シンポジウムの第2部では、気鋭のIoTサービス事業者による最新技術紹介が行われた。登壇したIoTサービス事業者は10社。1社につき5分という短い登壇時間の中で、それぞれが自社サービスと住宅業界との事業者連携についてアピールした。前編では5社によるプレゼンテーションの様子をリポートする。モデレーターはテクノアソシエーツの宮嵜清志氏が務めた。(後編はこちら)

  • 【登壇者】
    • 内山 智晴氏 Yper 代表取締役
    • 渡邉 君人氏 エコナビスタ 代表取締役社長
    • 梅田 智広氏 MBTリンク 代表取締役社長
    • 永関 元紀氏 サマリー 法人営業マネージャー
    • 田中 克典氏 ノバルス 事業開発部
  • 【モデレーター】
    • 宮嵜 清志氏 テクノアソシエーツ 取締役副社長
宮嵜清志氏
テクノアソシエーツ 取締役副社長

――ここからは、IoTサービス事業者10社の方々に、最新技術と自社のビジネスモデルを語っていただきます。このコーナーは1社5分という短いプレゼンテーションで構成されています。プレゼンテーション終了後、私から事業者の方に質問しますので、それに答えていただきたいと思います。

 私は、登壇される企業の方々と数回の打ち合わせを重ねて、様々な話をしてきました。その上で実感したことがあります。住宅や住生活の質の向上、あるいは新しい技術に支えられ、かつビジネスとしても成功するようなプロジェクトというのは、今日登壇されるようなIoT企業と連携していかなければ5年、10年は遅れてしまうのではないかと。 それでは早速、それを裏付けるようなお話を聞いて頂きましょう。

最新技術1
置き配バック「OKIPPA」/ Yper(イーパー)
https://www.okippa.life/

内山智晴氏
Yper(イーパー) 代表取締役

内山:我々は、玄関前を起点とした物流網を構築することで、さらに生活の質を高める活動に取り組んでいます。年々、通販サイトの利用率が増加していますが、そこで問題になっているのが高い再配達率です。これを解決するサービスが、我々の置き配バック「OKIPPA」です。

 再配達問題の解決に向けて、コンビニエンスストアでの受け取りや、公共の宅配ロッカーの利用が試みられていますが、なかなか使われていない実態があります。宅配ボックスを置くスペースがない住環境の現状が、問題解決が進まないひとつの要因と考えられています。

 そこで我々はスペースがなくても宅配ボックス環境を作れるOKIPPAを開発しました。

 一見、手のひらサイズのバッグに見えますが、広げるとかなり大きくなります。これは主にECサイトでの通販の荷物の受け取りに特化しています。使い方は玄関前に吊るすだけ。配送員が荷物をOKIPPAに入れ施錠して配達を完了します。バッグは玄関ドア付近に緊結できます。

 専用のアプリが用意されているため、配送状況をスマホなどで確認することができます。配送完了通知も届きます。アプリによって配達記録が管理されており、盗難補償も提供できます。

 宅配業者が個別の荷物に紐付いている配送伝票番号を認証することによって、配達先が正しければ解錠できる仕組みになっています。このバック自体は発信器などついていないアナログなバッグなのですが、スマホと連動させることで、安価で簡単に外部サービスと連携することが可能です。

 オートロックのマンションでの利用推進にも取り組んでいます。オートロックマンションの各住居前にOKIPPAを設置します。スマートロックの会社との協業によって共用エントランスを安全に開錠した上で、OKIPPAに荷物を預けるという実証実験を行っています。これが実用化されれば、大がかりな宅配ボックスが不要になり、各住居に専用の宅配ボックスが設置される環境が実現できます。

 実際にOKIPPAの再配達削減効果はどうなのか。2018年12月に、日本郵便と東京・杉並の1000世帯で行った実証実験では、実に61%もの再配達回数削減に繋がりました。現在、配送会社だけでなく、EC事業者や官公庁とも検証を進めています。

 昨年から、OKIPPA利用者の再配達率をモニタリングしています。OKIPPA利用前の再配達率は15%ぐらいでしたが、OKIPPAの利用後は8.9%まで減少しました。国が2020年度の再配達削減目標としているのが13%なので、これよりずっと低い。つまり、一定数のOKIPPAを設置することができれば、再配達削減目標は実現できるわけです。

 現在、OKIPPAを全国13万世帯で使っていただいていますが、これを100万世帯まで普及させたいと考えています。100万世帯で足りるのかという疑問もあると思いますが、実際にOKIPPAを使っているユーザーの6割以上が、週1回以上通販を利用するヘビーユーザーです。このようなユーザーが、再配達を量産している要因の一つであり、ここに宅配ボックス環境を届けることができれば、再配達率を効率的に下げることができます。

 OKIPPAの利用者に話を聞いてみますと、ただ受け取る機能だけではなく、不用品の発送や、外部サービスとの連携、生鮮食品の受け取りといったニーズも見えてきました。我々はOKIPPAを起点に「そのようなニーズに応える玄関前の物流網をつくれるのではないか」と考えており、これを将来的な開発目標としています。生活の質の向上や社会課題の解決のために、新たな価値を玄関前に創造したいと考えています。

──プレゼンテーションの中の「玄関前の物流網」という言葉が頭に残りました。いわゆる再配達率の減少というラストワンマイル問題の解消だけでなく、ファーストワンマイルとも言われる「上り物流」の課題、つまり送り出す側の待ち時間や持ち込み負担なども解消しようと考えておられるように感じました。「自宅起点の物流プラットホーム」といった構想をお持ちなのですか。

内山:必要に迫られた部分もあるのですが、「受け取り」だけの価値はさほど大きくないと考えています。受け取りだけで玄関前の貴重な場所を割きたいかというと、なかなかそのような方は少ない。ただ、いろんなサービスを付け加え、空間に新たな価値をどんどん追加することによって、受け取りだけでなく発送にも使える可能性はあります。これによって将来的な生活の質の向上や、再配達問題の解決につながると思っています。

最新技術2
高齢者の見守りシステム「ライフリズムナビ+Dr.」/ エコナビスタ
http://info.liferhythmnavi.com/

渡邉君人氏
エコナビスタ 代表取締役社長

渡邉:当社は、大阪市立大学医学部疲労医学講座発のスタートアップ企業です。本日は、我々が展開している「ライフリズムナビ+Dr.」を紹介させていただきます。

 ライフリズムナビ+Dr.は高齢者の見守りシステムで、現在、高齢者施設に導入を進めています。介護施設の居室の各所にセンサーを設置し、そこから得たデータをクラウド上に集めます。医師や看護師、介護士などが、スマートフォンやタブレットで居室の中の状況を確認できるサービスです。

 ご存じのように、介護業界は圧倒的な人手不足の状況にあります。その解決のためにライフリズムナビ+Dr.を開発しました。住友林業をはじめ、長谷工シニアホールディングス、リゾートトラストなど、多くの事業者様にこの見守りシステムを利用していただき、現在、約1800人の見守りを続けています。

 具体的にどのようなセンサーで見守っているのかを説明します。まず、ベットセンサーをマットの下に敷いており、ここで心拍、呼吸、睡眠データを取っています。このほか、ドアの上部に開閉センサー、天井とトイレに人感センサーを設置しています。さらに温湿度センサーも付けています。高齢者になると温度の感知能力が鈍り、夏場に間違って暖房をつけてしまったり、逆に冬場にクーラーをつけてしまったりする入居者が多いためです。ヒューマンエラーの防止対策となります。

 センサーからのデータを基に、管理用ソフト上では、部屋の中がどうなっているのかを一目瞭然で確認することができます。呼吸数、心拍数、体動、無呼吸の回数、睡眠振動などのデータも可視化されます。様々なデータは独自のアルゴリズムで解析を行っています。

 当社の最大の強みは、60歳から100歳まで高齢者に特化した、延べ2000人以上の睡眠データ、バイタルデータを保有していることです。もちろん人数が多いだけでは意味がありません。ポイントはデータの「密度」です。当社は秒単位のデータを、長い例で4年以上も継続して取得しています。現時点では最も高品質、かつ大量の睡眠データを持っている企業であると自負しています。

 眠ることによって疲労がどれだけ回復できたのかについて、睡眠データから調べる新たなマーカーの開発にも成功しました。こちらは2020年1月30日に特許を取得したばかりの技術です。さらに、「睡眠データから認知症発症を予測するAI」の開発を進めています。認知症は特徴的な眠りのパターンを示すため、これを根拠に発症を予測するわけです。データを時系列で追っていくことで、認知症になっていく可能性を予知できるところまで突き止めています。

 睡眠データを基にしたマーカーは、認知症の予測のほかに、よく眠れる家や健康長寿な家といった住宅の実現にも活用できると考えています。当社は高齢者の見守りシステムとデータ解析という、二つの側面から事業を展開しています。

──大変な量の睡眠データをお持ちですね。先ほど認知症について言及されましたが、既に、認知症を早期に発見する独自の手法を持っているのですか。

渡邉:もともと健康だった方がMCI(軽度認知障害)になり、そこから認知症が進んで要介護度が上がっていくのを時系列に見ることで、眠りの差異が見分けられる段階まで来ています。いま、実際の医師の診察と、我々のデータが本当に適合しているのかをクロスで分析している状況です。これも4年間、延べ2000人のデータを継続的に取得しているからこそできたことです。

最新技術3
健康サービス「医学を基礎とするまちづくり」/ MBTリンク
https://www.mbtlink.com/

梅田智広氏
MBTリンク 代表取締役社長

梅田:社名のMBTはMedicine-Based Townの略称です。「医学を基礎とするまちづくり」を目指し、健康サービスをまちづくりにまで拡大、実装して生かすとの思いで起業しました。

 MBTリンクは奈良県立医科大学発のベンチャーであり、私自身も奈良医大の職員です。私たちは「医学を基礎とするまちづくり」構想の実現に向けて、様々なサービスの実現を目指しています。しかし、このような大規模な構想は、1社だけで可能になるわけではありません。「ここにいる皆様方と積極的に連携して、いち早く健康サービスを街に実装したい」と考えています。これまでも、企業の方々と連携し、多様なサービスを打ち出してきました。今後もさらに加速していこうと思っています。

 企業理念は、「医学で産業を変革し、新たな産業を生み新しい街をつくる」ことです。現在、提供・運用しているサービスは、リアルタイムかつオンラインでデータを活用して、見守りや健康管理、さらには位置情報も確認できるものです。ただ、一般的な健康サービスとの違いが分りにくいかもしれません。

 私は長年、鳥インフルエンザの研究をしていました。そこでは、人を取り巻く「環境」情報がいかに重要かということを思い知りました。この経験を基に、我々のサービスでは環境情報にも注目しています。従来の健康サービスは、ほとんどがバイタルサインのみを重要視していると感じます。我々のサービスはバイタルのみならず、小さい環境センサーを用いて周囲の環境情報も同時に取得します。これが、ほかにはない特長です。

 我々が生活していくうえで重要な、運動、食事、睡眠といったデータも掛け合わせ、クロス評価をしています。データの評価方法も重要です。身体だけでなく、精神面、認知面などを関連付け、「どこがどう変わると何が起こるか」ということを、ずっと追いかけてきました。そして、それをスコア化することが重要なのです。このようにして評価したデータは、サービスに落と込みやすいというメリットがあります。

 現在、ある街で弊社のサービスを実際に使ってもらっています。ウェアラブルタイプのバイタル測定機器に加え、腰には小さな環境センサーを付け、その人自身とその人を取り囲む環境データを収集しています。既に複数の自治体に展開しており、今年はさらに拡大していく予定です。

 ほかにも、熱中症対策として東京の作業現場を調査した事例があります。ウェアラブルタイプのバイタル測定機器だけでなく、心拍センサー、さらには衣服にもセンサーを付けて実施しました。環境情報やバイタルサインを元に、その人の危険状況をリアルタイムで表現します。これを使えば、施設の見守りにも利用できます。

 さらに、街づくりの概念を変えようという考えのもとに、新しいタイプの住宅にも取り組んでいます。土地・建物・健康管理サービスをパッケージングして提供するものです。「20代の方でも家が持てる」水準の価格設定を目標に、現在、企画を進めています。

 今後は、今使っているエコシステムをどんどん拡大し、健康面のみならず、在宅医療をはじめとした医療面にまで繋げていこうと考えています。

──プレゼンテーションの中でインフルエンザ、すなわち感染症について言及されていましたが、新型コロナウイルスなど感染症に対しては、このシステム・プラットホームはどう対応されていくのでしょうか。

梅田:私はインフルエンザの研究もしていましたが、人が感染、もしくは病気になる前には必ず小さな変化を示します。日々のデータをウオッチすることで「何か異変が起こっている」「小さな変化が起こっている」ということを、客観的なスコア評価をもって知らせることが可能だと考えています。今年の春には、感染症予防にも対応した新しいデバイスを出す予定です。

最新技術4
収納サービス「サマリーポケット」/ サマリー
https://pocket.sumally.com/

永関元紀氏
サマリー 法人営業マネージャー

永関:「ご自身の持っている荷物の量や、その荷物がどのように収納されているか」。本日、皆様にはこのようなご自身の荷物に思いを馳せながら、お話を聞いていただきたいと思います。

 都内マンションの平均坪単価は、ここ10年ほど右肩上がりで伸びています。逆に、収納の占有面積は年々小さくなっています。家をつくる際、お風呂やキッチンを小さくするのはなかなか難しいため、収納スペースを少しいじめる(小さくする)状況が見られます。そして住宅の収納面積が小さくなると、収納ビジネスが伸びるという構図が生まれます。

 日本国内の収納ビジネスの市場規模は、2010年の400億円から、現在800億円の市場規模まで拡大しています。ちなみに米国は市場規模4兆円と言われており、日本の50倍もあります。日本は、まだまだお金を払って荷物を外に出すというのが文化として根付いていないと言えます。

 荷物を外に預けようと思っても近くにトランクルームがないとか、料金が月額数千円~1万円と高いといった理由で、なかなか簡単には荷物を外に出さない傾向にある。そこで、我々が展開しているのが収納サービス「サマリーポケット」です。

 ユーザーはこちらが用意した段ボールに荷物を詰めて集荷を待つだけ。すべて宅急便を利用して受け渡しを行いますので、非常に手軽です。倉庫に到着した荷物は、写真撮影して管理用アプリにアップロードします。ユーザーはいつでも、パソコンやスマホから荷物の内容や状態が確認できます。1箱につき月額250円(エコノミープラン)からという、非常に安い価格で提供しています。

 スタンダートプラン(月額300円~/箱)になると、箱の中の内容物をひとつずつ写真撮影して管理します。写真撮影については倉庫に到着してからスタッフが1点1点撮影しますので、ご自身で撮っていただく必要はありません。必要になったら1点単位での取り寄せ指示も可能です。

 ただ預けるだけでなく「クリーニングをしてほしい」「ハンガーにかけておいてほしい」「不要になったからオークションで売っておいてほしい」など、細かいところに手が届くようなオプションも用意しています。これも我々のサービスの大きな特徴です。

 ユーザーはすべての操作をアプリ、ウェブ上で行います。サービスの具体的な流れは次のようになります。まず必要なボックスを取り寄せる。次に荷物を詰めて集荷を依頼する。集荷が完了してしばらくすると預けた荷物が、アプリ上に一覽して確認できるようになります。寺田倉庫が事業パートナーでもあり、株主でもあります。専業の倉庫事業者がパートナーですので、温度管理、湿度管理など、適切な環境で荷物をお預かりすることができます。クローゼットに入れておくよりも、むしろ最適な保管環境ではないかと感じています。

 坪単価の上昇に伴って、住宅全体の面積が小さくなりつつあるいま、荷物を外に預けることで、たとえ小さな家でも広く使える住空間を、皆様と一緒につくっていきたいと考えています。

──質問が二つあります。まず、このサービスを利用しているのはどういった方々で、1人何箱ぐらい使っているのでしょうか。また、住宅の価格は高騰しているのに専有面積が減っている状況をみると、サマリーポケットの利用を前提とすれば、もしかすると住宅設計の考え方まで変わる可能性がある気がします。どうお考えでしょうか。

永関:最初の質問ですが、利用者の性別は、女性が3対2ぐらいの割合で多いようです。年齢層は、30代前半ぐらいをピークに山を描くようなグラフで表現できます。1人当たりおよそ5箱、1箱300円換算で月額1500円程度の利用が平均値となります。

 住宅設計に関しての質問ですが、クローゼットやシューズインクロークのスペースをあえてコンパクトにして、必要のないものをサマリーポケットに預けるという前提で設計をする。そうすることによって、これまで以上にリビングが広く取れたり、当初は想定していなかった書斎が確保できたりとか、そういった設計が可能ではないかと考えています。

最新技術5
乾電池型センサー「MaBeee(マビー)」/ ノバルス
https://mabeee.mobi/

田中克典氏
ノバルス 事業開発部

田中:さっそくですが、「ダブルケア」という言葉はご存じでしょうか。

 「子育て」と「親の介護」の両方に、同時に直面する状態を指します。まだ直面していない方でも子供の心配、親の心配をしている方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。普段元気な高齢者でも、体調の急変は起こりえます。また、子供が犯罪被害に会う場所は、3割強が自宅周辺の環境だと言われています。高齢者も子供も、少しでも早く異変に気付くように日常的な見守りが大事なのです。

 そこで我々は、電池1本で家族をさりげなく見守ることができるサービスを紹介します。使い方や設置は非常に簡単。普段使っている家電製品の電池ボックスに、乾電池型センサー「MaBeee(マビー)」を入れていただくだけです。

 MaBeeeは通信機能や消費電流検出回路が組み込まれた電池ケースのようなもの。単3電池サイズのMaBeeeの中に市販の単4電池を入れるだけで、「通信する乾電池」になります。中に入れる電池は一次電池でも、充電可能な二次電池でも構いません。

 使い方も簡単です。いつも通りに家電のボタンを押すだけ。その時、中に入っているMaBeeeがBluetoothを使ってスマホ経由でクラウドに情報を送ります。家族はクラウドを介して、その家電の使用状況を確認することができます。

 子供の見守りにも最適です。例えば、MaBeeeを入れたセンサーライトや、電池式の芳香剤を玄関に置いておけば、帰宅に反応して情報が発信されます。Bluetoothの通信はインターネットを介して両親に通知することもできるため、外出先からの子供の見守りが簡単に実現できます。ほかにも、例えば防水センサーとライトにMaBeeeを入れてお風呂に設置すると、「高齢者が倒れていないか」という心配事を解消することもできます。屋外のセンサーに使えば、深夜の徘徊ですとか、不審者の侵入なども検知することが可能になります。

 このように、MaBeeeは乾電池を使うことで、実に簡単に家電をIoT化できるという特徴を持っています。また専用のセンサーやカメラは使いませんので、「監視されている」という心理的なストレスを見守る対象に与えることもありません。

 MaBeeeを使った、認知症の早期発見にも取り組んでいます。具体的には、リモコンのボタン判定を行い、同じチャンネルを何度も押すとか、ボタンを押す時間が長くなるといった操作データを取得しています。一般的に、認知機能が低下した際にはリモコン操作にも影響が出るという相関が報告されており、このデータを使って、認知症の早期発見に取り組んでいます。

 我々は、このように「さりげない見守りで変わらない暮らしをいつまでも」というテーマでサービス開発を進めています。

 今後の取り組みも紹介します。新しいモデルとしてLTE-M通信に対応した新しいモデルを開発しました。こちらは、電池からキャリアの通信網に直接接続することが可能です。屋外で電源のない場所、例えば物流のトラッキング、空き家の管理、防犯などに使うこともできます。さらに今後は、乾電池の形状にとどまらず、様々な電池の種類にも対応していきます。また、使う場所に応じた無線方式が活用できるように、無線通信方式の多様化も進めていきます。これらの製品・サービスの組み合わせを、一体型のパッケージとして提供することで、家電などのIoT化をさらに押し進める考えです。

──建築業界のニーズとIoT業界が有する技術とをマッチングする際に、時間スケール感の違いという課題があります。建築業界は50年100年という長いサイクルで事業をとらえる一方、IoT業界は技術の進歩が半年、1年の速いサイクルなので、うまく話が成立しないケースが多いのです。MaBeeeは「乾電池という汎用品」を使って、両者の時間感覚の差にブリッジをかけようとしているように見えます。そういった狙いがあるのでしょうか。

田中:そうです。一般的に住宅の設備は非常にライフサイクルが長く、逆に通信規格は非常に短いサイクルで変わっていきます。このようなギャップがある場合、いったん、ひとつの通信規格で組み込まれた設備は、ライフサイクル中の交換・変換が難しく、どんどん機能面で劣化してしまいます。その点、MaBeeeは後付けで交換することができますので、MaBeeeが新しい通信規格に対応すれば、技術進歩の速度の差を電池が吸収できます。我々は、この「技術進歩の速度差を、電池で吸収する」という考え方に基づいて技術開発を進めています。

(後編の記事はこちら)