「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」では2020年2月18日、東京コンファレンスセンター・有明(東京・江東区)で「事業者連携から生まれるIoT次世代住宅」と題したシンポジウムを開催した。基調講演には、昨年のシンポジウムに引き続き、神奈川工科大学の一色正男教授が登壇した。次世代住宅における標準インターフェースの重要性から業界の最新動向、そして「人を幸せにする住宅」の将来像について語った。

 最近はいろいろなところで「サステナブル(持続可能)であること」が求められるようになっています。私は現在、住宅にIoT技術を活用することで、サステナブルな次世代住宅や社会を実現できないかと考え、様々な取り組みを進めています。IoT技術を利用して、住宅に関わっている皆さんと一緒に「人を幸せにする住宅」を実現したいと思っているのです。

 住宅は30年、50年、100年と長期に渡って存在するものです。しかし、住宅内の設備は、10年か20年、長いものでも30年といった短い期間で仕様が変化します。実は、IoT技術になるとその期間はさらに短くなり、2年、3年で変わっていきます。携帯電話を5年も使えば、もう古くなるのと同じです。そうしたことを踏まえると、住宅のIoT化においては、長期に渡って使える標準インターフェースを用意することがとても重要になります。

 ちょうど10年くらい前、私はECHONET Liteの標準化と仕様の策定に深く関わりました。500社くらいの企業が集まって議論を重ね、様々な設備機器を繋ぐ「ECHONET Lite」という標準インターフェースの規格をつくりました(2018年のシンポジウム基調講演「IoTスマートハウスへの期待」参照)。これが、日本の住宅におけるIoT導入の歴史のスタートです。

スマートハウスにおけるHEMSの役割と、省エネに対する考え方の変化を示す図(資料:一色正男)
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 上の図を見てください。左側の中央にHEMSと書かれた箱があります。ここは、家の中にあるいろいろな機器の情報通信を一括して受け取る役割をするものです。「Home Energy Management System」を略してHEMS(ヘムス)と呼んでいます。

 図の右側の大きな矢印の横には、「省エネ+創エネ+蓄エネ」とあります。かつて、住宅のエネルギーの管理と言えば、電力消費を抑制のために家電機器を導入する「省エネ」が中心でした。しかし最近は太陽光やガスを使って発電したり、お湯をつくったりと、住宅で「創エネ」ができるようになりました。ただ、創エネは不安定な場合があります。例えば太陽光発電だと、太陽が曇ったり、木などの影で覆われたりすると思うように発電ができないこともあります。そこで、エネルギーを溜めておく「蓄エネ」という技術が注目されました。

 先ほどのHEMSは、「省エネ+創エネ+畜エネ」をうまくバランスさせてコントロールするものです。HEMSに繋がるものには電気自動車、太陽光発電機、蓄電池、家電機器などがありますが、それぞれのメーカーが違っても、全体がきちんと繋がることがスマートハウスでは必須になります。

HEMSやスマートメーターにおける主な標準化対象領域を示す図(資料:一色正男)
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 上の図の右側に、スマートメーターが描かれています。このスマートメーターは主に電力会社が設置して取り扱うもので、電力のやりとり、売買の値などが確認できます。ここで計測しているデータをHEMSのシステムの中でも使えるようにしようと、スマートメーターとHEMSの間にも標準インターフェースを用意することになりました。

 2011年末から大変な論議を重ねた結果、「ECHONET Lite(ISO/IEC14543-4-3)」という国際標準規格をHEMSの標準インターフェースとして採用することが決まりました。通信にはIP(インターネット・プロトコル)を使います。2012年2月、経済産業省がこれらを発表し、日本の家電機器、住設機器、エネルギー機器は全てIPで動くことになりました。IPで動くということは、Internet of Things(インターネット オブ シングス)、いわゆる「IoT」ということです。

 「ECHONET Lite」という規格は、オープンなIPベースのものであり、どこの国でも、誰でも、自由に使うことができます。採用から10年が過ぎ、さまざまな業界がこの規格を整備してきたので、国際的にも優れた規格になりました。

ECHONET Lite機器の市場導入状況とロードマップ(資料:エコーネットコンソーシアム)
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 上の図は、2018年度までのECHONET Lite対応機器の出荷台数の累計を示したものです。2019年時点で約7600万台、2020年に入ってもうすぐ1億台に達しようとしています。このうち約5000万台がスマートメーターです。スマートメーターはすでに多くの住宅に設置されており、時間データや電力データなどが取得できる仕組みが導入されています。スマートメーターを除く、残りの約3000万台は家電・住設機器です。

「繋がる」から「利用する」時代に

ハウスメーカーのスマートハウスへの取り組み事例(資料:一色正男)
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 近年、ハウスメーカーを中心に「太陽光発電+蓄電池+エアコン」などの家電機器を連携させた仕組みを一つのパッケージにして、住宅を提供するケースが見られます。ハウスメーカーによっては標準装備でこれらの設備を付けているところもあり、徐々に住宅への設置導入が進んでいます。

 住宅に関するIoT設備やサービスを提供する企業も増えてきました。例えばパナソニックでは、多くの他社製品と連携するIoTシステムを用意し、住宅建設に携わる皆さんに提供しています。ほかにも、NTT西日本がHEMSとSNSを連携したインターネットサービスを提供したり、様々な住宅設備を扱うLIXILが各種住宅設備機器をHEMS仕様でパッケージングして提供したりしています。

 個別の設備機器もネットワーク化が進んでいます。例えば、文化シャッターが提供する製品のなかには、電動タイプの窓シャッターをリモコンやスマートフォンで動かせることはもちろん、気象警報と連動して自動で閉まるものなどがあります。

 インターネットに関しては、単に「繋がる」という段階から「利用する」という時代になりました。住宅づくりに関わっている方々が住宅のことを一番良く知っていると思いますので、まずは住宅に関連して、いま紹介したようなやサービスがあるということを知っていただきたいところです。その上で「自分だったらこうする」というアイデアを出すことが、これからは重要になるのではないでしょうか。皆さんがそれぞれIoT機器のいろいろな使い方を考えることが、よりサステナブルな社会の実現に繋がるのではないかと期待しています。

HEMS認証支援センターに導入されているスマートメーターの様子(資料:一色正男)
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 私の所属する大学には、ECHONET Lite機器の相互接続を検証する「HEMS認証支援センター」があります。試験用にさまざまなIoT機器を揃えており、実機に接続してきちんと動くかを確認できます。なかでもスマートメーターに関しては、多くの電力会社のメーターを揃えており圧巻の光景です。興味がありましたらぜひ見に来て下さい。

「人を幸せにするIoTスマートハウス」のコンセプト図(資料:一色正男)
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 大学では、住宅がもっとネットワークに繋がり、機器の普及がさらに進むことで「住宅が人を幸せにできないか」ということを研究しています。上の図では、左側のおじいちゃんの家と、右側の息子の家がスマートハウスになって繋がっています。おじいちゃんの日々の生活の動きを住宅の中のシステムが眺めて、活動の内容をAIが判断し、今日も元気だといった「きずな情報」をインターネットで息子の家に送っています。スマートハウスが、人と人のきずなを作り出す可能性を示しているのです。

 この時、人間は何もしていません。住宅と住宅が相互に全てやっているのです。未来の住宅は、このように私たち人間の生活の中に溶け込み、人間が考えていることの一部を代わりにやってくれるようになると想像しています。

 最後に、今日お話したものは全て、オープンなプラットフォームの上に乗っていることを知っておいてください。オープンなプラットフォームの上にあるということは、どこでも、だれでも自由に使えるということです。オープンで広がりのある世界を、これから一緒につくっていきたいと願っています。

シンポジウムでの資料