5回目となる今回の国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)では、これまでに採択されたプロジェクト計17事業のうち、近年採択された6事業の概要とこれまでの進捗報告が行われた。前編では、2020年度に採択された事業者3者による発表の様子をリポートする。

  • 【2020年度採択事業者】
    • 直江 淳 日興タカラコーポレーション 企画建築部 CS推進課 課長代理
    • 村田 想 良品計画 企画デザイン室 プロダクトデザイン課
    • 村上 剛志 三菱地所ホーム 技術開発部 環境技術開発グループ グループリーダー
  • 【モデレーター】
    • 安達 功 日経BP総合研究所 フェロー
    • 野中 賢 日経BP総合研究所 社会インフララボ 上席研究員
モデレーターを務める、日経BP総合研究所の安達功フェロー(写真右)と、日経BP総合研究所社会インフララボの野中賢上席研究員(写真左)

野中(日経BP総合研究所):それではここから、各事業者の代表者にご登場いただいて、最新動向を報告していただきます。2020年度と2021年度に採択された6事業に焦点を当てて、取り組みの内容、進捗状況等についてお話いただきたいと思います。

安達(日経BP総合研究所):採択事業者とは、われわれも常にやり取りしているのですが、最新の状況をまとめて聞く機会というのはなかなかないので、今日は皆さんの報告をとても楽しみにしています。

野中:前半は2020年度の採択事業である3プロジェクトを取り挙げます。最初は、日興タカラコーポレーションの直江様、よろしくお願いします。

住宅供給事業における「サステナブルな社会」づくりへの新たな貢献 / 日興タカラコーポレーション

[動画]日興タカラコーポレーション 直江淳氏
コミュニケーションロボットを使ったプロジェクトについて解説する日興タカラコーポレーションの直江淳氏(資料:日興タカラコーポレーション)
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直江(日興タカラコーポレーション):こんにちは。日興タカラコーポレーションの直江です。よろしくお願いします。

 本件プロジェクト「住宅供給事業におけるサステナブル社会への新たな貢献」では、コミュニケーションロボット、およびIoT設備機器を利用した「家事負担軽減・子育て支援」について検証しました。

 今回の事業で採用した当社の分譲計画の概要を説明します。名称は「レーベンプラッツ印西牧の原ブランクラス」です。近年「住みたいまち」として注目されている千葉県印西市で開発した、119区画の大型分譲地です。先行して引渡しをした21世帯を対象に、この検証を行っております。

コミュニケーションロボット「BOCCO emo」と、それを取り入れたIoT住宅設備(資料:日興タカラコーポレーション)
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 本事業の対象住宅では、IoT化に加え、「ユカイ工学」が開発したコミュニケーションロボット「BOCCO emo」を導入しました。このコミュニケーションロボットによる子育て支援効果を検証することで、生活を豊かにする住空間の提案につなげたいという目的がありました。

 子どもにも利用できるコミュニケーションロボット「BOCCO emo」は、ボタンを押しながら話すと、音声とテキストを専用アプリに届けることができます。また本物件では、生活習慣を整えるために、子どもにもわかる雑学を朝晩に発話させるサービスを導入しています。

 一方、IoT住宅機器設備は、音声を認識するAIスピーカーやアプリから指令を出すと、無線Wi-Fiにより遠隔操作を行えるようにしました。

検証の背景・目的と実証内容(資料:日興タカラコーポレーション)
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 なぜ今回、「家事負担軽減」と「子育て支援」について実証するに至ったかといえば、今般、「家事負担軽減のニーズ」が顕在化していたことが1つ。もう1つは、在宅時間の増加など、コロナ禍以降の生活スタイルの変化により、家事や子育てに関する課題が増える傾向が見てとれたためです。

 検証の目的は次の4つの項目です。
(1)日常的な家事の負担軽減効果および子育て支援効果
(2)子どもの生活習慣改善効果
(3)親子コミュニケーションの効率化・促進効果
(4)外出中の親が行うIoT機器遠隔操作の利用促進効果

 実証の流れを説明します。まず昨年7月に入居者へ引き渡しを行い、本実証のために作成したマニュアルオンライン講習会や、メールの配信などを通じて、コミュニケーションロボットの利用促進を図ってきました。その後、4回に分けてアンケート調査を実施し、特に使用頻度が高いと思われる3世帯にインタビューを行いました。

アンケート調査の結果(資料:日興タカラコーポレーション)
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 アンケート調査の結果ですが、家事や子育てにおける「課題感」や「期待感」を調査したところ、3歳以上の子どもがいる3世帯すべての世帯が「子どもとのコミュニケーションを増やしたい」ということを課題として感じていました。

 ほかにも「予定や、やらなければならないこと、家事などを忘れないようにしたい」「子どもに口うるさく声をかけることを減らしたい」「身の回りのことを子どもが自発的に行えるようになってほしい」などを、3世帯中2世帯が課題として挙げています。

 「BOCCO emo」や「IoT機器」を使用することへの「期待感」もあるようで、実際に「家事負担の軽減」や「子育て支援」を必要としていることがわかりました。

アンケート調査の結果における「親子のコミュニケーションの効率化と促進」(資料:日興タカラコーポレーション)
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 インタビューの調査結果について、より詳しく解説します。ヒアリングした中で「最も効果が実感されていた」と感じたものは、先に挙げた検証項目(3)の「親子コミュニケーションの効率化・促進効果」についてです。

 先ほど「子どもとのコミュニケーションを増やしたい、」「子どもに口うるさく声をかけることを減らしたい」という課題を挙げましたが、「『BOCCO emo』が声かけのきっかけになる」「『BOCCO emo』を介して声かけをすることで、摩擦が減っている」という結果が得られており、「直接親が言うよりも心理的な摩擦が減って、ほっこりした雰囲気になる」という声も上がっています。

 また、携帯電話の着信に気づかない留守番中の子どもに対して、「BOCCO emo」に発話させることで連絡するなど、留守中の親子コミュニケーションの効率化にもつながっているようです。

アンケート調査の結果における「子育て支援」(資料:日興タカラコーポレーション)
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 「BOCCO emo」による子育て支援について説明します。「課題感」のアンケート結果にあった「身の回りのことを子どもが自発的に伝えるようになってほしい」という課題に対し、2つの効果が確認されました。

 まず1つは、「BOCCO emo」を介することで、「声かけの時の心理的な摩擦の軽減が、子育ての精神的なゆとりになっている」こと。

 2つめは「子どもが自発的に動くきっかけになる」という効果です。「BOCCO emo」は設定すれば、決まったことを発話させる機能があるので、幼児の場合、この機能を用いたメッセージや指示が、親の指示が無くとも自発的に動くきっかけにもなっているようです。

 このように「BOCCO emo」が子育支援に寄与していることが確認されています。

 次に、IoT機器による日常的な家事の負担軽減について解説します。「課題感」のアンケート結果にあった「予定や、やらなければならない家事などを忘れないようにしたい」ということ課題に対し、「曜日と時間の設定をして『BOCCO emo』のメッセージを聞いているうちに、ゴミ出しの日を覚えた」「子育てで思うように動けない場合でも、スマホで家電を操作することでできるので助かる」という声があり、IoT機器の導入が家事負担の軽減に寄与していることも確認されています。

 また、遠隔操作により家電が突然動くと、子どもが驚いてしまうので「驚かせないように、事前に『BOCCO emo』から予告発話させる」といった使い道も考えられていました。

事業のまとめ(資料:日興タカラコーポレーション)
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 ここまでの事業のまとめです。
(1)インタビューを行った3世帯の事例から、特に親子のコミュニケーション促進に一定の効果をもたらす可能性があり、コミュニケーション促進から派生して子育て支援に有効ではないかと推察しています。
(2)積極的にBOCCO emoを使用した家庭は、その使用した機能に該当する効果を感じていたものの、使用促進が想定よりも進まず、使用した家庭は少数でした。そのため、定量的な検証には至っていません。
(3)今回の結果を踏まえ、家事負担軽減や子育て支援ニーズの強い家庭に対する、コミュニケーションロボット導入の選択肢を検討し、住生活を豊かにする住空間の提案につなげたいと考えています。

「実証調査から導き出せる住空間」の提案(資料:日興タカラコーポレーション)
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 最後になりますが、ここまでの実証調査から導き出せる住空間について検討しましたので、ここで報告いたします。

 弊社としては「センターリビング」のプランの検討が良いと感じました。コミュニケーションの促進と家事・子育て負担軽減を図るため、生活にかかる事象の大部分をリビング拠点で行うプランです。コミュニケーションスペースやコミュニケーションツールの充実を最大限に発揮させることで、どこにいても我が家の中心で、家族の存在が感じられるような住空間を提案いたします。

野中:直江様、ありがとうございました。基調講演での一色先生のお話(基調講演)でも出てきたロボット(アバター)のお話でしたが、やはりコミュニケーションに対して非常に役に立つということですね。

安達:私は最後の住空間の提案というのが、おもしろかったと思います。例えば、昔は住空間の真ん中には、おばあちゃんがいた。しかし、今はいなくなってしまい代わりにロボットがいる。それはもしかしたら「バーチャルなロボットおばあちゃん」かもしれない。一色先生の基調講演での「OriHime」ロボットの話を聞いていると、そういう可能性も想像してしまいました。

 コミュニケーションへの活用についても、親がいないときのメリットだけではなく、親がいるときにも潤滑剤になるというのが面白い。「子どもは、母親から言われると聞かないのだけれど、ロボットに『片付けて』と言われると素直に聞く」。そんな例を聞いたこともあります。確かに1対1だとギクシャクしてしまうところが、間にコミュニケーションツールが介在することで、滑らかになるということも考えられます。

野中:次の発表もロボットに関連したものになります。良品計画の村田様、お願いします。

ロボティクス導入によるスマートインテリア検証プロジェクト / 良品計画

[動画]良品計画 村田想氏
家具を運ぶロボットを使うプロジェクトについて解説する良品計画の村田想氏(資料:良品計画)
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村田(良品計画):株式会社良品計画、企画デザイン室の村田です。よろしくお願いします。 本日は私たちが取り組んできました「ロボティクス導入によるスマートインテリア検証」に関して報告させていただきます。

 私たちのプロジェクトでは、自律移動可能なロボットを用いて家庭内の家具などを搬送、移動するシステムを構築し、ユーザーの家事負担がどのように軽減されるのかを検証しています。

 家具を運ぶロボットとは、モジュール家具の足元にロボットが組み込まれることで、家具が部屋の中を自動的に移動する仕組みを表しています。そして、このロボットは「人の呼びかけ」をきっかけに自律的に動作を行います。このシステムが具体的にどのような点で、家事負担や生活にメリットを与えることができるのか、日々の暮らしを想定した実証実験を行いました。

実証実験における3つの視点(資料:良品計画)
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 プロジェクトの進め方ですが、ロボティクスが暮らしに対して技術先行となりすぎないように、生活者視点で導入する切り口を検証する必要性がありました。そのために、住空間を構成する家具、部屋、建物の3つの視点から実証実験の計画を行いました。

 具体的な検証は以下の3つのステップからなります。

「ステップ1」の検証プロジェクト(資料:良品計画)
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 最初の「ステップ1」では、4つのタイプ別の住居を設営して実証実験を行いました。
(1)一人暮らしや寮をイメージしたワンルーム
(2)リビング空間
(3)大容量の壁面収納がある収納空間
(4)キッチンをメインとしたスペース
加えて「これらをつなぐ共有空間や」「昨今のテレワーク環境」なども、想定した要素として含まれています。

 実際に行ってみてわかったロボティクスの効果として、「家事の第一歩を肩代わり」「ながら作業」「日々のルーティンを促す」などのキーワードが挙げられます。

 例えば、家具が自動的に動くことで、片付け、ゴミ出しなどの家事の第一歩を肩代わりしてくれるので、肉体的にも精神的にも負荷が軽減されることが実感できました。また、「仕事をしながら片付けをする」「シャワーを浴びながら服を出す」などの「ながら作業」との親和性が高く、生活者の動きの効率が良くなったり、普段しない行動をするようになったりといった効果も見られました。

 この結果からわかるように、本プロジェクトは「家事などの行動を肩代わりしてくれるシステム」とも言えますし、「人をサボらせないために日々のルーティンを促すシステム」と言うこともできると思います。

「ステップ2」の検証プロジェクト(資料:良品計画)
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 検証プロジェクトの「ステップ2」では、実証実験で発見した気づきや課題をもとに、生活空間での佇まいや機能の面で、家具のアップデートやロボティクスの精度向上に取り組みました。

 例えば、「ワゴンや収納家具とロボットが組み合わされると、欲しいものを運んでくれる存在になる」といったように、ロボットが移動させる家具によって、機能や人に与える意味が大きく変わることの重要性を再認識し、家具のデザインに反映させました。

 また、人間がロボットに対し安心して任せられるように、「音声認識」や「移動の成功率」など、ロボティクス自体の精度向上も併せて実施しています。このシステムでは音声でロボットに指示をするわけですが、指示する側の人間が「どのような文言でコマンドを入れれば良いかわからなくなる」といった課題も、今回の実証実験で見つかりました。これに関しては、スマートフォンアプリとの併用や、曖昧さを受け入れられるようにしていく改良で改善が見込まれます。

「ステップ3」の検証プロジェクトを解説する資料(資料:良品計画)
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 「ステップ3」は、今後考えている展開になります。

 働き方改革やコロナ禍を経て、住空間やライフスタイルの姿にも、今後は大きな変化が予想されます。そうした世相や変化にも対応できるよう、実証実験だけではなく、既存空間や建物、一般家庭の中で実際に活用し、さらに課題を見つけてブラッシュアップしていきたいと考えています。

 このシステムがあらゆる住空間に入っていくことで、部屋の使われ方や家具自体の形が変わると考えています。小さなお子様から高齢者の方までお役に立てるように、引き続き検討を進めていきたいと考えています。

 今回の実証実験を通して、ロボティクスの強みと弱みがわかりました。具体的には、「明確なタスクがある仕事やルーティン」というものは、ロボットが行える得意分野とも言えますが、「曖昧さや毎回異なるタスク」に対応するには工夫が求められます。住宅や実際の暮らしでは、「暗黙的な行動」や「曖昧さ」が多く含まれますので、その中でも安心して、かつ豊かな暮らしが実現できるように、曖昧さにも対応できるようなロボティクスや、住まいというものを実現したいと考えています。

野中:ありがとうございました。非常に興味深い、生活の形すら変えてしまいそうな取り組みだと思いました。

安達:間取りを変えるのではなく、ロボットが介在することで間取り自体が変わっていくという、今までにない概念の可能性を感じます。これは評価委員会でも、特に専門家の方々から期待の声があがるようなプロジェクトでした。

野中:住宅の設計そのものが、変わってしまうかもしれませんね。

安達:村田さんが最後に言っていた「ニューノーマル時代の対応」ということで、非接触な生活スタイルをサポートするというところにも、実はすごく可能性があると思っています。

野中:さて3番目の発表に移ります。三菱地所ホームの村上様、お願いします。

「全館空調付IoT住宅」の普及型モデルケースのトータル提案 / 三菱地所ホーム

[動画]三菱地所ホーム 村上剛志氏
「全館空調付IoT住宅」に関するプロジェクトについて解説する三菱地所ホームの村上剛志氏(資料:三菱地所ホーム)
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村上(三菱地所ホーム):弊社では「全館空調付IoT住宅」の普及型モデルケースのトータル提案」をさせていただいています。このタイトルのように全館空調で、健康、快適、エコエネな家をつくり、そこにIoTの各機器を組み合わせるのが基本的な構成になっています。

 「家に長く住む」ということは、サステナビリティーと非常に密接なところなので重要視しており、「地球環境の変化」「ライフスタイルの変化」などに対して、全館空調とIoTの機器をうまく組み合わせることで対応しています。例えば「新型コロナによる在宅勤務時間の増加」という変化にも対応できる点が特徴です。

 具体的には、温度の見える化によって「好みに合ったコントロールを可能にする」「光熱費を抑制する」。照明、シャッターの自動ON/OFF機能によって、「在宅勤務のときの業務と生活のモードに、はっきり区別をつける」といった工夫を提案しています。

 検証結果ですが、やっと3棟の引き渡しが完了し、入居時のアンケートを取り始めたところです。その結果を後ほどご紹介したいと思います。

「全館空調付IoT住宅」で使用する設置機器(資料:三菱地所ホーム)
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 上の資料が今回提案している設置機器で、左上が「全館空調の設備機器」、中央上に「HEMS」「照明のアダプター」「シャッターのアダプター」。右上が「テレビドアホン」で、その下がそれと組み合わせたカメラとなっており、非常時のときに外から家の状況を見ることができます。下段の中央が電動シャッター、左下が宅配ボックスです。

本プロジェクトの具体的な実証方法(資料:三菱地所ホーム)
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 今後行う実証内容は次の2つです。
(1)入居時・入居1年後のアンケートの実施
(2)HEMS収集データの集計・分析

 アンケートに関しては、まず入居時に行います。これは、1年後に再度アンケートを取ったときの分析のため、「家族構成」「生活パターン」「IoTに興味があるかどうか」ということも含め、基本情報収集を目的に実施しています。

 1年後には、「実際にどの機器がよく使われているか」「弊社で想定したとおりに使ってもらえているか」などを測るアンケートを実施し、入居時のアンケートとの関係性を確認するという方法を計画しています。

 HEMSデータについては、「電力量」「IoT機器の使用状況」などを収集し、「IoT機器の使用頻度」「どんな使われ方をしているのか」という点を分析していきたいと思っています。こちらも1年後には、「アンケート情報とどのような因果関係性があらわれるのか」という点も併せて分析して、今後のIoT化の促進に役立てていければと思っています。

これまでの入居時アンケートの結果(資料:三菱地所ホーム)
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 これまでに実施した入居時のアンケートの結果を報告します。まだ3棟しか引き渡していないのであまり大きい数字にはなっていませんが、「どんな傾向があるか」という点も含めて、ご報告できればと思います。

 アンケートの内容としては大きく、「以前の住まいがマンションなのか」「戸建て住宅なのか」という問いがあり、加えて「家族構成」について尋ねています。

 今回の3棟では小さなお子様がいるご家庭がなく、どちらかというと高齢者寄りの年齢構成でした。その代わり、比較的アンケートを採りにくい二世帯住宅が2棟ありますので、高齢者を対象にした分析ができるのではないかと考えています。

ペットの有無や在宅勤務に関するアンケートの結果(資料:三菱地所ホーム)
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 最近ペットを飼っている方も多いので、ペットを飼っているかどうかもヒアリングしています。複数回答可の問いで、現在、犬が2件、熱帯魚1件、飼っていない世帯が1件となっています。

 このプロジェクトでは、「在宅勤務がより快適になる」という点を強調しているのですが、現状、在宅勤務をされている居住者があまりおりません。今後、在宅勤務の物件が増えていくことに期待しています。

建物性能、エコ・スマートハウス、生活スタイルなどに関するアンケートの結果(資料:三菱地所ホーム)
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 入居時のアンケートの「関心の高いものは?」という問いで、「建物性能」「エコ・スマートハウス関連」「生活スタイル」などのうち、いずれに関心を持たれているのかというのをアンケートしています。建物性能に関して、「防災」への関心が低いようですが、その他の項目については皆さん気にされている結果がでています。

 エコ・スマートハウス関連への関心については、まず「蓄電池」にはあまり興味を持っていないようです。一方「HEMS」「スマートフォン」などには3件とも興味を持っています。この結果をみると、比較的率先してIoT機器を使っていただけるのではないかと考えています。

 生活スタイルについては、やはり年齢層が高いのと、現在の対象が二世帯住宅ということもあり、「収納」「室内干し」「高齢者対応」という保守的な項目に関心が集中しています。今後、小さなお子様がいるような住宅が対象になれば「家事時短」「子育て」といった項目への興味も増えてくるのではないかと考えています。

HEMSの収集データの集計・分析。電力消費と各部屋の温度分布に注目している(資料:三菱地所ホーム)
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 今後、予定しているHEMSの収集データの集計、分析のアウトプット例をご紹介したいと思います。あくまでも参考のために「例」ですので、その旨ご了承ください。大きく物件単位と実証物件全体の比較という、2つを評価しようと思っています。

(1)物件単位
 物件ごとの消費電力量を集計し、分析します。「どういうところで電力消費が多いのか」「太陽光発電がどれだけ発電しているのか」のほか、全館空調ですので「各部屋の温度分布がどういう分布になっているのか」という点も調査・分析します。

 弊社としては「各部屋の温度分布」がきちんとフラットで、「部屋間に温度差のない空間になっている」というアウトプットを想定して評価する予定です。

HEMSの収集データの集計・分析イメージ。「最暑日」や「最寒日」の温度グラフに「IoT機器使用回数」をプロットする方法と、「消費電力ごとのIoT機器の使用回数」の分析が例示されている(資料:三菱地所ホーム)
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 さらに、「最暑日」や「最寒日」に、居住者が温度調整をしたかどうかを補足し、温度グラフに「IoT機器使用回数」をプロットする分析を予定しています。これにより、IoT機器の使われ方が推測できるものと考えています。

 また、「消費電力」と「IoT機器の使用回数」を収集すれば、「IoT機器の使用回数」と「消費電力」の因果関係も分析できると思います。

HEMSの収集データの集計・分析イメージ。実証の対象となる物件を増やし、今後は実証物件全体の調査・分析も行う予定(資料:三菱地所ホーム)
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(2)実証物件全体
 物件ごとに1年間収集した結果を比較し、「地域」「面積」「家族構成」によって消費電力がどれだけ変わってくるかを分析します。「太陽光発電の容量」と「各物件の消費電力」の比較などを始め、今後も評価の内容を増やしていきたいと思っています。

 弊社の提案は、どちらかと言うと一般的なスマートハウスに近いものですので、先進的な成果ではなく、今後のIoT住宅の一般化において役に立つ情報が得られれば幸いと考え、実証を進めています。

各採択事業者の取り組みについて、コメントする安達功氏(写真右)と野中賢氏(写真左)

野中:ありがとうございました。従来型のスマートハウスをニューノーマルな時代にマッチさせようとするプロジェクトでした。HEMSを中心としたスマートハウスは、以前から多く提案されていたのですが、時代が変わっても求められる場面は多いということですね。

安達:まさに、ニューノーマル対応住宅の検証モデルとして非常に重要です。特に注目したいのは、最後に出てきたHEMSデータの分析のところです。今、自治体などでも「1人当たりのCO2排出量を、きちんと追わなければいけない」と考える動きがあって、たぶん先ほどのデータを分析すると、それらがわかってくる。そういう意味でも、この検証結果には非常に期待したいと思います。

野中:スマートハウスの一般化だけでなく、「カーボンニュートラル」に向けても意義深いプロジェクトだと言えますね。