サンヨーホームズの「サンミットひたち野東ステーションフロント」は、IoTシステムを導入したシニア向けの分譲マンションだ。同社はこのマンションに、家電の使用状況を読み取るIoTエネルギーセンサーや、人感センサーを用いた見守り通報システムを導入。管理運営スタッフや、離れて暮らす家族の見守り負担を軽減する。

2つの既存サービスを利用

 東京駅からJR常磐線で1時間弱。茨城県「ひたち野うしく駅」直結の「サンミットひたち野東ステーションフロント」は、高齢者(シニア)専用の分譲マンションだ。鉄筋コンクリート造、地上14階建て、総戸数は226戸。24時間常駐する専門スタッフや、医療施設の併設を始め、シニア世帯が住まうのに適した設備が整えられている。

サンミットひたち野東ステーションフロントの完成イメージCG。シニア向けのマンションであるため、専門スタッフが24時間常駐する。管理と運営を担うのは、グループ会社のサンヨーホームズコミュニティ(資料:サンヨーホームズ)

 開発・分譲販売するのは、サンヨーホームズ。同社はこのマンションにおいて、IoT技術を用いた見守り負担軽減の仕組みを提案する。

 見守りシステムを構成する設備は、大きく分けて2種類ある。

 ひとつは、家電の使用状況から異常を検知するエネルギーセンサー。もうひとつが、人感センサーによって、生活リズムの異常を検知する通報システムの導入だ。

 どちらも既製品であり、サービスも開始されている。同マンションではこれらの設備を組み合わせて採用し、見守りシステムとして活用する。

本事業で提案されているシステムの全体像。(1)家電の使用状況から異常を検知するエネルギーセンサー(2)生活リズムの異常を検知する通報システム。2種類の見守りサービスが導入される(資料:サンヨーホームズ)

住まい手に意識させることなく見守り

 家電の使用状況を確認する技術には、東京電力エナジーパートナーの「エネルギーセンサー」を使う。

 エネルギーセンサーは、分電盤の内部に設置されるIoT機器。家庭にある分電盤の主幹を測定し、どの家電がいつ、どれくらい使われていたかを、独自の機器分離アルゴリズムによって推定する。推定された電力の使用状況は、インターネットを通じて集計。WEBアプリから閲覧できる。住まい手はもちろん、離れて暮らす家族など、最大3人まで確認可能だ。

 サンヨーホームズマンション事業本部東京マンション支店建築部長の下條直樹氏は次の様に話す。

 「例えば夏場、猛暑が続いているのにエアコンが稼働していない場合は、熱中症の危険性がある。または、普段、就寝しているはずの時間帯に家電が頻繁に使われている場合には、痴呆行動などの可能性も考えられる」。

 こうした異常と考えられる状況を、エネルギーセンサーが検知した場合には警告を発信。離れた家族へのメール送信のほか、常駐する管理スタッフにも通知がなされ、駆けつけと安否確認を行うのだという。

エネルギーセンサーを用いた見守りサービスの概念図。機器とサービスは、東京電力エナジーパートナーによるもの(資料:サンヨーホームズ)

 ウェアラブル式の端末などを日常的に身に着ける必要がないので、住まい手の負担は小さい。また、送信される情報は家電の使用状況のみであるため、確認カメラなどに比べ、プライバシーを侵害する恐れも少ない。住まい手は日常生活の中で意識することなく、家族や管理スタッフに安否情報を送信している格好だ。

生活リズムの異常を検知する

 通報システムには、アイホンの高齢者向け集合住宅システム FAGUS(ファガス)を使用する。

 FAGUSはマンション用インターホンと連携する緊急通報システム。モニター付きインターホン親機を始め、共用廊下に「警告表示灯付きの玄関子機」、玄関には在室を知らせる「在室ボタン」、トイレ・浴室から寝室など各所に「緊急呼び出しボタン」、廊下のトイレ付近には「ライフセンサー」といった機器が設置され、これらが連携して異常を感知、緊急通報を行う。

 中でも特徴的なのがライフセンサーの存在だ。

 人感センサーであるこの機器は、同マンションにおいてトイレ付近の廊下に設置される。居室間の移動やトイレに入る場合などには、このセンサーが反応して動作を感知する形だ。

 「例えば、在宅が確認されているにもかかわらず、長時間センサーが作動していなければ、トイレが使われていない可能性が生じる。生活上、トイレへの移動が全く行われない状態というのはありえない。生活のリズムを鑑みた上で、ある程度の時間を超えて住まい手の動きがみられない場合は、異常の発生が考えられる。このように、ライフセンサーは異常の早期発見に役立つと期待されている」(下條氏)。

 センサーが一定時間、住まい手の動きがないことを検知した場合や、住まい手が手動で緊急通報を行った場合には、常駐するスタッフが安否確認を行う。

アイホンのFAGUSを使った通報システムのイメージ。管理運営室の親機やスタッフのPHSが通報を受け取り、駆けつけや安否確認などを行う(資料:サンヨーホームズ)

将来的には医療機関との連携も視野に

 サンミットひたち野東ステーションフロントでは、このように住まい手の異常を自動検知、または能動的に通報可能なシステムをマンション全戸に導入する。管理・運営室で異常を一括受信することで、素早い対応と見守り負担の軽減が実現できるものと期待されている。

 本事業において検証するのは、おおまかに次の2点。

  1. 全居住者の1年間の異常データの収集と分析。
  2. 実証後の負担軽減に関するアンケートの実施。

 下條氏は「事業によって検証されるデータは、分析を施した上で、将来に向けて有効な活用方法を検討したい」と話す。

 将来的な展開として、改修計画での採用、医療機関連携による健康増進のアドバイスや介助対応など、本事業を元に、更なる負担軽減への取り組みが計画されている。

 サンミットひたち野東ステーションフロントは、2020年冬に完成・入居の予定だ。