今年度で4年目を迎えた国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)。今回のシンポジウムでは、平成29年度から令和2年度までに採択された14のプロジェクトを5つのグループに分け、取り組みテーマごとにパネルディスカッションを行った。Part4のテーマは「ロボット等による家事負担軽減」だ。ロボティクスを取り入れることによって、生活の向上だけではなく、新しい住まいのかたちも模索する。今年度に採択された2事業者の取り組みを紹介する。

[動画]【パネルディスカッション】Part4 ロボット等による家事負担軽減
  • 【Part4「ロボット等による家事負担軽減」の参加パネリスト】
    • 三宅 千尋 日興タカラコーポレーション企画建築部
    • 大友 聡 良品計画 生活雑貨部企画デザイン担当
  • 【モデレーター】
    • 安達 功 日経BP総合研究所 所長

──Part4のテーマは「ロボット等による家事負担軽減」です。これは令和2年度に、初めて採択された分野となります。

Part4のテーマは「ロボットなどによる家事負担軽減」(資料:日経BP 総合研究所)
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 このテーマは住宅メーカーとIT企業の協業が期待できる分野と考えられます。また、ロボティクスを取り入れることによって、単なる生活の向上だけではなく、新しい住まいのかたちや、新しい建築計画・間取りというものが生まれる期待もあります。これから検証を進めていくプロジェクトなのですが、非常に夢のある分野ですよね。

モデレーターを務める日経BP総合研究所の安達功所長(枠外左)。パネリストは、日興タカラコーポレーションの三宅千尋氏(左)、良品計画の大友聡氏(右)(写真:日経BP 総合研究所)

 ここで取り挙げるプロジェクトは、日興タカラコーポレーションの「住宅供給事業における『サステナブルな社会』づくりへの新たな貢献」、良品計画の「ロボティクス導入によるスマートインテリア検証プロジェクト」の2つです。

住宅供給事業における「サステナブルな社会」づくりへの新たな貢献/日興タカラコーポレーション

日興タカラコーポレーションのプロジェクト「住宅供給事業における『サステナブルな社会』づくりへの新たな貢献」の概要(資料:日興タカラコーポレーション)
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――最初は、日興タカラコーポレーションの取り組みです(関連記事:コミュニケーションロボットによるが子育てをサポート)。資料の中央にある雪だるまのように可愛らしいものは、コミュニケーションロボットの「BOCCO emo」(ボッコ・エモ)というものです。そして、その右側にあるカラフルな小箱状のものが、ロボットと連携する「振動センサー」「人感センサー」、そして温度や湿度を感知する「部屋センサー」です。

 このプロジェクトは、センサーによる住宅内のモニタリング機能とロボットの発話機能を活用して、子供の見守りや子育てサポート、あるいは知育といったものを行い、どういった効果が表れるのかを見ていくものです。

 現在、対象の住宅を建築中で、6月くらいから検証が始まる予定です。このプロジェクトについて、日興タカラコーポレーションの三宅さんにお話しいただきます。

三宅(日興タカラコーポレーション):まず、上の資料にも出ていましたコミュニケーションロボットの「BOCCO emo」というものを住宅に設置して、居住者家族の生活の変化を検証するという狙いがあります。「家事負担軽減」というテーマの中でも、特に「子育て」に関する部分に注目して、このプロジェクトを進めていこうと考えています。

 コミュニケーションロボットによる「家事負担軽減」として、まず「親の声掛けルーティーンの減少」が挙げられます。例えば「手洗いはした?」「歯磨きはした?」「宿題はした?」「ゲームは終わる時間だよ」など、これまで両親が行っていた声掛けを、ロボットに担ってもらうことができます。また、このような定刻の発話によって、子供の生活リズムを整えるという効果も期待できます。

 ロボットは「発話サービス」というものも備えておりまして、こちらは季節の事柄などを話してくれます。例えば「今日は七草がゆを食べる日だよ」というようなことをロボットがしゃべります。こうしたことを、忙しさから伝えてあげられない場合も、親は負担に感じることがあるのではないでしょうか。これをロボットが代わってくれます。

 また、「BOCCOがこう言っていたよ」と子供は親に伝えるので、親子間の会話が増えるきっかけになるのではないかと思います。

 さらに、小さな子供が不用意に窓の解錠を行おうとした場合、ロボットに連動しているセンサーが感知して、子供に「危ないから近寄ってはだめだよ」というような発話をすることもできます。

 コロナ禍の影響で、子供の通学が突然停止になるなど、日常生活に思わぬ変化がありました。子供をひとり家に残す場合など、親は心配に感じることもあったでしょう。そのような場合でも、ロボットによる発話とメール機能を用いて、遠隔でコミュニケーションをとることができます。

 本プロジェクトの基本的な狙いは、子育て部分での家事負担軽減なのですが、ロボットのある環境で子供が成長することで、「持続可能な開発のための教育」いわゆる「ESD(※)」の導入になることも、期待できるのではないかと思っています。 (※「自立」「判断」「責任」「地域との関わり方」などの人間性を養う教育的観点。概要は文部科学省のウェブサイトを参照)

 プロジェクトでは、住まい手の子供を「3~5歳」「6~8歳」「9~11歳」と3つの年齢区分に分け、それぞれ「BOCCO emo」を設置する場所を変えて、効果の違いを検証します。検証の方法としては、アンケートを主体とした方法を予定しています。

 また、子供の反応だけでなく、家族の過ごし方にも変化があると期待されますので、そちらの検証結果も今後の住空間の提案、住宅のIoT化の企画に役立てていこうと考えています。

――ありがとうございます。ロボットを介したコミュニケーションを軸にして、いろいろな効果が期待できるという話でした。検証はこれからですが、非常におもしろいプロジェクトで今後が期待されます。

ロボティクス導入によるスマートインテリア検証プロジェクト/良品計画

良品計画のプロジェクト「ロボティクス導入によるスマートインテリア検証プロジェクト」の概要(資料:良品計画)
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――次に紹介するのが、良品計画のプロジェクトです(関連記事:「自律搬送ロボット」で生活の快適性・利便性を向上)。資料の右側の中ほどにある、黒い板状の機器が「家具を運ぶロボット」です。このロボットは「右に置いて」「手前に来て」というような指示によって自律的に移動します。

 このように人の呼びかけに応じて移動するロボットを、モジュール家具の足元に組み込んで、住宅内の家具を搬送・移動できるようなシステムを構築。住まい手の生活を快適・便利にして、家事負担軽減に寄与します。

 このプロジェクトでは、「ワンルーム」「リビング」「収納」「キッチン」の4種類の空間を用意して、それぞれに合わせた家具を製作、配置。利便性の向上や収納の効率化について検証しようとしています。

 良品計画の大友さん。本プロジェクトは、今まさに現在進行形で検証を行っているところだと思います。詳しくお話しいただけますか。

大友(良品計画):私たちの取り組みは、自律移動するロボットが、家具を動かすことで家事負担を軽減するというものです。家事のファーストステップを肩代わりして、肉体的にも精神的にも家事負担を軽減することを狙いました。

 4つのタイプ別の住居を設営して、この中で実証実験を行っています。4つのタイプとは次の様なものです。

(1)ワンルーム(一人暮らしをイメージした狭小のスペース)
(2)キッチン空間
(3)リビング空間
(4)収納空間(私たちが得意とする大容量の壁面収納の部屋)

 現在、実証実験を始めて1カ月強ですが、実際にやってみることで効果を実感することができました。

 「片付けをするには、まず靴をそろえるところから始めなさい」という教育的なテーマがありますが、このプロジェクトでは始めの一歩の踏み出しをロボットがしてくれることもあり、部屋をきれいに保つことができています。行動を肩代わりするシステムとも言えますし、日々のルーティーンを促すシステムということでもできると思います。

 また、だんだん慣れてくると仕事をしながら片づけをしたり、シャワーを浴びながら服を出してもらったり、「ながら作業」との親和性が高く、動きの効率化にもつながりました。効率化すると、「普段しないような行動もとるようになる」といった効果も、今回の実証実験で見ることができました。

──最初の一歩を踏み出すことをサポートする。サボりがちなところをサポートする。さらに「ながら作業」との親和性が高いというところに、将来的な可能性を感じます。今後の検証が楽しみなプロジェクトだと思います。

 最後に一言ずつ、住宅の中にロボティクスというテクノロジーが入ることによって、「今後こんなことができるようになるのではないか」あるいは「できたらいいな」という考えをお話しいただけますか。

三宅(日興タカラコーポレーション):一般的なIoT住宅では、住宅設備・家電などをロボットがAIによってコントロールする仕組みが期待されます。しかし、今回導入するコミュニケーションロボットは、IoT対応の住宅設備機器などと連動することができません。

 本プロジェクトは、例えば「温度の感覚を養うエアコン制御」「給湯器操作による入浴誘導」「宅配ボックスの荷物の受け取り」などを、「お手伝い」として子供に期待している点が特徴です。コミュニケーションロボットでは制御ができないものを、「どのように誘導して子供に自発的に動いてもらうか」というのが、課題となってくるものではないかと考えています。また、これらの取り組みの結果、「住空間の提案の仕方というものが変わってくるのでなないか」という可能性も感じています。

 今後のIoT技術が、住宅の在り方を変えるような新しいものになることを期待して、検証していきたいと思っています。

──なるほど、「IoTツールがお子さんのアップデートを促す」みたいな話ですね。いわゆる“弱いロボット”は最近注目を集めているキーワードでもあり、検証結果にも期待したいと思います。

大友(良品計画):技術先行になりすぎないように、まずは一般家庭の中での活用をどんどん進めていって、さらに課題を見つけてブラッシュアップ、ユースケースを発見していきたいと考えています。

 このシステムが入っていくことで、「部屋の使われ方」「物の持ち方」「日々の暮らし方」さらには「住環境そのもの」を大きく変え得る可能性があると考えています。今後、様々な人、小さな子供から高齢の方まで、幅広くお役に立てるように検証を続けていきたいと思います。

 まず、住まいの間取りや家具のデザインを固め、将来的な実販売に向けて取り組みを進めていきます。

──実販売も近く計画されているということで、そちらも期待しながら待ちたいと思います。