者のニーズを満たしながら、健康寿命を延ばすことで医療費を抑えることができれば、社会課題の解決につながる」と凸版印刷の生活・産業事業本部環境デザイン事業部の佐々木彩奈氏は語る。

計測データの分析と利用者アンケートで効果検証

 採択プロジェクトでは、10世帯を対象とする。3つのセンサーを用いてデータを計測し、訪問介護者と連携して訪問介護サービスの質の向上と業務の効率化を確認する。

 取得したデータから、利用者の行動を把握し、より良い生活を送れるように、良い睡眠が得られるように、日中の行動についてのアドバイスや悩み事の解消に努める。アドバイスを実施した前後で、利用者の睡眠の質や日中の行動に変化があるかを分析することで、効果を検証する。また、利用者には定期的にサービスに対する意識調査を実施する。ウェブアプリの使い勝手や、生活習慣に対する意識の変化などを確認する意向だ。

実証事業で計測できるデータと、その分析で分かること(資料:凸版印刷)
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