「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」は2018年度までに4回の公募を実施し、8件のプロジェクトを採択した。2019年度を迎えるに当たり、改めて事業の内容や評価のポイントなどを、評価事務局を担当する日経BP総研の桑原豊・上席研究員が説明した。

 「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」は、2017年度にスタートして、2018年度で2年となりました。2019年度も事業を継続の予定です。ここでは、この事業の内容と評価のポイントなどをご説明したいと思います。

 この事業では、IoT技術などを活用して、以下に掲げる取組テーマに該当する住宅・サービスを実現しようとして、実用化に向けた課題・効果などの実証事業を行うプロジェクトを補助の対象としています。取組テーマは下記の7テーマになります。また、対象となる事業の種類は、新築住宅における技術の検証、改修した既存住宅における技術の検証、技術の検証のみの3つのパターンになります。

事業の種類と取組テーマを示した図(資料:国土交通省)

 選定方法ですが、提案いただいた内容を、まず学識経験者などからなる「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)評価委員会」を開催して採択候補を選定します。これを基に国土交通省が採択案件を決めて、発表します。次に建物を建設しますが、この後に行われる「検証」がこの事業のポイントです。これは、実際に住宅やサービスを使ってみて、その効果を検証していくわけです。

公募から建物建設、検証実施、報告にいたるまでの流れを示す図(資料:日経BP総研)

技術の検証とは

 技術の検証について、詳しく説明します。

 例えば、新たなサービスが家事負担を軽減する提案であれば、そのサービスによって家事の負担がどのくらい減ったかを、家事の頻度や所要時間などで定量的に示します。あるいは利用者が「これだけ便利になりました」とアンケートなどで評価して検証する方法も考えられます。

 また、住宅以外の用途の施設で実績のあるシステムを住宅に転用できるかを検証することも対象です。実際に採択されたプロジェクトとしては、介護施設で実績のある遠隔健康管理システムを、戸建て住宅に転用できるかを検証する事業が採択されています。

 さらに国交省では、紙オムツの下水道への受入に向けた検討を進めています。この一環として、この事業では、2018年度から紙オムツの宅内処理に関する提案を優先課題として提案を求めています。宅内での高齢者本人や介護者の負担軽減を可能にする住宅・サービスや、高齢者向けの有料老人ホームなどでスタッフの介護負担軽減を可能にする施設・サービスなどを想定しています。

 国交省では2018年3月に公表した「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討ロードマップ」の中で、3つの処理方式を示しています。「固形物分離タイプ」「破砕・回収タイプ」「破砕・受入タイプ」です。2018年度には、2件の提案が採択されています。

国土交通省は「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討ロードマップ」の中で3種類の紙オムツの処理方法を設定した(資料:国土交通省)

不採択となる主な理由

 2年間で8件のプロジェクトが採択されました。各プロジェクトが7つの取組テーマのいずれに対応しているかを一覧にまとめています。1つのプロジェクトで複数のテーマに採択されたものもあります。

採択プロジェクトと取組テーマの一覽(資料:日経BP総研)

 一方、採択が見送られたプロジェクトがある訳ですが、主な不採択の理由を5つご説明します。

  1. 実証方法が記載されていない。提案によって住宅や住生活の質が向上することは書かれているものの、その効果を実証する方法が抜けている場合です。実証方法としては、導入する機器の使用状況をデータ分析したり、利用者にアンケート調査を実施したりすることが考えられます。提案の際には、実証方法を必ず記載してください。
  2. 先行する類似の事例との違いがない。すでに同じようなサービスが存在しており、プラスアルファの部分がないと、先導性や創意工夫があるとは認められません。ただし、既存のサービスや技術を利用するものであっても、使い勝手の改善やコストの削減など独自の課題を設定した提案であれば採択の可能性があります。
  3. 家電のみで住宅に係らない。ポータブルまたはウェアラブルの機器だけで完結していて、住宅や住宅設備が関係しない提案は不採択となります。
  4. 提案の段階で、実際に運用上のサービスを行う事業者が決まっていない。アイデアのレベルで実現可能性が低いと判断されると不採択になります。一緒にプロジェクトを進めるパートナーを探しておいてください。
  5. 個人情報の取り扱い方法が記載されていない。個人情報を取得するケースが多いと思いますので、実証段階のみならず、実用化段階も含め、個人情報の保護に配慮し、その取り扱い方針を決めておいてください。

 採択プロジェクトを発表した際に公表している「評価結果」には、「次回以降の公募に対する留意点と期待」を記しています。提案を検討する際には、参考にしてください。

 この事業は、住生活関連の新たなビジネス市場の創出や拡大を目的としています。IoT技術の活用によって住宅の市場価値や居住生産環境が向上するような提案を期待しています。2019年度もこの事業は継続される予定ですので、魅力的な提案による積極的なエントリーをご検討ください。