建材や家電、住宅設備の組み合わせによって新たな製品やサービスが登場している次世代住宅。ここでは、センサーやスマートロックといった要素技術に基づいて分析した最新動向を紹介する。

 基調講演では一色正男先生に省エネを主目的にスタートしたスマートハウスが、IoT技術を使ってさらに様々なサービスを組み合わせて「次世代住宅」へと変化している、という話をいただきました。ここでは、IoT技術を活用した新しい製品やサービスの動向について、お話ししたいと思います。

 国土交通省が2016年度に実施した「IoT技術等を活用した次世代住宅懇談会」では、今後取り組むべきテーマとして6項目を挙げました。

  • 高齢者・障がい者等の自立支援
  • 健康管理の支援
  • 防犯対策の充実
  • 家事負担の軽減、時間短縮
  • コミュニティの維持・形成
  • 物流効率化への貢献

 国交省のサステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)でも、この6項目に「その他」を加えた7項目を取組テーマに設定しています。

消費者ニーズが高い「高齢者・障がい者自立支援」や「子どもの見守り」

IoT技術を活用したサービスに関するアンケート調査の結果
(資料:国土交通省「平成28年度住宅市場整備推進等事業」として実施した調査結果から)
[画像のクリックで拡大表示]

 次世代住宅懇談会では、消費者アンケートも実施しております。6項目のテーマに沿って、それぞれ十数件のサービスを例示した上で、消費者の方に5段階評価で、「利用してみたいか?」を尋ねる、利用意向調査です。ここでの6項目は、先ほどの6項目と少し違っていて「コミュニティの維持形成」や「物流効率化への貢献」の代わりに、「子どもの見守り」「防災・危機管理」が入っています。

 項目ごとに、利用意向の高いサービス3件をグラフにまとめてみました。利用意向が高い項目は、「防災・危機管理」や「高齢者・障害者自立支援」「子供の見守り」などです。

 「高齢者・障害者自立支援」では、「介助なしで利用できる風呂・トイレ設備」が44.7%と非常に高くなっています。「子供の見守り」では、「GPS機能付きキッズ用携帯」が44.4%で非常に高い。「防災・危機管理」では、「防災情報アプリ・災害情報提供サービス」43.7%、「避難所情報などの一括情報提供」が41.2%と4割を超えました。

 このようなニーズに対して、現実にはどのような製品やサービスが提供されているのか、活用されているIoT技術で分類しながら、具体例を報告していきます。

あらゆる分野のサービスを支えるセンサー技術

 次世代住宅の新しい製品やサービスに登場するのが「センサー技術」です。あらゆる分野の製品やサービスを支えている技術と言えます。

 高齢者・障害者の自立支援に活用している例としては、介護施設などで、部屋の各所にセンサーを付けて、入居者の行動を見守り、危険なところに行った場合にアラートを出すサービスが登場しています。入居者の安全管理や施設職員の負担軽減を図るものです。将来的には、住宅分野への参入や転用が期待されます。

 子供の見守りでは、電車の改札を通ったら親にメールで知らせてくれるサービスや、住宅の中でもカメラやセンサーを使って帰宅した子供を検知したらメールで親のスマホに伝えるサービスがあります。

 さらに、これまでにないサービスとして「赤ちゃんの見守り」が登場しています。ユニファという名古屋の会社が開発した「るくみー午睡チェック」というサービスです。赤ちゃんの胸元にバッチ型のセンサーを付けて、昼寝の時の体の傾きなどを感知して、保育士のタブレットに情報を送ります。うつぶせ寝の事故などを防止する狙いです。

 健康管理は、会津若松市でヘルスケアをテーマにした市民参加型のスマートシティ実証実験が進んでいます。レシピデータ、バイタルデータ、睡眠のデータ、服薬データ、健診データなどを管理するオープンプラットフォームを整備するというものです。これらを使って、食事のメニューの提案、保険指導、健康増進・管理に必要な情報提供、薬の服用状況のモニタリングなどに活用します。

 薬の服用については、大塚製薬が飲むだけで自動的に服薬情報が記録される薬を開発しました。極小センサーを組み込んだ製剤とパッチ型のシグナル検出器、専用アプリを組み合わせて、患者の服薬状況を記録し、スマートフォンなどのモバイル端末を通じて医療従事者や介護者と情報共有するというものです。

センサーが胃液と反応すると信号を発し、検出器を介してクラウドにデータを蓄積する
(出典:日経ビジネス 2017年11月27日号 時事深層)

 住宅のセキュリティ分野でもセンサー技術は使われています。窓にセンサーを張っておくと、振動を検知して登録したスマホにアラートを出す製品です。既存の窓に張るだけで、セキュリティの体制が組めるということで、導入しやすいサービスです。

 防災・危機管理では、地震が起こった時の建物の状況をセンサーでモニタリングして建物の状態を判断するサービスが登場しています。NTTファシリティーズの「揺れモニ」はその一つです。元々、中高層ビルに適用していた技術を低層建物にも適用できるようにしています。構造躯体に加え、外壁、天井など非構造部材の被害予測も追加しました。

スマートロックと宅配を組み合わせた新サービス

 次の技術はスマートロックです。

 玄関扉のサムターンのところに取り付けて、スマホを使って遠隔から鍵を開けられる製品なども登場しています。賃貸住宅の内覧の際に鍵の受け渡しがいらなくなるため管理業務の効率化を目的に導入されているケースがあります。また、民泊でも活用されています。こちらも、鍵の受け渡しが不要になるので、業務の効率化が図れます。

 スマートロックと宅配やハウスクリーニングを組み合わせたサービスも海外では登場しています。不在時でも遠隔でカギを開けられるので、宅配やハウスクリーニングの事業者が訪問した際に鍵を開けて荷物を受け取ったり、ハウスクリーニングのサービスを受けたりします。サービスを受けている間、部屋の中の様子を確認できるようウェブカメラもサービスに組み込んでいます。

 同様のサービスは日本でも始まっています。スマートロックなどのIoT製品を開発しているライナフ(東京都千代田区)は、スマートロックを全戸に配備した賃貸マンションで、宅配や家事代行サービスを提供する5事業会社と提携して「サービスが入ってくる家」プロジェクトを開始しました。宅配、クリーニング、家事代行、買い物代行などの宅内サービスを提供します。

ライナフはスマートロックと宅配や家事代行サービスを組み合わせて「サービスが入ってくる家」を提供する
(出典:日経コンピュータ 2018年2月15日号 画像提供元:ライナフ)
[画像のクリックで拡大表示]

 次はドローンです。事例として紹介するのは、ローソンと楽天、福島県南相馬市が協力した実証実験の例です。取り組んでいるのは、ローソンの店舗から移動販売車に商品を運ぶサービスです。店舗を構えるのが難しい地域では、移動販売車が活躍しています。ただ、移動販売車には温度が高いものを置けないので、温かい商品を届けるのに、ドローンを活用しているという事例です。

 最後に紹介する注目技術はAI(人工知能)を搭載したスマートスピーカーです。2017年秋くらいから非常に話題になっています。代表的な商品としては、アマゾン・エコーとグーグル・ホームが日本でも発売されています。ほかにもLINEやソニーなど、色々な会社がスマートスピーカーを提供しています。

Amazon.com社のAIスピーカー「Amazon Echo」が開拓した市場を狙って、Google社、Apple社、日本のメーカー各社など多数の企業がEcho対抗のAIスピーカーを発売、または発売を予定する。カッコ内は、地域の明記がない場合は米国での発売時期を指す
(出典:日経エレクトロニクス 2017年11月号 写真:各社提供)
[画像のクリックで拡大表示]

 スマートスピーカーでどのように暮らしが変わるのでしょうか。例えば、朝起きた時に「今、何時かな?」と、話しかけると「7時ちょうどですよ」と答え、「朝の音楽をどうする?」と尋ねられて「お願い」と答えると、音楽が流れる。「窓を開けますよ」「睡眠時間は6時間半ですね」というような事を、お知らせしてくれる。こんなサービスを、かんたんな操作で受けられるようになります。

 また、AIの技術を使った家電の先端事例として、シャープの冷蔵庫を紹介します。AIとIoTを組み合わせた「COCORO KITCHEN」というサービスに対応しています。冷蔵庫にある食材に応じてお勧めメニューを紹介してくれる。しかも、冷蔵庫内にどんなものが入っているかというのは、スマホアプリで登録した情報があって、そこでどんなものを買ったかというのをチェックしておくと、買い物リストとして、中の食材が把握できる。賞味期限が切れそうな食材は「そろそろ使った方が良いですよ」ということでそれを使ったレシピも提案してくれる。こんなサービスです。

 このように、単体の技術によって提供される製品やサービスが、だんだん組み合わさって、新しいサービスが生み出されています。さらに、スマートロックと宅配など、IoT技術とリアルなサービスを組み合わせて、これまであまり意識されていなかったようなサービスも登場しています。これは、消費者の側がニーズに気づいていないようなサービスといえます。いわば「気付きを与えるサービス」といえる。消費者の満足度の高い成熟社会では、「気付きを与えるサービス」でニーズを掘り起こしていくことが期待されています。