今年度で4年目を迎えた国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)。今回のシンポジウムでは、平成29年度から令和2年度までに採択された14のプロジェクトを5つのグループに分け、取り組みテーマごとにパネルディスカッションを行った。Part2のテーマは「地域工務店への展開」だ。地域工務店を通じてHEMSやIoT住宅の普及を目指す3事業者の取り組みを紹介する。

[動画]【パネルディスカッション】Part2 地域工務店への展開
  • 【Part2「地域工務店への展開」の参加パネリスト】
    • 宜野座 俊彦 アイ・ホーム 代表取締役 / ZEH推進協議会 理事
    • 山本 徹 LIXIL ZEH推進事業部 ZEH推進商品開発部
    • 大地 健太 大五 専務取締役
  • 【モデレーター】
    • 安達 功 日経BP総合研究所 所長

──Part2のテーマは「地域工務店への展開」となります。具体的には、地域工務店を通じて、HEMSを広く普及・展開していこうとする取り組みです。

Part2のテーマは「地域工務店への展開」(資料:日経BP 総合研究所)
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 ポイントは3つあります。1つはIoT住宅そのものの普及・啓発が大きな目的になっているということ。次に、工務店をサポートする組織が中心になり、会員企業を通じて施工を行うということ。最後は、組織を束ねる企業のサポートが成功の鍵となること。ここには施工のサポートはもちろん、ユーザーへどう説明するかといった「伝え方のサポート」も含まれます。これらのポイントを踏まえて、このグループの取り組みを見ていきましょう。

モデレーターを務める日経BP総合研究所の安達功所長(枠外左)。パネリストは、LIXILの山本徹氏(左上)、アイ・ホームの宜野座俊彦氏(右上)、大五の大地健太氏(下)(写真:日経BP 総合研究所)

 ここで取り挙げるプロジェクトは、一般社団法人ZEH推進協議会(以降、ZEH協)の「地域ビルダー次世代住宅先導プロジェクト」、LIXILの「建材メーカーと地域工務店協働による『省エネ・健康・快適』×『便利・安心・楽しい』暮らしを実現する住宅の普及に向けたプロジェクト」、大五の「住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅」の3つです。

地域ビルダー次世代住宅先導プロジェクト/ZEH推進協議会

──平成29年度に採択されたZEH協のプロジェクトです(関連記事:ゼロエネルギー住宅をIoT技術でさらに魅力的に)。「防犯」「家事負担軽減」「物流効率化」を目的として、ZEH協に加盟している地域工務店23社、それにパナソニックを中心とするメーカーが連携して、IoT住宅を地域工務店に普及させようとするものです。施工会社、居住者、モデルハウスの来場者、それぞれにアンケートを実施してメリットを検証しています。

 これまでの検証結果では概ね「便利になった」という評価を得ています。モデルハウスの来場者からも概ね好評を得ているのですが、「コストの面でやや課題がある」という意見もあるようです。

 この事例については、すでに実証が終わっており、分析の結果見えてきた課題についてもまとめられています。

(1)工務店では、設計より施工担当者がより負担を感じている。また、IoT住宅に対する施主の認知度が低く、導入のメリットを施主に伝える努力が必要。
(2)使用する機器の機能によって、利用難易度に差がある。

 (1)は施工者側の課題、(2)は住まい手に由来する課題です。これら課題に対し、どのような対応が必要と考えているのか、詳しく聞きたいと思います。

ZEH協のプロジェクト「地域ビルダー次世代住宅先導プロジェクト」の概要(資料:ZEH推進協議会)
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──それでは、アイ・ホームの宜野座さん。まず、ZEH協の取り組みについて、提案の狙いや得られた効果などを具体的に教えていただけますか。

宜野座(アイ・ホーム):本プロジェクトでは、「防犯対策の充実」「家事負担軽減」「物流効率化」という3つの課題に取り組みました。

 具体的な例を挙げますと、まず防犯対策の充実というのは、HEMSとスマホを使った機能によって実現しました。例えば、「スマホで外出時のドアの閉め忘れを確認することができる」、「帰宅が遅くなった場合には、外出先から照明や電子シャッターなどを操作できる」というような機能を取り入れています。

 家事負担軽減に関しては、「エアコンや照明、電動シャッターを起床する朝6時に自動的に開ける」「外出先からお風呂の湯沸かしができる」など、HEMSを使った機能を取り入れたことで寄与できたと思います。

 物流の効率化については、宅配ボックスの設置はもちろん、インターホンとスマートフォンを連携して、外出先でも宅配業者と連絡ができる仕組みを取り入れています。例えば、宅配ボックスに入らない大きな荷物があった場合、その場で宅配業者に「〇時に帰るのでその時に持ってきてください」と返答することができ、帰宅してから再配達の依頼をしなくても済みます。このような仕組みによって、物流の効率化にも対応できたと考えています。

──いろいろな効果、成果を得られているようですが、一方で、施工者側の負担が大きいという課題もあったと聞いています。そのあたりについてもお話しいただけますか。

宜野座(アイ・ホーム):住宅施工後に行う「AiSEG(アイセグ)(※)」の設定というのが、条件や操作が少々煩雑で、施工者にとって少し負担となっていました。(※パナソニック製のIoT中核機器)

 住まい手への説明については、今回のプロジェクトでは補助金を用いてモデルハウスを建てたのでそれをうまく活用できました。しかしモデルハウスのような、体感によって解説を容易にする仕組みがない場合を考えますと、「難しい場面が多くなるのではないか」と感じています。

──このプロジェクトは採択から4年が経過しています。この4年間で変わってきたことはありますか。

宜野座(アイ・ホーム):平成29年に採択いただいたのですが、当時はまだ一般家庭にWiFiやBluetoothなどの無線通信が普及しきっていませんでした。そのため「このプロジェクトは、リフォームなどには適さないのではないか」と危惧されていました。しかし、近年では無線通信の普及が進み、エアコンなどは無線通信の機能が最初からついています。新たにオプションで設置する必要がなくなり、普及への障害はますます減少しつつあると感じています。

──先程、一色先生の基調講演でも「ソフトウェア・ファースト」というテーマで、同様のことが語られました(関連記事:IoT次世代住宅がつくる「新しい生活様式」)。この事業開始からの4年間でIoTの技術自体が進化して、それに伴い住宅も変わってきているようです。

建材メーカーと地域工務店協働による「省エネ・健康・快適」×「便利・安心・楽しい」暮らしを実現する住宅の普及に向けたプロジェクト/LIXIL

──同じく平成29年度に採択されたLIXILのプロジェクトです(関連記事:セキュリティーとHEMSを連携して一括制御の組み合わせ充実)。こちらは「防犯」と「家事負担軽減」をテーマにしています。HEMSのシステムとセキュリティーのシステムを、IoTホームリンクというシステムで連携させ、「ひとつの動作をきっかけに、さまざまな家電や機器が連動する」という取り組みです。

 LIXILの「スーパーウォール工法」を採用する全国の工務店に導入しています。「ライフアシスト」という、システムと機器をパッケージングしたものを全て設定済みの状態で納入することで、工務店側の負担を軽減しようという取り組みも見られます。

LIXILのプロジェクト「建材メーカーと地域工務店協働による『省エネ・健康・快適』×『便利・安心・楽しい』暮らしを実現する住宅の普及に向けたプロジェクト」の概要(資料:LIXIL)
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──早速、LIXILの山本さんに聞いていきたいと思います。今回の取り組みの目的と、得られた成果についてお聞かせいただけますか。

山本(LIXIL):我々の提案は、「省エネ・健康・快適」だけではなく、IoT技術を活用した「便利・安心・楽しい」暮らしを実現する住宅を、地域工務店の協力を得ながら広めていくことを大きな狙いとしています。

 最近、弊社は「おうち時間を幸せに」というコンセプトでテレビCMを打ちました。これはコロナ禍以後の在宅時間の増加に対応したものです。このような世相の中では、IoT技術を活用した住宅へのニーズが高まり、普及も進むのではないでしょうか。設定済みのIoT機器をパッケージングした我々の事業は、地域工務店によるIoT技術活用のハードルを下げ、さらなる普及促進に寄与できるものと考えています。

 IoT設備を導入した住宅では、住まい手へのアンケート調査を行っています。アンケートの結果、「玄関ドアの電子施錠」「電動シャッターの自動制御」といった設備機器が、特に好評を得ていました。

──LIXILも平成29年からの取り組みとなります。事業を始めてからの4年間で得られた課題や、それに向けた解決の糸口などがあれば、お聞かせください。

山本(LIXIL):現在、アンケートによるユーザー調査を実施しているところなのですが、現時点ではユーザーも「何が便利な機能なのか」と手探りの状態にあって、まだまだ使いこなせていないという印象です。協力してくれている地域工務店も同じような状況で、「どういう機器を揃えて、どういう提案をしたら『便利・安心・楽しい』暮らしが実現できるのだろうか」と悩んでいるようです。

 このような、ユーザーと工務店双方の困惑と悩みに、我々が「どう応えていくか」、「どのように提案していくべきなのか」というところが今後の課題だと考えています。

──住まい手にアドバイスして導く立場として工務店があり。さらに工務店を導く立場に、LIXILを始め本事業に係わる皆様のような、住宅設備会社や協議会組織の存在があるのではないでしょうか。今、最前線で試行錯誤をしている皆様が、成果や課題を集約して、それをいかに広めていくか――。そのあたりが、今後のIoT住宅普及のポイントになるのではないかと思います。

住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅/大五

──令和元年度に採択された、大五の「住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅」です(関連記事:既存のIoT技術を普及啓蒙に活用)。こちらは、防災住宅とHome IoTシステムを一体化することで、新たな付加価値を得ようとする取り組みになります。防災とIoTを一体化するという非常にユニークな取り組みを、グループ工務店とともに地域密着型で行っています。

 このプロジェクトは昨年始まったばかりですので、検証結果はまだ出ていません。

大五のプロジェクト「住ま~とテクノ防災レジリエンス住宅」の概要(資料:大五)
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──大五の大地さんにお聞きします。レジリエンスとIoTをつなげるというのはかなりユニークな発想だなと、審査している当時から我々は思っていました。まだ取り組みを始めて間もないので、なかなか見えないところもあると思いますが、狙いと得られた成果についてお聞かせいただけますか。

大地(大五):我々は近畿エリアを商圏とする住設建材の代理店です。本プロジェクトは、メーカーであるパナソニックとの協力で、防災仕様、あるいは防犯仕様の住宅にホームIoTを組み合わせたものを、取引先を中心とした地域工務店を通じて供給し、広く普及させることを狙いとしています。

 現在2棟を完工したところですが、住まい手にヒアリングをした結果を次の3点にまとめました。

(1)実際に災害が起こっていない時点では、防災仕様の必要性を実感していない様子だったが、先の令和3年2月13日の福島県沖を震源とする地震の後には、「防災住宅であることの安心感は大きい」との評価に変わった。
(2)防犯については関心が高く、「スマホで外出先から施錠確認できる」「家族の帰宅を外出先から見守りできる」といった点が「安心感につながる」と好評価が得られた。
(3)電気、水道、太陽光発電の状況など、HEMSに蓄積したデータがモニターで確認できるため、「省エネの意識が高まってきた」との感想があった。

 以上です。住まい手からは概ね好評価が得られていると考えています。

──まだこれから手探りで効果を探っていく状態だと思うのですが、防災、防犯、それから省エネという3つの点で効果が期待できそうですね。

 最後に、パネリストの皆様から一言ずつ、今後の展開についてお聞きしたいと思います。

宜野座(アイ・ホーム):例えば「定期点検が楽になる」「住まい手が自分でも点検できる」「簡単な操作で雨漏りがわかる」など、住宅の維持管理を助ける機器やサービスがあれば良いと思っています。そのような仕組みがあれば家も長くもちますし、リフォーム需要の掘り起こしにも役立ちます。

──住宅はストックを活用する時代に入っています。その先にあるリフォーム需要を、住まい手自身が楽しみながら顕在化させようという試みですね。これから必要になる技術だと思います。

山本(LIXIL):我々は数多くの住宅建材を扱っていますので、それら商品とIoTの連携を今後も進めていきます。さらにはビルダーが簡単に導入できるような仕組みというのを、整備していこうと考えています。これまで以上に、便利な暮らしを実現するための提案を積極的に行っていきたいと思います。

──連携という意味では、機器やソフトウェアの連携はもちろん、情報そのものの連携というのも非常に重要だと思いますので、ぜひ挑戦して欲しいと思います。

大地(大五):機器やサービスの選定や各種設定には、専門的な知識と技術が必要となるので、工務店さん単独では対応が難しい面もあるようです。そのような場面をサポートするために、メーカーや我々流通が協力して「サポートのための窓口を用意したい」と考えています。

 また、建て主へのアピールの際にIoT住宅の良さを伝えられず、機器の説明に終始してしまう例が多くあります。今後は製品のアピールではなく、「このIoT住宅ではどんな生活ができるのか」というようにサービスの使い方が提案できるように、取り組みを進めていきたいと考えています。

──ありがとうございます。今後は我々事務局も一緒になってサポートしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。