3年目となった国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)。これまでに採択されたプロジェクトは計11事業。3回目の今回のシンポジウムでは、過去すべてのプロジェクトについて、実施内容と実証成果の発表が行われた。前編では2017年度に採択された事業者5社による報告内容を紹介する。(後編はこちら)

  • 【2017年度採択事業者】
    • ZEH推進協議会
    • 東京建物
    • 芙蓉ディベロップメント
    • 三井ホーム
    • LIXIL

「地域ビルダー次世代住宅先導プロジェクト」/ZEH推進協議会

ZEH推進協議会 補助事業事務局 田代林史氏

 「地域ビルダー次世代住宅先導プロジェクト」の事業の報告をさせていただきます。

 「ZEH推進協議会」は、全国約200社のZEHビルダー、ZEHプランナー、ZEHに関連するメーカーの方々、さらに自治体学識者からなる組織です。その中にIoT委員会を設置しまして、「地域ビルダー次世代住宅先導プロジェクト」に取り組む体制となっています。

 本プロジェクトは、IoT委員会に所属する全国の地域工務店23社とパナソニックを中核とするメーカー各社によって、地域性に配慮しつつ、IoT技術を組み込んだ先導的な次世代住宅の普及・波及を目指すプロジェクトです。

地域ビルダー次世代住宅先導プロジェクトの概要(資料:ZEH推進協議会)
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 この図はサービスの内容を示したものです。居住者はIoT操作モニターや自身のスマートフォンで、外出先からエアコンや照明、宅配ボックスなどを遠隔操作することが可能になります。

 本プロジェクトで提供するサービスによって居住者が得られるメリットとしては、不在時の再配達の削減による物流の効率化、また、住設機器の遠隔操作による家事負担の軽減、時間短縮、さらにドアホンなどを利用した子供の見守り機能、防犯対策の充実が挙げられます。

 技術の検証の方法としては、住宅を建てるビルダー、実際に住まわれる居住者、その他、プロジェクトに組み込まれているモデルハウス2棟に来場された一般客、これら三つの対象者にアンケートを実施しています。アンケート結果は次の様なものです。

ビルダーを対象にしたアンケートの結果(資料:ZEH推進協議会)
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 まず、ビルダーを対象に取ったアンケートですが、経営者、営業担当者からは、IoT住宅を積極的に提案していきたいという考えが読み取れます。また、設計者に比べ、工事担当者の方が、IoT技術に対して難易度が高いと感じているようです。知識不足が原因で、工期が通常よりも長くかかるといった回答もありましたので、今後施工技術者に対する情報発信も必要と考えています。

 居住者に対するアンケートでは、特に物流の効率化、家事負担の軽減について半数以上がメリットありとの回答を得ています。また先日、現地検査で名古屋市の住宅を実際に訪問したのですが、この住宅でも、外出先からのドアホンや宅配ボックスの利用、エアコンの遠隔操作によって実際に家事負担の軽減がなされたそうです。

 一方で、IoT機器を利用する機会が少なく、活用できていない居住者も見られました。

 モデルハウスに来場した方々へのアンケートのからは、「便利そう」「楽しそう」といった声が聞かれました。エアコン、照明などのIoT機器への関心も高かったのですが、金額の高さが要因となって採用希望の方が多いとは言えない結果となっています。このモデルハウスでIoT住宅を初めて知った方が、約半数いらっしゃいました。今後、このモデルハウスを通じて、IoT住宅の認知度がさらに向上されることを期待しています。

 モデルハウスにおいては、これからもアンケートを継続して実施していく予定で、さらなるサンプル数を集めて分析しながら、IoT技術を活用した次世代住宅の普及、波及に貢献していきたいと思います。

Brillia 向ヶ丘遊園/東京建物

東京建物 住宅エンジニアリング部主任 中村匠平氏

 「Brillia 向ヶ丘遊園」は、本先導事業で掲げられた7つのテーマのうち、「物流効率化への貢献」と「コミュニティの維持・形成」、この2つに取り組んでいます。

 背景としては、eコマースなどの発展により宅配物が増えており、それに伴って居住者と宅配業者との受け渡しのタイミングが合わないことによる再配達の増加。もうひとつが、コミュニティの維持・形成に関するものです。このマンションは川崎市多摩区に立地し、土砂災害区域にあります。近年、自然災害の頻度が増えています。重大な事故を防ぐためには、マンション内の住民が仲良く、正しく災害対策を準備しておかなくてはなりません。日常的なコミュニティの維持・形成が非常に重要となります。

Brillia 向ヶ丘遊園で提供するサービス概要(資料:東京建物)
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 提供するサービスの内容について解説します。

 まず、物流効率化への貢献に関してですが、インターホンがインターネットと繋がることによって、居住者は外出中からでもオートロックを解除して宅配業者をマンション内に入れることができます。さらに、各住戸の前には宅配ボックスが設置されています。インターホンを通じて許可を得た宅配業者が住戸前まで荷物を運び、個別の宅配ボックスを利用することで再配達の削減が見込めるサービスです。

 もうひとつのコミュニティの維持・形成に関してですが、マンション内独自の安否確認システム「ゆいぽた」というサービスを利用しています。「ゆいぽた」は、インターホンから操作することができます。また、インターホンは、インターネットを介してスマートフォンやパソコンにも繋がっていますので、外出中の家族だけでなく、お隣に住む方など、マンション内の他の住戸居住者の安否確認も可能です。

 住戸の一番目立つ場所、すなわち一等地にあるとも言えるインターホンが、防災機能の中核となっていることから、日常的に防災への関心が高まり、意識の向上が見込めるサービスと言えます。

 次に再配達削減の検証結果についてお話します。

 Brillia 向ヶ丘遊園では2018年12月に入居を開始して以降、ロビーエントランスを携帯で解錠した回数のログを1カ月単位で取っています。これを基に、再配達の軽減率を算出しました。結論としては、スマホでの解錠回数は月平均20回。再配達の削減率は5%に相当します。

 新たに見えてきた課題としては、ペアリング率の減少が挙げられます。

 これは、「インターホンと携帯電話がどれだけペアリングされているか」ということを表す数値なのですが、入居した当初は60%~70%と高い数値が維持されていました。しかし、現在では40%くらいの数値に下がっています。

 原因の一つには、居住者のスマートフォンのOSがアップデートされることで、その都度、ペアリングが解除されてしまうことがあります。再ペアリングに関して、居住者からは「ちょっと面倒臭い」という意見があり、結果、このペアリング率がどんどん減少しています。この課題に対しては、月1回、マンション内で開催するイベントを通じて、再ペアリングの促進活動を行っていく予定です。

 災害時ICTシステム「ゆいぽた」についても、月1回、安否確認訓練を行っています。安否確認の参加率は75%です。安否確認に使われたデバイスについては、やはりインターホンで安否確認を行っている方が一番多く、67%に上っています。小さな子供でも操作できる、非常にわかりやすいインターフェースですので、居住者の方々からは「使いやすい」と言った声が聞かれます。この結果、高い参加率が得られたものと考えています。

 現在、この安否確認訓練は日曜日に実施しているのですが、「平日に行うとどうなるのか」という点が未検証です。課題として、今後検証していく必要があると考えています。

 防災意識に対するアンケートも行いました。居住者に尋ねたのは次の2点。1点目は「防災意識に対する意識変化」、2点目は「防災に対する具体的な行動」です。結果、63%の方が「防災意識が向上した」と回答しています。具体的な行動例としては、「備品を購入した」「家族間で防災について話し合った」といった回答が多く見られました。

 最後に事業の体制を説明します。本事業はマンション管理組合を中心に、われわれ住宅供給事業者(東京建物、ワールドレジデンシャル、三信住建)と、管理会社(東京建物アメニティサポート)、サービス供給事業者(パナソニック、テンフィートライト)、この4者が連携して実施しています。

健康寿命延伸住宅の取組みについて/芙蓉ディベロップメント

芙蓉ディベロップメント 常務取締役 横山明人氏

 健康寿命延伸住宅の取り組みについて発表させていただきます。

 健康寿命延伸住宅とは、「健康管理」「快適空間」「見守り」の3つをテーマにシステムを構築した新築住宅です。具体的な仕組みとしては、まず温熱性能の高い住宅をつくり、その中で生活する居住者から、日常的なバイタル(体温、血圧、脈拍、心拍)データを取得します。そのバイタルデータを基に、エアコンを自動でコントロールしたり、異常値が出た場合には第三者にアラートで知らせたりします。

 今回の取り組みに際して、各住宅供給会社向けに「IoTの勉強会」というものを、約30カ所、40回くらい開催し、普及促進に努めました。

 事業の実施体制ですが、弊社の他、提携するパナソニックビルダーズの工務店により健康寿命延伸住宅の供給を行いました。そこで収集したデータは、慶應義塾大学の伊香賀俊治教授を始め、各医療法人の先生方に協力を依頼した上で検証しています。

実際に運用した健康寿命延伸住宅の様子(資料:芙蓉ディベロップメント)
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 実際に運用した健康寿命延伸住宅の様子です。資料の左上にバイタル計測ソフト画面の例を示しています。もしバイタルに異常値が検出された場合には、ここで示しているように赤色に表示されます。赤色になった時点で、離れて暮らしている家族などにアラートが発信され異常の発生を知らせます。

 バイタルデータの変化に合わせて自動でエアコンが作動します。また、寝室、洗面所、屋外、リビングといった各個所の温度、湿度も分かるようになっています。

60歳代の男女2名によるバイタルの正規分布のケースレポート(資料:芙蓉ディベロップメント)
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 ここで示しているのは、ある2人の方のバイタルデータの正規分布を示したものです。オレンジのグラフが温熱性能の高い新築住宅、すなわち健康寿命延伸住宅での生活中に得たもので、青いグラフは新築する前に住んでいた古い住宅でのデータです。示しているバイタルは、血圧上(収縮期血圧)、血圧下(拡張期血圧)、体温の3つになります。

 グラフを見ると、健康寿命延伸住宅でのデータの方が、山が高くて幅が狭くなっています。これは、変化のバラツキが少ないことを意味します。血圧は抑制傾向にあり、体温は少し上がっている状態です。年齢が上がるにつれて、体温というのは下がっていく傾向があるのですが、健康寿命延伸住宅に住むことで高い体温を維持できることが示されています。60歳代の男女2人によるケースレポートですが、健康促進に対して、ある一定の効果が認められたと考えています。

 現在、さらに39人以上の居住者からデータを取り続けていますので、引き続き、経過を見ていきたいと思っています。

 今回、39棟の健康寿命延伸住宅を建築し検証を実施しました。福岡地区で20棟、鹿児島地区で12棟、大分地区で3棟、広島地区で3棟、徳島県で1棟という分布で、九州、中国、四国という西日本での実施になっています。

 地域的な特徴に関して感想を述べると、特に鹿児島というところではだいぶ意識が高いように感じました。年齢層については、特に40代がIoTにものすごく敏感な世代でもあり、取り組みに意欲的だと感じました。しかし、この仕組みが本当に必要なのは、50代~60代の住まい手です。こうした世代にも受け入れやすい仕組みを作っていくべきだと考えています。

 居住者へのアンケートも実施しています。アンケートの結果からは、「健康管理の意識が高まった」「血圧の管理が自宅でできるようになって良い」「高気密・高断熱の家でエアコンをコントロールすることで、家の中での活動が増えた」などの回答がありました。一方で、「バイタルデータの測定が面倒臭い」という回答も多く出ています。そういった問題点をよく吟味し、しっかり改善して、次のシステムに繋げていきたいと考えています。

温湿度バリアフリーで "健康・安心・らくらく" ホーム/三井ホーム

 家事負担軽減・時間短縮をテーマとした、「温湿度バリアフリーで "健康・安心・らくらく" ホーム」を報告いたします。

「温湿度バリアフリーで "健康・安心・らくらく" ホーム」の概要(資料:三井ホーム)
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三井ホーム 技術研究所研究開発グループマネージャー 今福昌克氏

 まず、プロジェクトの内容ですが、資料の中央にセントラル空調システムがあります。弊社では「スマートブリーズ」と呼んでいますが、こちらを中心として、窓のセンサーによる開閉状況のモニタリングとか、ハウスダストの見える化を行います。さらに、空調機器や住宅設備、シャッター、照明、給湯器などをスマートフォンやHEMSと連携しています。これらの技術を組み合わせて、家事負担の軽減を目指すものです。

 このシステムによるメリットですが、主に2つが挙げられます。

 1つは、セントラル空調とIoT機器の組み合わせによって、掃除の回数を減らすとことができます。窓センサーで窓の開けっ放しを防ぎ、さらにセントラル空調システムで空気を循環させます。これにより、外からの花粉や粉塵を室内にできるだけ入れないようにします。空調にはPM2.5対応のフィルターも備えていますので、これらによって室内にホコリが積もりづらくなります。ハウスダストなどの見える化で、掃除のタイミングを知らせることもできます。

 2つ目のメリットは、IoT機器の活用で家事の時間短縮を助けることです。例えば、外出先から住宅設備を操作して「お風呂の湯張り」「空調の運転」などを行ったり、タイマー運転やシーン登録機能を用いて家電を一括制御したりすることが可能です。ほかにも、洗濯が終わったなどの家電情報をスマートフォンなどに通知するなど、様々な形で家事の補助を行います。

 実施体制については、三井ホームとハウジングパートナー全9社で行います。全部で85棟の住宅がすべて竣工済みで、こちらで事業の実施を進めています。

 事業の検証方法はアンケートのほか、HEMSからデータを取得する形で進めます。アンケートでは家事負担の軽減やIoTの利便性について回答を集め、HEMSからは空気の清浄度のデータを取得・確認しています。アンケートに関しては、入居から半年後、1年後、1年半後を目安に合計3回行います。

空気環境と掃除頻度に関するアンケート結果(資料:三井ホーム)
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 アンケート結果は1回目が84棟、2回目は31棟の現段階の回答があったものを対象にしています。

 空気環境と掃除頻度に対するアンケート結果では、ハウスダストが減ったと感じた回答は1回目で73%、2回目では84%と、かなり高い評価をいただきました。以前住んでいた住宅と比較した場合の掃除の頻度に関しては、1回目のアンケートではあまり変わらないという方が多かったのですが、2回目では減ったという回答が増えています。これは1回目の実施は新築間もない時期のため、わずかなホコリも気になる住まい手が多く、一方、2回目の実施時には生活環境への慣れもあり、徐々に必要な掃除頻度というのが定まってきたものと考えられます。

 家事の負担軽減や時間短縮の効果に関するアンケートも実施しました。1回目のアンケートでは「IoT機器の機能や操作がわからない、わかりづらい」という声が多かったため、2回目を実施する前に、使い方のマニュアルを配布しました。

 「IoT機器による家事らくの効果を感じるか?」という質問に対しては、1回目、2回目とも3分の2以上の住まい手が、「効果を感じている」と回答しています。「家事負担低減効果の高いIoT機器・技術は何か?」という質問に対しては、1回目、2回目とも「玄関ドアの施錠確認」が最も高い評価を得ました。特に2回目のアンケートでは55%と、かなりの好評価を得ています。玄関ドア以外の機器・技術に関しても、総じて3割から4割くらいの評価を受けています。

 今後、アンケートを進めていく中では、「IoTへの理解の向上」であるとか、「慣れ」による効果を確認していきます。

建材メーカーと地域工務店協働による「省エネ・健康・快適」×「便利・安心・楽しい」暮らしを実現する住宅の普及に向けたプロジェクト/LIXIL

 採択事業の概要と検証内容についてご報告します。

 私たちは、これまで全国の地域工務店のネットワークである「スーパーウォール加盟店制度」を使って、全国に高性能住宅を広めてきました。総棟数は、昨年末でおよそ4万7200棟になります。本プロジェクトでは、このスーパーウォール工法による高性能住宅に、IoTホームLink「Life Assist」(ライフアシスト)を搭載します。

IoTホームLinkの特徴を示す図(資料:LIXIL)
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LIXIL ZEH推進事業部 山本徹氏

 IoTホームLinkの特徴は、家電操作などを行う「HEMSシステム」と、センサーやカメラを監視する「SECURITYシステム」とを連携することにあります。これまで別々だった2つがトータルなシステムとなったことで、IoT機器同士を連携した動作が可能です。

 例えば、「防犯のセンサーの反応で家電やシャッターなどを自動的に開閉する」「玄関ドアを開けるとセンサーが反応して、各種コントローラーを通じてシャッターやエアコン、照明などに一括で操作を指示する」などです。このように、ひとつのきっかけで複数の機器を一括で操作できます。

 こうした連携動作は「アシストルール機能」により、住まい手が独自にルールを設定することが可能です。「朝起きてスマートスピーカーに『おはよう』と声をかけると自動でシャッターが上がり、エアコンと照明がONになる」「外出先からスマホを使って玄関ドアの閉め忘れを確認する」「勤務中に子供の帰宅状況を動画で確認する」など、ライフスタイルに合わせて自由に設定できます。

ユーザーへのアンケート調査の内容(資料:LIXIL)
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 検証につきましては、「防犯対策の充実」「家事負担の軽減」「時間短縮」について、日常生活での利用データやヒアリングを実施します。IoTホームLinkの満足度についてもユーザーにアンケートを行う予定です。例えば「ライフアシストを知ったきっかけ」「満足している点」「ほしい機能」などの回答を分析することにより、IoT住宅の普及促進に活用していきたいと考えています。

 現在、本事業のコンセプト住宅を全国に46棟整備しており、2020年3月までには全棟完了する予定です。その後、各物件の居住者に対して、Webアンケートによるヒアリングを行います。施工事業者にも個別のヒアリングを実施する予定です。

 IoT技術の事業体制は、提携するIoT機器メーカーとアライアンスを組み、協力体制で臨みます。地域工務店に対しては、我々がIoT機器を活用した住宅づくりへの支援を行い、それを基に地域工務店が住まい手に住宅を供給します。住まい手へのヒアリングや検証はLIXILが対応する形で進めています。

(後編の記事はこちら)

シンポジウムでの各社の資料