大五が提案する「住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅プロジェクト」は、既製品のホームIoT技術を導入した住宅をグループ工務店と協力して施工し、その住宅事例を核にして、ツール制作やセミナーの実施などの、普及・啓蒙活動に繋げていこうとするものだ。未だIoT技術に対して苦手意識の強い工務店に、災害対策としてのIoT技術の重要性を説き、普及促進に寄与する目的がある。

IoT技術を用いた防災レジリエンス住宅

 このプロジェクトを実施する大五(大阪府)は、住宅用建材と設備機器を扱う商社だ。設計施工を行う部門も存在し、工務店としての機能も併せ持つ。特にパナソニックとの繋がりが強く、扱う商材の多くはパナソニック製の機器が占めているという。

 大五がこの事業で提案する「住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅プロジェクト」には、大きく分けて2つのテーマがある。

 ひとつは、高い防災性能とIoT設備を備えた住宅を建築し、その有用性を実証すること。もうひとつは、その建築事例をIoT技術およびレジリエンス住宅の普及・啓蒙活動に利用しようと考えるものだ。

 ひとつめのテーマに向けて、大五が提案している防災レジリエンス住宅の具体的な内容から見ていこう。

 まず、耐震等級3、耐風等級2の基本性能に加え、防災瓦・シャッター雨戸などの防災仕様を備えた住宅を建築。これにレジリエンス住宅としての設備を整える。

大五が提案している防災レジリエンス住宅の構成。耐震・台風性能に優れた構造に、各種防災仕様を備える。太陽光発電と蓄電池、ヒートポンプ式の給湯器などがレジリエンス機能として備えられ、IoTシステムが各種機能を管理・コントロールする(資料:大五)
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 レジリエンスとは、「復元力」や「弾力性」といった意味を現わす用語。特に住宅防災の分野で使われる場合には大規模災害などにより、インフラが停止した場合でも持続可能な、住宅設備や生活維持機能を指す。

 本プロジェクトの住宅の場合、太陽光発電と蓄電池、停電時にも操作可能なトイレ、断水時でもタンクの湯が使用可能なヒートポンプ式の給湯器、いわゆるエコキュートなどの機器が、災害後の暮らしを支える設備として導入される。

 IoT技術は、主にこれらの設備機器を管理運用するために利用する。

 例えば、気象予報と連動して太陽光発電を効率良く動かしたり、災害情報や気象警報を住まい手のスマートフォンに通知することで、シャッター雨戸の遠隔操作を促したりする、と言った具合だ。

 大五の営業企画部課長の柴雄一氏は次の様に話す。

 「2018年に近畿圏に大きな被害をもたらした、台風21号と大阪府北部地震。当時、被災を目の当りにして、レジリエンス住宅の必要性を実感した。防災設備や電力の創蓄などをコントロールできるIoT技術が、既製品として普及段階に入ったことで、レジリエンス住宅の建築は、これまで以上に容易になった。普及に向けての取り組みを始めるタイミングは今だと考えている」。

住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅の概念図。住宅における防災機能とレジリエンス機能をIoTシステムが繋ぎ、管理統合する仕組みを示している(資料:大五)
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 また、災害による非常時以外にも、住まい手の利便性を高めるものとして、IoT技術は日常的に活用される。具体的には、外出先からの戸締まり確認や玄関ドア・窓の開閉監視、照明や家電の遠隔操作など、主に防犯対策の向上や子供の見守りなどに役立てる。

パナソニックとの協力体制で臨む

 IoTプラットフォームには、パナソニック製の「AiSEG2」を使用する。

 AiSEG2は、パナソニックが開発・販売しているホームIoTシステムの中核機器だ。家電及び、住設機器メーカーの大手として知られる同社製品の連携と並行してオープン戦略を強化し、2020年度は他社協業を28社37機器の連携まで拡大している。電気設備の一部として導入可能な手軽さから、既に住宅会社・工務店による導入事例も増えてきている。使用電力計測を自動化したHEMS対応住宅分電盤「スマートコスモ」や設備機器をAiSEG2が連携することで、電気の見える化だけでなく太陽光で発電した電気をかしこく活用できる「自家消費」機能も充実している。

AiSEG2の導入イメージ図。AiSEG2と設備機器が連携することで、ホームオートメーションや、電力の創蓄連携を実現する。この図版はパナソニックが公開しているもので、大五が予定している防災レジリエンス住宅の構成とは部分的に異なる(資料:パナソニック)
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 IoT設備機器の導入と運用に際しては、パナソニックとの協力体制で臨む。

 これについて柴氏は、「IoT技術に関して、現状では自社の担当者の知識も十分とはいえない。サポートも満足いくものとはならないだろう。まずは、パナソニックの全面的なサポートを前提とすることで、関心を示した住宅会社・工務店に安心感を与え、導入のハードルを下げる考えだ」と話す。

 業務上のパナソニックとの強い繋がりを活用した格好だ。

 既製品のAiSEG2を通常の電気設備工事の延長として導入を促し、導入に際してはメーカーの全面協力を仰ぐことで、住宅会社・工務店の抵抗感を抑制する。この考え方が、2つ目のテーマ「IoT技術およびレジリエンス住宅の普及・啓蒙活動」に繋がっていく。

セミナーや勉強会の実施で普及拡大を目指す

 大五は、住宅会社・工務店の組織「安心住宅サポート“住ま~と”」を抱えている。加盟企業は、2020年現在でおよそ200社。2009年の住宅瑕疵担保履行法の施行をきっかけに、主に取引先を中心とした住宅会社・工務店の業務をサポートするため組織した。新しい法律への対応や申請業務、新建材や新技術の登場など、近年益々負担の大きくなる工務店のために、グループ企業を対象にした効率化ツールの制作やセミナーの実施などを行って来た。

 IoT住宅についても、今後グループ内で情報共有しつつ、セミナーや勉強会による普及・啓蒙活動を実施する予定だ。

大五が過去にグループ企業に向けて行った、工務店向けツールとセミナーの資料。将来的にはIoT技術についても同様のセミナーや勉強会により、普及拡大を目指す(資料:大五)
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 「中小工務店に対して、IoTなどの最新設備機器をどれだけわかりやすく説明できるか、そして必要性を感じてもらえるか、がポイントとなる。パナソニックさんと一緒になって、アピールしていきたい」と柴氏。

データ収集とヒアリングから普及に向けての課題を抽出

 本事業での目標棟数は23棟。工務店としての大五本体の他、大五の安心住宅サポート“住ま~と”グループに所属する地域工務店のうち、特にパナソニックとの繋がりの強いパナソニックビルダーズグループの17社が設計と新築工事を行う。

本事業の実施体制を現わす図。大五グループの所属企業のうち、パナソニックビルダーズグループ17社を選抜して、各社1棟以上を目標に設計施工を分担する(資料:大五)
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 事業で検証しようとするのは、ライフスタイル毎の必要エネルギー量の把握やIoT設備に使用状況などだ。IoTシステムからのデータ収集と分析のほか、住まい手へのアンケート調査により検証する。

 そのほか、施工を経験した住宅会社・工務店へのヒアリングも行い、普及拡大に向けての課題の抽出に生かす。