今年度で4年目を迎えた国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)。今回のシンポジウムでは、平成29年度から令和2年度までに採択された14のプロジェクトを5つのグループに分け、取り組みテーマごとにパネルディスカッションを行った。Part5のテーマは「紙オムツ減容処理」だ。高齢化社会における課題解決に向けて、介護施設で実証実験を行っている2事業者の取り組みを紹介する。

[動画]【パネルディスカッション】Part5 紙オムツ減容処理
  • 【Part5「紙オムツ減容処理」の参加パネリスト】
    • 松田 源一郎 パナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部 マニュファクチャリングソリューションセンターメカトロ・システム技術部 資源循環技術課
    • 福本 克久 LIXIL LWT Japan デザイン・新技術統括部 要素技術研究所 新領域開発G
  • 【モデレーター】
    • 野中 賢 日経BP総合研究所 上席研究員

──最後となるPart5のテーマは「紙オムツ減容処理」です。ここまで取り上げてきたIoT住宅とはやや性格が異なりますので、まずはこのテーマを取り上げる主旨について説明します。

Part5のテーマは「紙オムツ減容処理」(資料:日経BP総合研究所)
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 「紙オムツ減容処理」は、もともと本事業のテーマとしては掲げられていませんでした。国土交通省が平成29年度から「下水道への紙オムツ受け入れ実現に向けた検討会」を開始し、下水道で紙オムツを受け入れる方式などについての検討が始まったのを受け、本事業でも平成30年度にテーマとして取り入れました。その結果、後ほど紹介する2つの事業が採択されたという経緯になります。

 先述した国交省の検討会では、「Aタイプ」「Bタイプ」という2つの処理方式が検討されまして、今回の事業でもAタイプとBタイプ、それぞれの提案が採択されています。どちらのプロジェクトも介護施設での紙オムツ処理を対象にしており、処理装置を実際に製作したうえで、介護施設に持ち込んで実証実験を行っています。

 装置の仕様や機能、性能などはもちろん重要ですが、実際の介護現場での使い勝手についても検証が必要なところです。実際に使ってみた結果、「介護のワークフローとぶつかる要素がでてきた」という報告もありましたので、そういった課題についてもお話を伺いたいと思います。

モデレーターを務める日経BP総合研究所の野中賢上席研究員(枠外左)。パネリストは、パナソニックの松田源一郎(左)、LIXILの福本克久(右)(写真:日経BP 総合研究所)

 ここで取り上げるのは、パナソニックの「分離型紙オムツ処理による介護負荷低減」、LIXILの「破砕・回収型紙オムツ処理による介護負担と環境負荷低減の取組」の2つです。

分離型紙オムツ処理による介護負荷低減/パナソニック

パナソニックのプロジェクト「分離型紙オムツ処理による介護負荷低減」の概要(資料:パナソニック)
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――パナソニックの「分離型紙オムツ処理による介護負荷低減」は、国交省の検討会における定義で、「Aタイプ」に相当する「固形物分離タイプ」です。使用済みの紙オムツから汚物を分離して、紙オムツはゴミとして回収する仕組みになります(関連記事:使用済み紙オムツをまとめて処理、脱水して重さや体積を3分の1に)。

 仕組みは、資料右側の略図の通りです。処理機の中に使用済みオムツをそのまま投入すると、塩化カルシウム水溶液中で撹拌され、オムツに使われている高吸水性ポリマーが塩化カルシウム水溶液により失活し、液状化します。すると、ポリマーが配管を詰まらせることなく、下水道に流せるようになります。残った固形物は、最後の袋詰めまでが自動で行われる仕組みです。使用済み紙オムツの重さと体積は、それぞれ約2分の1まで減ります。

 減容処理前の紙オムツは介護スタッフが一斉に回収し、まとめて処理機に投入します。袋詰めされた処理後の紙オムツは汚物処理室で一時保管して、1日1回まとめて屋外に搬送するという作業の流れになっています。

 このプロジェクトはすでに検証が始まっていますので、これまでの検証の効果・結果について詳しく説明していただきたいと思います。

 パナソニックの松田さん。実証実験の結果、効果がかなりあったと聞いています。どんな効果があったのか、詳しくお話しください。一方で課題として見えてきた部分についてもお話しいただけますでしょうか。

松田(パナソニック):ご説明いただきましたように、Aタイプの処理機を作って、実際に介護施設に設置のうえ、実証実験を行ってきました。

 まず減容の効果ですが、もともと3分の1を目標にしていたところ、ちょっとそこには届きませんでしたが2分の1までは達成できました。目標に届かなかった要因の1つは、「汚れの少ない紙オムツ」が我々の想定よりも多かった点です。汚れの少ない紙オムツの場合、元の体積・容積が小さいため、容量が減りにくかったのです。ただ、2分の1になった時点で、介護スタッフの方からは「これならゴミ袋の扱いが楽になりそうだ」というような好評をいただけました。

 臭いは10分の1まで抑制することができました。「臭いを抑えるために別途、新聞でくるんだりする手間を省けるかもしれない」と、ポジティブな意見をいただいています。

 「機器の使い勝手」という面も検証の中で見ていきました。最初は「ちょっとおっかなびっくり」というところもあったのですが、少し触っていただいただけで、「これなら扱えそうだよ」という声を得られました。使い勝手については狙い通りのものができたかなと思っています。

 課題についてですが、一番は処理時間です。今の我々の処理機は、1回の処理に30分くらい時間がかかるんです。

 「処理機が1回稼働し始めてしまったならば、そのあとで回収してきたオムツはすぐに投入できない。それはいったん仮置きしておいて、今の処理が終わった頃に、また戻ってきて処理機に投入する」ということを介護スタッフの方にお願いする必要がありました。そのためワークフローが煩雑になってしまい、「負担が逆に大きくなってしまう」という否定的な意見が出る結果となりました。この点は一番大きな課題だと考えています。

 それから、現在の処理機はゴム手袋の処理に対応していません。「ゴム手袋は投入できない」という仕様を理解してもらったうえで運用してもらいましたが、これまでゴム手袋と紙オムツを一緒に捨てていた施設では新たに分別作業が発生し、かえって手間が増えてしまう結果となりました。この点も今後の課題として受け止めています。

 ワークフローにうまく取り込んでもらうためには、「処理時間を短くする」「1回当たりの処理量を増やす」などの基本的な性能向上が必要です。さらには、「より扱いやすくなる仕組み」や「ツール」の開発も、検討していく必要があると考えています。

 現在はコロナ禍にあり、実証実験がやりにくい状況ではあるのですが、引き続き実験を進め、改善を加えていきたいと思っています。

──本当に便利に使ってもらうためには、ワークフローを良く理解して、それに沿ったものを作っていくということが必要なのですね。

破砕・回収型紙オムツ処理による介護負担と環境負荷低減の取組/LIXIL

LIXILのプロジェクト「破砕・回収型紙オムツ処理による介護負担と環境負荷低減の取組」の概要(資料:LIXIL)
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――次は、LIXILの「破砕・回収型紙オムツ処理による介護負担と環境負荷低減の取組」(関連記事:紙オムツを破砕して回収、交換作業の流れを想定して機器を開発)。こちらの提案が、国交省の定義した「Bタイプ」で、「破砕回収タイプ」と呼ばれています。

 上の資料の右下に「Bタイプ概要」と書かれた図があります。Bタイプはこの図のように、介護施設の各フロアに破砕装置を設けておき、そこに紙オムツを投入すると、破砕処理された紙オムツが専用配管を通して屋外の分離回収装置に自動的に集められる仕組みになっています。ただし、専用配管の敷設など、かなり大掛かりな施工が必要となります。プロジェクトでは現在、このBタイプの専用配管の仕様について検討しているということです。

 一方、Bタイプを小規模にした「Baタイプ」というものもあります。先ほどは破砕装置と分離回収装置が別々になっていましたが、これを一体化してコンパクトにしたものがBaタイプです。LIXILではこのBaタイプの機械を開発しまして、福岡市の介護施設で実証実験を始めています。

 それでは福本さん。BタイプとBaタイプ、2種類のプロジェクトがありますが、それぞれお話しいただけますか。

福本(LIXIL):まずBタイプについてですが、これは各フロアに「破砕機」それから「高分子処理をする装置」を設けて、そこで生じた廃液を屋外の「分離装置」まで専用配管を通じて流す仕組みです。紙オムツを破砕機に投入するだけで処理可能なため、施設にとっては理想的ともいえますが、専用配管を後から敷設するというのはかなり大変で、実証実験をするにもハードルが高い。ほぼ新築の物件でなければ実現が難しいものです。

 それに対して「Baタイプ」は弊社が企画・提案したもので、「破砕」「ポリマー処理」「分離回収」を1つの装置にまとめてコンパクトにしたものです。専用配管は必要ありません。これでしたら既存の介護施設でも、各フロアのオムツが集まる「汚物処理室」に設置できるのではないかと考え、開発しました。短期間ではありますが、実証実験も始めています。

──Baタイプについて、実際に実証されてみての効果や、介護スタッフの感想はどのようなものだったのでしょうか。

福本(LIXIL):我々が当初想定していたルーティーンは「1人の介護スタッフが順に要介護者を回り、1人の世話を終えるたびに紙オムツを汚物処理室に持ち帰る」というものです。しかし、要介護者が20名以上の施設ともなると、「2名以上の介護スタッフが同時に要介護者のもとを回る」という実体がありました。

 Baタイプの機械は、紙オムツを1つずつしか処理できません。複数の介護スタッフが同時に動くようなルーティーンの場合、汚物処理室で作業がぶつかる例が生じまして、介護スタッフから「2個くらいまとめて処理したい」という要望を受ける結果になりました。また、施設によっては「連続して紙オムツを交換して、汚物処理室にはまとめて持ってくる」という方法をとっている場合もあり、「1個ずつ投入」という仕様をもう少し柔軟に対応できるよう、改良しなくてはいけないと考えています。

──なるほど。介護施設のやり方によって、必要な仕様もまた違ってくるわけですね。しかし個別のオーダーメイドというのも現実的ではないように思われます。多くの施設から支持される仕様・性能にたどりつくのには、もう少し時間がかかりそうですね。

 さて、先ほどパナソニックの松田さんから「ワークフローへの理解が必要」というお話をいただきました。松田さんも介護施設の方といろいろ意見交換をしながら、出てきた意見を吸い上げるかたちで、仕様や性能を探っているのでしょうか。

松田(パナソニック):そうですね。やはり施設ごとにいろいろなやり方があって、その中で「上手くヒットしそうなのはどんな仕様か」というのを、今検討しているところです。

──現状は試作機による実証中だと思うのですが、例えば今後の量産計画など、この取り組みが広がっていく可能性みたいなものを、それぞれお聞きしてもよろしいでしょうか。

松田(パナソニック):まだまだ研究段階で、すぐお約束できるものではないのですが、課題がありながらも良い部分というのも見つかっています。各方面から様々なアイデアをいただいていますので、それらを吸い上げて、量産化などにつなげられるように努力していきたいと思います。

──福本さん、いかがでしょうか。

福本(LIXIL):松田さんと同じく、まだまだ改良が必要だと思っています。具体的には、「破砕型ということで装置が大きくなってしまう」という点が一番のネックです。破砕型の特長として「いろいろなものを投入しても短時間で処理できる」というのは大きなメリットではありますが、メリットはそのまま「いかにコンパクトにするか」というのが重要な課題であると考えています。

──介護の現場では、みなさん厳しい状況で働かれています。こういった技術開発が、介護施設の状況の改善につながるものと期待しています。