国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)が、これまでに採択してきたプロジェクトは17事業に上る。今回のシンポジウムでは、日経BP総合研究所の野中賢氏が、過去の採択事業の特徴を分析、その位置付けと近年の傾向について解説した。

[動画]日経BP 総合研究所 社会インフララボ 上席研究員 野中賢

 日経BP総合研究所の野中です。よろしくお願いします。ここでは、これまでに採択された事業について、その傾向の変化がどうなっているかについて解説します。

ウェビナーシンポジウムにおいて、近年の採択事業者の提案事業について解説する日経BP総合研究所の野中賢上席研究員

 最初に、本事業の概要をご紹介します。簡単に説明すると「IoTを活用した住宅の整備に対して、国土交通省が補助をする」という事業です。

 本事業には、下図の通り6つのテーマが設定されています。「高齢者・障害者などの自立支援」「健康管理の支援」などに加え、「その他」という項目で、6つのテーマ以外で事業の趣旨に合致したものを募集しています。

事業の概要と、募集している取り組みテーマ(資料:日経BP総合研究所)
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 これまで、毎年2回、4月と7月に募集を開始してきました。事業は2017年度に始まり、2021年度で5年目を迎えました。これまでに17の事業が採択されています。

 それらを以下の一覽表にまとめました。表の右側半分には、それぞれの採択事業が6つの取り組みテーマのどれに当てはまるか」、丸印を付け示しています。

17の採択事業と取り組みテーマ(資料:日経BP総合研究所)
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 さらに、各事業の具体的な内容を整理したのが下の表です。タイトルだけを見ても具体的な事業内容がわかりにくいので、どのような事業なのかについて、右側にキーワードで整理しています。HEMSやIoT、ロボットといった、関連のキーワードが並んでいることがわかるかと思います。

17の採択事業の概要とキーワード(資料:日経BP総合研究所)
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年を追って変化する採択事業の位置づけ

 さて、ここからは、これらの事業の位置づけを少し整理してみます。採択事業を位置づけるマトリックス図を用意しました。

採択事業を位置づけるマトリックス図(資料:日経BP総合研究所)
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 縦軸が「住宅との関連度」で、上に行くほど住宅の実装に近いものになり、下にいくほど単体のデバイス、アプリなどを扱う事業になります。一方、横軸は「技術開発の進展度」で、右側に向かうにつれ実用段階に近づき、左側に寄るほど研究・開発段階ということを示しています。

 そして、図の右上部分の赤で示した範囲が、本事業でカバーする範囲を示しています。つまり基礎的な技術開発は、本事業の補助対象とはなっていないということです。

 さて、このマトリックス図の中に17の事業を落とし込んで、「どのような位置づけになるのか」というのを簡単にご説明します。

初回である2017年度の採択事業の位置づけ(資料:日経BP総合研究所)
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2018年度の採択事業(赤で表示)(資料:日経BP総合研究所)
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 2017年度は、5つの採択事業のうちの4つがHEMS関連で、住宅に実装するものが多く、ほとんどの事業が右上側に事業が集まっています(図中右上の「HEMS」という水色のかたまり)。

 翌年の2018年度には「紙オムツの減容化」という、少し特殊なパターンのテーマも募集しました(図中左下)。それ以外ではIoTを活用した「見守り」といった事業が出てきています。

2019年度の採択事業(赤で表示)(資料:日経BP総合研究所)
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2020年度の採択事業(赤で表示)(資料:日経BP総合研究所)
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2021年度の採択事業(赤で表示)(資料:日経BP総合研究所)
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 2019年度にも、IoTを活用した「見守り」「健康管理」といった事業が登場しています。2020年度は、「ロボットを活用した子育て支援」「家事負担の軽減」などの事業が注目を集め、採択されたのが特徴です。

 昨年募集した2021年度事業では、IoTを住宅の「物資管理」や「防災」に使うといった新しいアイデアが登場してきています。

5年間での取り組み内容の変化(資料:日経BP総合研究所)
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 5年間という短い期間ではあるのですが、時間の経過とともに、事業の傾向にも変化が出てきているように思います。例えば、利用するシステムやデバイスに注目してみると、事業の始めの頃は「HEMS」を採用する提案が多かったのですが、時を経るごとに徐々に「IoT機器のセンサ」を使ったものが出てきて、さらに最近はロボットなどが出てきています。

 開発、実装の方向性について見ていくと、これも始めは「HEMS」が中心で、既存のシステムを住宅に実装していくというものが多く見られました。しかし、最近は独自のIoTシステムを開発して使う提案が見られるようになりました。システムの使用目的についても、従来は「健康管理」が中心であったところ、近年では「防災」「物資管理」といった新しい適用分野に拡大されてきています。

5年間の採択事業の変化を解説する野中氏(写真左)と、野中氏の分析についてコメントする日経BP総合研究所の安達功フェロー(写真右)

安達(日経BP総合研究所):このように整理すると傾向が非常によくわかります。興味深いと思ったのが、近年になって取り組みの適用範囲が、防災、物資管理という、これまで見られなかった分野にも広がってきている点です。

 一色先生の基調講演でも話題とされていましたが、「IoT住宅」、そして「オープンネットワーク」というものには様々な可能性がある訳です。しかし、その可能性にはなかなか気が付きにくい。

 私もこの事業は初年度から見てきているのですが、初期の頃は手探りで「とりあえずHEMSを入れてみようか」といった単純な試みだったものが、年々試行錯誤を繰り返して進化している様子がうかがえ、非常に興味深く感じています。

野中:これまで5年間、継続的な事業としてやってきたことで、「過去の採択事業を参考にしながら、さらに新しい提案に取り入れていく」という効果が生じているようにも感じています。