3年目となった国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)。これまでに採択されたプロジェクトは計11事業。3回目の今回のシンポジウムでは、過去すべてのプロジェクトについて、実施内容と実証成果の発表が行われた。後編では2018年度と2019年度に採択された事業者6社による発表の様子をリポートする。(前編はこちら)

  • 【2018年度採択事業者】
    • 凸版印刷
    • パナソニック
    • LIXIL
  • 【2019年度採択事業者】
    • サンヨーホームズ
    • 芙蓉ディベロップメント
    • 大五

居住者見守り訪問介護サービスプロジェクト/凸版印刷

凸版印刷 生活・産業事業本部 環境デザイン事業部 佐々木彩奈氏

 本日は凸版印刷が開発した「ロケーションフロア」と「センシングウェーブ」を使った、被介護居住者の見守りプロジェクトについて説明させていただきます。

 ロケーションフロアとは、踏むだけで発電してBluetooth通信ができる床材です。ロケーションフロアに加えて、壁付けの人感センサーによって居住者の日中の行動量を把握します。センシングウェーブは、ベッドマットレスの下にいれるだけで睡眠の質を計測できるセンサーです。これによって、居住者が睡眠中であるかどうかが分かり、睡眠の質も判断できます。こうした最新のセンシング技術を用いて、訪問介護を受けている居住者の見守りを実現します。

居住者見守り訪問介護サービスプロジェクトの概要(資料:凸版印刷)
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 これがプロジェクトのイメージ図になります。

 例えばアパートですと、廊下にロケーションフロアを設置します。ロケーションフロアには発電する素子がいくつか入っていて、居住者がここを踏むことで「どの方向に、どれくらいのスピードで移動したのか」が分かります。この技術を用いた製品としては、バスマットのような形をした「マットセンサー」というものもあります。こちらも、床に敷いておくとマットが踏まれた際に発電し、ロケーションフロアと同じようにBluetooth通信ができます。さらに、住宅内各所の壁・天井には人感センサー、ベッドにはセンシングウェーブを設置しています。

 各種センサーは、無線通信によって情報をひとつのゲートウェイに集約します。そのゲートウェイから全てのセンサー情報をネットワーク経由で、凸版印刷のデータベースに集めるシステムになっています。

 個人情報の扱いについて気になる方もいるでしょう。このプロジェクトでは、居住者の住所、氏名といった情報とバイタルデータなどの情報が紐付けされないよう、データベース自体を分けて管理しています。さらに、そこにアクセスできる管理者も限定するなど、情報セキュリティに関しては慎重に取扱いを行っています。

 各種センサーは、それぞれがマイナーナンバーという固有の番号を持っていまして、それを最初にこのゲートウェイとペアリングしておきます。この仕組みによって、仮に隣の家にまったく同じシステムを導入したとしても、隣の家のセンサーからのデータは、こちらのゲートウェイでは受け取りません。住宅環境によっては、Wi-FiやBluetoothなど、目に見えない様々な電波が数多く飛んでいるのですが、そういったデータもこのゲートウェイが受け取らないようにしてあります。

 壁付けの人感センサーは、中に親指くらいの小さな電池が内蔵されていまして、その電池だけで約10年間電池交換することなく動きます。また、ロケーションフロアは自家発電しますので、電源がなくとも半永久的に使えるようになっています。これら一式を導入すれば、利用者はメンテナンスをする必要がなく半永久的に自らの行動データを見ることができるわけです。今回、私たちは「利用者にいかに負担をかけないか」「訪問介護事業者の負担をいかに軽減するか」ということを重要視して、このシステムを作っています。

マットセンサーを用いた実証の例(資料:凸版印刷)
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 この図は実際に使用された例を示したものです。この住宅の場合は、居住者の体調の関係上、施工を伴うロケーションフロアが設置できなかったため、マットセンサーで代替しました。マットセンサーを寝室の出入口と玄関、キッチン、洗面所、ベッドの前に敷いています。

 そのほか、人感センサーをトイレ、玄関、キッチンの天井に設置しました。人感センサーは内臓の電池で稼働するので配線工事が一切不要です。また、センシングウェーブもベッドのマットレスの下に敷き、コンセントに電源を差し込むだけで計測開始できます。

 こうして得たデータは、すべてクラウドで管理しているので、本人はもちろん、家族や訪問介護事業者も見ることができます。データの活用方法としては、「取得したデータを基に訪問介護事業者と意見交換をしながら適切なケアプランを探っていく」という方向性で考えています。具体的には2020年3月から10世帯のデータを計測開始しますので、居住者やその家族、訪問介護事業者など、みんなで意見交換をしながら適切なケアプランとアルゴリズムの構築を目指していく予定です。

分離型紙オムツ処理による介護負荷低減/パナソニック

パナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部 マニュファクチャリングソリューションセンター メカトロシステム技術部 資源循環技術科 課長 松田源一郎氏

 分離型紙オムツ処理による介護負荷低減プロジェクトについて報告させていただきます。

 この取り組みを始めた背景として、避けられない社会課題の一つである「少子高齢化」があります。2025年には高齢者が30%を超えて要介護者が増加。その結果、介護人材不足というのが深刻な社会課題になるだろうと考えられています。また、実際の介護の現場での困りごととして、やはり排泄の問題がありますので、「それに対する解決策が必要ではないか」と我々は考えました。本プロジェクトは、介護負荷の低減とオムツ処理の簡潔化という、2つの問題解決を目指しています。

 介護施設におけるオムツ保管庫というところは、一日に大量のオムツが排出されており、この処理が非常に大きな負担になっています。当然、使用済みのオムツというのは汚くて、臭いがします。また、かさ張るため、ゴミ出し作業も大変だったりするようです。地域やゴミ回収企業などの状況にもよるのですが、収集日までオムツを保管する間に悪臭や衛生上の問題も生じます。このあたりを何とか改善できないかと考え、減量、減容、臭気抑制機能を持つ、使用済み紙オムツ処理機というのを提案したわけです。

分離型紙オムツ処理機の試作機とその動作イメージ(資料:パナソニック)
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 上の資料の右側の写真が実際の装置になります。使用済み紙オムツを投入して開始ボタンを押せば、自動で減量化して取り出し口に排出されます。

 原理的には、紙オムツを塩化カルシウム水溶液中で撹拌することによって、水を吸ってジェル状になっている高吸水性ポリマーから水と排泄物を排出させます。最終的な排水にはジェル状のものが含まれないため、配管に詰まることがなく下水に排水することができます。排水が完了したら、最後に高速回転させることで、脱水して減量化していきます。このような処理によって、オムツをおおよそ2分の1~3分の1まで減量化することが可能です。

 通常、介護の現場で排出介助をした場合は、使用済み紙オムツを汚物処理室というところにあるゴミ箱に入れます。ここでは使用済み紙オムツを装置に入れてもらいます。後は、ボタンを押せば自動でスタートするので、使用感としてはゴミ箱に捨てるイメージそのままで処理が可能です。

 実際の高齢者施設に施設を導入し、実証実験を行いました。これがその実験の結果です。

減量・減容・臭気抑制に関する評価結果(資料:パナソニック)
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 得られたデータによると重量・体積の減少率は約2分の1。排泄物の量によって差があるのですが、目標の3分の1まではいかず、おおむね2分の1程度という結果でした。臭気に関しては10分の1程度にまで抑えられました。もちろん多少臭いはするのですが、体感的にはそれほど臭わない。「かなり抑えられているな」と感じました。

 アンケートも実施しました。左側のグラフが「排泄介助時のニーズと効果」を現わしています。水色の折れ線が「ニーズ」を示しており、「フロアの臭気」「搬出する時の臭い」「屋外に出す時の重さ」などのニーズが高くなっていることが分ります。濃い青色の折れ線は「効果」です。我々が開発した装置を導入すれば、要望の高いニーズについて改善効果が十分見込めるのではないか、と考えられる結果になっています。

 一方で、課題もあります。今回の装置は、1回の処理につき30分で5個の紙オムツを処理できるのですが、少々処理能力が低いと感じられたようです。「1回の処理時間がもう少し短いほうが良い」「もっとたくさん処理できるようにしてほしい」とか、「塩化カルシウムも自動的に投入してほしい」といった改善要望が届いています。このような結果を受けとめた上で、今後も改善を行いながら実証実験を継続し、事業化に繋げていきたいと考えています。

破砕・回収型紙オムツ処理による介護負担と環境負荷低減の取組/LIXIL

 先ほど、パナソニック様から紙オムツ処理機器に関する発表がありました。LIXILのプロジェクトも、考え方・目的や背景はまさにパナソニック様と同じです。高齢者施設で働いている方々の介護負担を軽減する。さらに施設内外の臭いを抑えることで、そこに住んでいらっしゃる方々の生活を快適にすることが大きな目的となります。

破砕・回収型紙オムツ処理Bタイプ、Baタイプそれぞれの仕組み(資料:LIXIL)
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LIXIL WATER TECHNOLOGY JAPAN デザイン・新技術統括部 技術研究所 機構技術開発グループ グループリーダー 渡邊弘明氏

我々の提案する装置は破砕型というものになります。LIXILは、紙オムツを破砕することで減量・コンパクト化し、専用配管で流す仕組みの装置を開発しています。各階から人力でオムツを運ぶのではなく、専用配管を使って外まで流して、そこで回収する。国土交通省で定義付けているBタイプを選択し、現在、開発を進めています。

 紙オムツ処理の方法に関しては国土交通省が定義しているタイプ別の分類があり、先ほどのパナソニック様の方式はAタイプ、我々のものはBタイプという方式に分類されます。Bタイプは結構大掛かりな設備となりますので、既存の住宅や小さな施設には設置が難しい。そのため、我々はBタイプのほかに、「Baタイプ」というものを検討しています。こちらは破砕部分と分離回収部分をコンパクトにまとめた装置として、各フロアに置けるタイプとなります。

 Bタイプにつきましては専用配管の検証を進めています。Baタイプについては、今後実際に介護施設に設置して実証実験を行っていく予定です。

 通常、紙オムツは臭いが出ないようにビニール袋に入れたり、新聞紙でくるんだりして収集されます。これをそれぞれのフロアの汚物処理室に保管して、一杯になったら外のゴミ捨て場に移動します。当然、人の手による運搬は重労働ですし、たくさんのゴミが出ますので廃棄費用も高い。また、移動するたびに臭いを発します。こうした諸問題をこの処理機を使って解決したいと考えています。

 今回、我々の提案する破砕回収型のメリットは、オムツを包むビニール袋や新聞紙なども、そのままカットして処理できる点です。

Baタイプのプロトモデル(資料:LIXIL)
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 プロトモデルの写真でBaタイプの仕組みを説明します。上部の投入口から紙オムツを一つずつ投入します。オムツ一つあたり5分程度で処理できます。処理が終わったものは、機器下部の回収部から排出されます。紙オムツに含まれる排泄物は、処理機で分離して下水に流す仕組みになっています。このプロトモデルを2020年3月以降、実際の施設に入れて実証実験をする予定です。実証すべき項目としては、「狙い通りに紙オムツが減量・減容できるか」「臭いはどうか」「介護者が使いやすいと感じるか」などの点を検証します。

 もう一つ、Bタイプの方は先ほどお話したように専用配管を使いますので、オムツを破砕して処理したものが配管に詰まらないかどうかが肝になります。現在はその検証を行っています。関東学院大学と共同で検証を進めており、想定される配管パターンを実際にいくつか組んで仮設実験を重ねているところです。破砕された処理済み紙オムツが、想定した条件で輩出できることは確認ができています。

 今後の予定としては、Baタイプのプロトモデル設備を実際の施設の汚物処理室に設置します。紙オムツ用のゴミ箱を取り除いて、その代わりにこの設備を設置し、実際に使ってもらう予定です。Bタイプの配管につきましては、現在建物の各フロアから立て管に接続する横枝管の実験を進めておりますが、2020年4月からは、立て管と横主管部分の排水性も引き続き検証していきます。

シニアマンションへのIoT機器導入による管理スタッフや離れて暮らす家族の見守り負担軽減プロジェクト/サンヨーホームズ

サンヨーホームズ マンション事業本部 東京マンション支店 建築部 部長 下條直樹氏

 サンヨーホームズは今回、茨城県牛久市にシニアマンションの事業を展開します。一般的なファミリーマンションと異なり、大浴場、娯楽室、レストランなど、様々な共用施設を配置した物件となっています。

 シニアマンションを計画していく中で、「見守りサービスをどのような形で行うか」という課題が生じました。私も両親と離れて暮らしておりまして、なかなか連絡する機会がありません。「どういう生活をしているか」という心配事は少なからずあります。離れて暮らす家族やマンションの管理スタッフの負担を抑制しつつ、住まい手も含めて安心できる見守りサービスとはどのような仕組みが考えられるか。この課題解決のために、次に挙げる2つのシステムを導入します。

エネルギーセンサーによる見守りの仕組み(資料:サンヨーホームズ)
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 1つは、「エネルギーセンサー」を使った見守りシステムです。

 各住戸の分電盤の中にエネルギーセンサーを設置します。このエネルギーセンサーは、一般的な家電製品の使用状況を分析する機器です。例えば、「真夏にエアコンが動いていない」「夜間に掃除機をかけている」「普段は寝ている時間帯に複数の家電が動いている」などといった生活上の異常を把握することができます。居住者本人が意識をしていない異常な行動を、エネルギーセンサーが検出・分析して、必要に応じてアラートを発信する、というシステムになっています。

 2つめはインターホンを中心にした通報システムです。居住者が在宅時に体調不良などを覚えた場合、自分の意思で必要に応じて管理スタッフを呼び出せるシステムを導入します。

見守り情報の管理と体制の概念図(資料:サンヨーホームズ)
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 この2つのシステムから得た情報は、マンションの管理運営室で受信します。すばやく情報が受け取れるため、居住者への連絡や訪問が容易になりますし、また非常時には素早くサポートすることが可能になると考えています。エネルギーセンサーが検出した異常な状況などは、離れて暮らす家族にもアラートとして伝えることができます。

 今後の取り組みとして、入居者のデータを蓄積し分析した上で、異常の「予測」や、健康活動の支援などに利用できないかと考えています。また、居住者の生活状況を、離れて暮らす家族へもアナウンスする仕組みを整えていきたいと思っています。本事業のマンションは2020年11月に完成する予定です。入居後も継続的なアンケートなどによって、実証調査を実施していきたいと思っています。

科学的指標をもって健康管理できる家/芙蓉ディベロップメント

芙蓉ディベロップメント 常務取締役 横山明人氏

 2019年度の採択事業「科学的指標をもって健康管理できる家」について報告させていただきます。

 このプロジェクトは、住宅に「医学統計学」という科学的エビデンス(証拠・根拠)による健康管理システムを導入し、居住者の健康管理を支援することを目的としています。心不全・肺炎の早期発見、及び熱中症予防、そして睡眠の質の向上が期待できます。

 今回の「科学的指標をもった家」は、2017年度に採択されました「健康寿命延伸住宅」を基にしています。高気密・高断熱住宅に、居住者のバイタルデータを反映した温熱環境をつくること、そしてバイタルデータの記録によって健康管理と見守りを実現するという構想は、今回も基本的に同じものです。

科学的指標をもって健康管理できる家の概念図(資料:芙蓉ディベロップメント)
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 基本的なテーマは前回と同様、「健康管理」「健康空間」「見守り」の3点となります。

 このうち「健康空間」というテーマは、前回は「快適空間」としていましたが、今回は変更しました。「快適空間」から「健康空間」に変えた理由は、今回、照明をコントロールすることによって睡眠の質を高めていこうという試みが加わったことで、快適以上の健康空間というものが実現できるのではないかと考えたからです。

 「見守り」テーマに関しては前回同様しっかりやっていきたいと思っています。前回の実証では、居住者から日常のバイタルデータ記録が「面倒くさい」とか「あまり面白くない」という声があり、今回は、これをしっかり改善して取り組んでいこうと考えています。

健康管理に用いるソフトウェアの画面とスコアリングの概念図(資料:芙蓉ディベロップメント)
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 健康管理に用いるソフトウェアの画面イメージは、図の右側に示したようなものです。

 バイタルデータは個々の数値ではなく、トータルのスコアリングという指標で判断します。これはなぜかと言いますと、前回までのシステムは、体温、血圧、脈拍、心拍など単体個別に異常値が出たらアラートが鳴る仕様でした。実際に運用する中では異常検出の回数が多く、アラートも頻繁に鳴るので、居住者から「ちょっと回数が多いね」と指摘された実態があります。これを解決するために、医学統計学とEWS(早期警戒システム)というものを複合させて、体温、血圧上、血圧下、脈拍、自覚症状、この五つの因子を統合したスコアリング方式を考えた訳です。

 このスコア方式では、スコア0というのが最も健康的な状態を示します。スコア1は「ちょっと注意しなければならない」レベル。スコア2になると「これはまずいな」、スコア3となると「すぐに病院に行かないといけない」といったように、居住者がモニターを見てすぐに分かるように表現しています。これらの情報は居住者だけでなく、同時に離れて暮らす家族も共有できるような仕組みをつくりたいと思っています。

 日常的な記録が「面白くない」という意見もありましたので、笑っている顔とか、ちょっと困っている顔といったアバターを導入するなど、毎日の健康管理の中で少しでも楽しく続けていけるような工夫も施します。

 このシステムは、服薬管理にも役立ちます。本人はもちろんのこと、家族も薬の服薬を忘れていることが一目で分かります。薬を飲み忘れていた場合には、アラートや電話連絡などによる、服薬指示がすぐに出せる仕組みを検討しています。

 今回、新たに照明コントロールによる健康空間の実現を目指します。生活時間帯に合わせて、照明を自動的に調光・調色する仕組みなのですが、「何時から何時までどのような色温度を設定していくか」という具体的な仕様を検討中です。照明が居住者の睡眠の質に及ぼす影響についても、詳しく検証していきたいと考えています。

住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅/大五

大五 専務取締役 大地健太氏

 大五は、大阪の住設建材問屋で、パナソニックの代理店でもあります。今回のプロジェクトの背景には災害があります。皆さんご存知のように2018年と2019年に全国で大きな災害が発生し、特に停電の長期化が問題になりました。近畿エリアでは2018年に、大きな地震や台風、豪雨があり、最長5日間停電が復旧しない事態に陥りました。社員の自宅が停電になって、大変不便な想いをしたという経験があります。「今後もこういった災害が起きるのだろうか」と危機意識が芽生えました。

 こうした経験から「それならば災害に強い家を提案していく必要がある」という結論に至り、IoT技術や商品に強いパナソニックさんと一緒に、今回の防災レジリエンス住宅を開発した次第です。

 レジリエンスとは回復力という意味です。「住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅」とは、災害に遭っても住み続けられる家ということです。防災仕様がベースになっており、そこにIoT技術を搭載する仕様となっています。

 テーマとしているのは次の3つです。まず「災害に耐える」こと。地震、台風に強い耐震工法のテクノストラクチャーを基本に、災害に耐える家とします。次に「災害に備える」こと。火災、停電、台風に備えます。最後に「災害後の暮らしを支える」ということ。基本的に災害後のライフライン対策を考えています。この3つに加えて、災害のない平常時でのIoT活用として、ホームセキュリティでの防犯機能を備えます。

住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅の構成(資料:大五)
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 災害への備えとして、どのような仕様が盛り込まれているのかを具体的に解説します。

 太陽光発電と蓄電池を備えていますので、停電時には、昼は太陽光の発電した電気を使い、夜は蓄電池に溜めた電気を使うことができます。気象警報とも連携しており、警報が出た際には、HEMSが自動で雨戸シャッターを閉め、蓄電池への充電に切り替えます。

 最近、増えつつあるタンクレストイレは、実は停電になると水が流れなくなる機器が存在します。本プロジェクトで採用するトイレの場合は、手動で回す、あるいは乾電池を用いるなどして、停電時にも流すことができるものになっています。

 ヒートポンプ式の温水器、いわゆるエコキュートを採用していますので、断水時はエコキュートのタンクが活用できます。お風呂約2回分、もしくはバケツ約18杯分の水はタンク内で確保できます。

 平常時にはIoT技術をホームセキュリティに使用します。例えば、外出先からスマホで施錠確認ができたり、未施錠だった場合はスマホから施錠ができます。また、家電の使用状況を確認して、家族の見守りに生かすことも可能です。

プロジェクトの検証方法と情報の活用目的(資料:大五)
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 検証に関しては3つの方法を検討しています。1つは、エネルギーのデータ収集を行う。HEMSからデータ取得し解析することで、インフラ停止時に必要な太陽光や、蓄電池の必要容量の把握などに生かします。2つめは、施主へのヒアリングです。IoT機器の使用状況を聞き取り、将来的なIoT技術普及につなげます。3つ目が工務店や電気工事店へのヒアリングとなります。工事について分からなかった点や、難しかった点を把握し、普及を妨げている事由を明らかにします。

 今後の予定としては、パートナーであるパナソニックさんと、地域17社の工務店と一緒に3年間で23棟を建築する計画です。

(前編の記事はこちら)

シンポジウムでの各社の資料