今回の国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)では、これまでに採択されたプロジェクト計17事業のうち、近年採択された6事業の概要とこれまでの進捗報告が行われた。後編では、2021年度に採択された事業者3者による発表の様子をリポートする。

  • 【2020年度採択事業者】
    • 倉林 慶太 LIXIL LHT-J デバイス事業部 デバイス商品開発部 第三開発室 室長
    • 服部 岑生 ちば地域再生リサーチ 顧問
    • 髙田 将吾 東京電力ホールディングス
  • 【モデレーター】
    • 安達 功 日経BP総合研究所 フェロー
    • 野中 賢 日経BP総合研究所 社会インフララボ 上席研究員
モデレーターを務める、日経BP総合研究所の安達功フェロー(写真右)と、日経BP総合研究所社会インフララボの野中賢上席研究員(写真左)

野中(日経BP総合研究所):ここからは、直近の2021年度に採択された3事業について、各事業者の代表者にプロジェクトの概要を解説していただきます。最初は、LIXILの倉林様、よろしくお願いします。

スマートホームシステムを活用した住宅内の熱中症対策と空気質管理の有効性を実証するプロジェクト / LIXIL

[動画]LIXIL 倉林慶太氏
熱中症予防と空気質管理にIoTを用いるプロジェクトについて解説するLIXILの倉林慶太氏(資料:LIXIL)
[画像のクリックで拡大表示]

倉林(LIXIL):倉林です。よろしくお願いします。

 2021年度に採択いただきました、「スマートホームシステムを活用した住宅内の熱中症対策と空気質管理の有効性を実証するプロジェクト」に関して報告させていただきます。

 まず弊社の活動として、「クールdeピースPROJECT」という試みを行っています。これは、室内熱中症予防を啓発する取り組みです。

 消防庁の報道発表資料によると、熱中症は4割以上が家の中で発生。家の中で熱中症が発生した年齢別の割合は、約4分の1が小さなお子様、半分以上が65歳以上であるといいます。

 弊社は室内熱中症から住まい手を守るため、以前からいろいろな自治体と協同で「クールdeピースPROJECT」に取り組んでいます。例えば2018年には熊本県西川村、2019年は埼玉県熊谷市、2020年は静岡県富士市で活動しました。

 具体的な活動内容として、2019年に熊谷市と共同で行った事例を紹介します。

 室内側に設置する通常の「カーテン」と、家の外側につく「シェード」を比較した場合、「シェード」の方が「太陽光の熱を家の中に入れにくい」といわれています。そこで我々は、その事実関係を実証する実験を行いました。

 実験の結果、「シェードがない家」で熱中症が起きる可能性が43.8%であったのに対して、「シェードがついている家」の場合は18.8%にまで下がったという実証結果を得ました。

LIXILのIoT・スマートホームシステム(資料:LIXIL)
[画像のクリックで拡大表示]

 弊社は、「IoT・スマートホームシステム」の技術も促進しており、「人・モノ・情報がつながることで、より便利で安心な暮らしへ」というスローガンの下、この技術を使って2018年には「Life Assist」という商品・サービスを販売開始しました。2021年には「Life Assist2」という新しいスマートホームシステムを発売しています。

 弊社の強みである建材・住設が、先進的なIoTデバイス、さらに地域コミュニティやサービスともリンクすることで、より良い暮らしを実現したいと考えています。

熊本県長洲町との包括連携協定(資料:LIXIL)
[画像のクリックで拡大表示]

 さて、ここまでに紹介した「クール de ピースPROJECT」と「IoT・スマートホーム技術」をミックスした実証実験を、弊社の有明工場がある自治体の熊本県長洲町と協同で行うことになりました。IoT・スマートホームの技術を使ったチャレンジのために、昨年、包括連携協定を結びました。この実証実験プロジェクトが、今回採択を受けた事業の舞台となります。

 長洲町との包括連携協定は6つの項目からなりますが、このうち「IoT 技術を活用した健康で快適な次世代住宅の構築に関すること」と「高齢者・障がい者の支援や健康管理に関すること」の2つのテーマを、今回の採択事業で扱います。

採択事業における実証プロジェクトの具体的な内容。熱中症対策と空気質管理の2つに大別される(資料:LIXIL)
[画像のクリックで拡大表示]

 具体的にどのようなことを行うのかというと、もともとの「クール de ピースPROJECT」をさらに進化させる方法を採りました。

 まず、熱中症対策の背景・課題として、「居住者が適切な換気や冷房を行わないことにより、熱中症を発症する恐れ」があります。さらに、高齢者や障害者は熱中症の症状がわかりにくいということもあります。そこでシェードの設置という対策をさらに進化させて、温湿度センサーで計測した温度・湿度データを、スマートホームシステムが「暑さ指数」へ変換、指数が「警戒レベル」以上になると、自動的に採風や冷房することによって住環境を改善するという仕組みで対策することにしました。

 さらに、このシステムを使って、住環境の新たな取り組み「空気質の改善」も考えています。背景・課題としては、「居住者が適切な換気を行わないことにより、CO2濃度が高まり健康を害する恐れ」が考えられます。ほかにも「感染症予防のため換気の悪い密閉空間を防止」するなど、新型コロナウイルス対策としても「IoT・スマートホームシステム」を使って、何らかの改善ができないかと考えています。

 具体的には、「CO2センサー」で測定したデータをスマートホームシステムが判断し、「CO2濃度警告」や「自動的な採風や換気」によって換気を促進するというものです。

左側にあるのがプロジェクトの構成イメージ。右が「熱中症対策」と「空気質改善」の制御方法を示したフロー(資料:LIXIL)
[画像のクリックで拡大表示]

 上の図の左にあるのが、プロジェクトの全体的な構成イメージです。弊社のLife Assist2は、「温湿度センサー」「CO2センサー」「開閉センサー」の各センサーで取得した情報をもとに、制御アイテムである「窓」「エアコン」「シャッター」などを制御します。

 熱中症対策制御の方法は次のようなものです。暑さ指数が規定値「危険レベル1」を超えた場合、自動で採風窓を開けることで、暑さ指数を規定値まで下げます。

 暑さ指数がレベル1を超え「危険レベル2」を以上となった場合は、自動で採風窓を閉め、エアコンを起動し、冷房します。制御システムの判断には「天気」なども材料とされていますので、例えば雨が降った場合には、「危険レベル1」の場合でも窓を開けずに冷房を起動します。

 空気質改善制御については、CO2濃度が規定値「危険レベル1」を超えた場合、居住者への警告として、スマートフォンアプリへ「アラート」を発信します。さらにCO2濃度が「危険レベル2」を超えた場合には、自動で採風窓を開け、採風制御を行います。この制御に関しては「ECHONET Lite(※)」を採用して機器をコントロールしています。
(※ エコーネットコンソーシアムが策定したスマートハウス向けの通信プロトコル)

熊本県長洲町の実証実験フィールド(資料:LIXIL)
[画像のクリックで拡大表示]

 実証実験フィールドは、熊本県長洲町で新築中の9棟11戸の町営住宅を利用します。既築14棟14戸については、長洲町の広報誌にて実証のモニター物件を募集しました。現在、精査を進めています。

事業のスケジュール(資料:LIXIL)
[画像のクリックで拡大表示]

 新築に関しては、2022年3月末までに建物とIoT機器を設置。既築に関しては現在、モニターを選定しており、終わり次第、同じく3月末までに機器の設置をする予定です。新築、既築ともに2022年4月から9月末まで実証実験を行い、10月からヒアリングデータをまとめ、さらに継続的なヒアリングの計画をしています。

 今年度(2021年度)については、まず実験の準備期間と考え、来年度には計画どおりの実証実験を進めたいと考えています。

野中:ありがとうございました。「熱中症を防ぐ」という効果そのものにも期待しているのですが、「自治体と一緒に取り組んでいる」というのが非常に興味深いです。

安達(日経BP総合研究所):解説の資料の中で「長洲町×LIXIL」というタイトルが大きく出ていましたが、「IoT住宅をテーマに自治体と包括協定を結ぶ」という試みが非常に面白いと感じます。自治体が絡んでくるのは、「住宅が公共財の性格を帯びてきている」という意味合いも含んでいます。この取り組みは「自治体と連携していく」という試みが、評価委員会の中でも注目されました。

野中:実際に実証実験をしようと思うと、「なかなか対象の棟数が集まらない」というケースも結構あります。そういう不安要素が、自治体と組むことでスムーズに運ぶ可能性が高いといえます。

安達:今後の実証結果がすごく楽しみですね。

野中:では次の発表に移ります。ちば地域再生リサーチの服部様、お願いします。

IoTホームファシリティ・マネジメントのある暮らしと普及計画 / ちば地域再生リサーチ

[動画]ちば地域再生リサーチ 服部岑生氏
生活用品の管理と物流効率化にIoTを用いるプロジェクトについて解説する、ちば地域再生リサーチの服部岑生氏(資料:ちば地域再生リサーチ)
[画像のクリックで拡大表示]

服部(ちば地域再生リサーチ):私共は、15年に渡ってNPOを千葉市の海浜ニュータウンで運営しています。海浜ニュータウンには人口が十数万人、団地型マンションが約4万戸あります。その団地の中にIoTホームファシリティ・マネジメントを導入して、住環境の合理化を図っていきたいと考えました。

 団地は3DK程度の狭い住宅がほとんどなのですが、「そこに溢れる生活用品をIoTによってコントロールできはしないか」と考えたわけです。

 「ファシリティ・マネジメント」というのは、建設業界、ビルマネの業界では普通に使われている在庫管理の用語で、その頭に「ホーム」を付けて、団地の住宅に適用する仕組みをつくりたいと考えました。

 非常にたくさんある生活用品の整理は、高齢者にとって大変な作業となるため、それを助けたい。同時に5階建てエレベーターなしの共同住宅では、宅配に対して「置き配の難しさ」や「階段の昇降の難しさ」などがあり、それを省力化していくことが目的です。

プロジェクトの進行計画と事業者である「NPOちば地域再生リサーチ」「日本総合住生活株式会社」「ヤマト運輸株式会社地域共創推進部」の3者の分担(資料:ちば地域再生リサーチ)
[画像のクリックで拡大表示]

 実証事業は、「NPOちば地域再生リサーチ」「日本総合住生活株式会社」「ヤマト運輸株式会社地域共創推進部」の3者が共同で行います。特に配送分野での合理化課題については、ヤマト運輸のサポートを受け、事業を推進していきます。

 非常に多くの種類の用品をコントロールするために、管理システムとして「HFM」というソフトをつくって対応します。

 進行状況についてですが、まだ始まったばかりです。まずは、ファシリティ・マネジメントのシステムをどう組み立てるかということと、関係する様々な準備を済ませることが目下の課題です。

IoTホームファシリティ・システム「HFM」の開発目標(資料:ちば地域再生リサーチ)
[画像のクリックで拡大表示]

 事業の核となる、IoTホームファシリティ・システム「HFM」の開発について説明します。まず、「コンピュータータイプ」と「携帯タイプ」2種類の機器の開発を目標にして作業を始めたところです。「コンピュータータイプのHFM」はスキャナを使ってコンピュータに情報を取り込み、生活用品を管理し、「携帯タイプHFM」はスマートフォンを使って管理するタイプです。

 小型・安価の追求や、データ入力方法の多様性などを目標に開発を進め、用品の整理、管理の合理化に役立てたいと考えています。

「HFM」のシステム構成(資料:ちば地域再生リサーチ)
[画像のクリックで拡大表示]

 これまでにまとまったシステム構成についてご紹介します。インターフェース、アプリケーション、データベースの3層の構成になっています。インターフェースは「ログイン画面」「メニュー画面」「商品リスト画面」「商品詳細画面」から成り、ログインしてメニューを出し、スキャナした商品のデータを表示し、さらに詳細を見るというものです。裏にデータベースがあり、「ユーザー情報」「商品情報」は、今後用意しなければいけない要素です。

実際に稼働する試作のアプリ(資料:ちば地域再生リサーチ)
[画像のクリックで拡大表示]

 実際に稼働する試作のアプリをつくりました。ログイン後に「在庫管理」のメニューに行き、「スキャン」のところからバーコードを読み込む。「商品リスト」のメニューから、「どんな商品が入っているか」を確認でき、さらにその中の商品をタップすると「商品詳細画面」が出てきます。ここまでは完成しているので、来年度これを完成、実用化したいと思っています。

ホームファシリティ・システムにおける対象用品の分類と標準化については、ネット調査を行い、その結果をもとに検討する(資料:ちば地域再生リサーチ)
[画像のクリックで拡大表示]

 住宅内の生活用品というのは無数にあります。特に食料品などは多くの種類があり、例えばビールにしても魚にしても、それぞれ限りなく多くの種類があります。ほかにも雑貨や日用品、いずれもいろいろなものがあります。

 これらをどのように分類するかが今後の課題で、標準化した商品構成、用品構成をつくっていかなければいけないと考えています。さらに、どういうニーズに対応したらよいかというのも課題としてあり、来年度(2022年度)の初めにネット調査を行い、ニーズの把握に努めたいと思っています。

置き配の難しい建築でも使用可能な特殊な「宅配BOX」イメージ(資料:ちば地域再生リサーチ)
[画像のクリックで拡大表示]

 宅配に関して「置き配」などの難しい建築計画があり、それを合理化するための特殊な「宅配BOX」を採用したいと考え、そのデザインを考えています。宅配BOXそのものが軽量で、ケース機能を持ったものをつくりたいと思っており、これも大きな課題として、来年度中に解決したいと考えています。

実証実験展示と啓発イベント(資料:ちば地域再生リサーチ)
[画像のクリックで拡大表示]

 実際の住宅での実証実験は、来年度以降に取り組みが本格化するわけですが、それに先立って今年度は、モックアップをつくって展示会場を用意し、それを皆さんに見てもらい、実際に使っていただくというイベントを実施したいと考えています。特に高齢者には、こうした説明と体験の機会が必要だと思います。

 計画中のこの部屋は50m2程度の広さがあるので、「置き配」などのシミュレーションをする設備もモックアップでつくりたいと考え、検討しています。具体的には、3m×3m×3mの立体の中に、付帯のマンションの「玄関部分」を実際につくって、そこに出入りながら「置き配」体験をするというようなことを考えております。

 また施設には「HFM」の機械も展示して、皆さんに実際に体験していただくようなことを、イベントとともにやっていきたいと思っています。計画中のこの場所は、ショッピングセンターの中にあり、日常的にかなりの人が前を通ります。そこで、この事業を宣伝し、啓発とともにこの機器の可能性を住民に紹介したいと思っています。

野中:ありがとうございました。これまでの採択事例に「高齢者の健康管理・見守り」という例はあったのですが、「ファシリティ・マネジメント」というのは、なかなか発想がなかったので、面白いと感じました。

安達:一般の「ファシリティ・マネジメント」ではなく、IoTを絡めて住宅にもってくる。それを「IoTホームファシリティ・マネジメント」としたところが素晴らしい。

 評価委員会で評価されたところは、フィールドワークを実践するという点ですね。こういった構想は、たまに見掛けることはあるのですが、なかなか実践までに至らない。それを「実際にやってみて、得られた結果を横展開しよう」とした点が非常に評価されています。今年度の事業なので実証自体はこれからなのですが、結果に期待したいと思います。

野中:最後の発表になります。東京電力ホールディングスの高田様に発表していただきます。

宅内IoT機器を活用した防災・減災サービス / 東京電力ホールディングス

[動画]東京電力ホールディングス 高田将吾氏
IoT技術を用いて防災・減災を実現するプロジェクトについて解説する東京電力ホールディングスの高田将吾氏(資料:東京電力ホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

高田(東京電力ホールディングス):採択事業の「宅内IoT機器を活用した防災・減災サービス」の概要ならびに、進捗状況についてご報告いたします。

 近年、台風や豪雨、地震といった災害が激甚化する中では、それら災害に備えた対策が重要な社会的課題となっています。インフラ事業を営む弊社としては、防災という社会的な要請にお応えし、「災害時に安心をお届けすることも使命である」と捉えております。その中で、今回われわれは「電気火災」ならびに「防災情報配信」の2つに焦点を当てました。

 まず「電気火災」について。電気火災は建物火災の原因の約2割と多くを占めていますが、その発生原因である電気設備のトラブルを、専門家ではない一般利用者が事前に把握することは非常に困難です。

 次に「防災情報配信」については、過去に弊社が自治体向けに行った「防災に関するアンケート調査」で、「台風などの風雨が強い場合には、防災情報無線が十分に機能しないことがあった」と多くの自治体から回答いただいた経緯があります。

 以上から、これら2つの課題に対して解決策が必要であると考えました。

 そこで、本事業では「IoT技術を活用した防災・減災の実現」を目的として、「電気火災の未然防止」「防災情報配信」の2つをテーマとして実証を行い、実フィールドでの技術の精度や便益性について検証することで、災害という社会的課題の解決に寄与することを目指します。

実証に利用するIoT技術の概要(資料:東京電力ホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

 実証に利用するIoT技術の概要について説明します。上の図の下段左側の「システム構成イメージ」に示したように、本事業では各住戸の分電盤の中に電力センサーを設置します。電力センサーの機能としては大きく2つあります。

 1つは「電流センシング機能」。電力センサーで測定した電流波形情報を分析し、電気設備の異常予兆として発生する微弱なノイズ波形を検知します。また、AIによる家電分離技術も備えており、住宅全体の電気使用状況から、家電製品ごとの使用状況を把握する「電気の見える化」も可能です。

 もう1つが「IoTデバイス連携機能」です。エアコンなどの家電製品や、蓄電池・エコキュートなどの住設機器、さらには防犯センサーといった、住宅内の様々なIoT機器と連携できるGW(ゲートウェイ)機能を備えています。

 各IoT機器から取得したデータは、通信回線を経由して上位のサーバへ伝送します。双方向の通信ができるので、サーバから電力センサーを介して住宅内IoT機器への通信と、機器の遠隔操作が可能です。

「電気火災予兆検知」の技術的な仕組みと実証事業の概要(資料:東京電力ホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

 「電気火災予兆検知」の技術的な仕組みと実証事業の概要について解説します。上の図下段のイメージに示したように、分電盤内に設置した電力センサーにて電流波形を常時測定し、データを弊社側のサーバへ伝送します。受け取ったデータは、サーバにてAI技術による「電流波形分析」を行います。電気火災の一因とされる「トラッキング現象」は、予兆として細かい「放電現象」を発生します。サーバでの「電流波形分析」ではこの「放電現象」を検知します。

 予兆となる「放電現象」を検知した場合には、東京電力パワーグリッドの技術員が、モニターの住宅へ事前の「危険連絡」を行ったうえで訪問し、実際に原因調査を行います。本事業ではこの仕組みが、電気火災の未然防止につながることの効果を検証します。

防災情報配信については、電力センサーを「通信ハブ」として活用することで課題解決を図る(資料:東京電力ホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

 防災情報配信については、電力センサーを「通信ハブ」として活用することで課題解決を図ります。

 本事業は東京都足立区と協調して実証を進めます。上の図の下段イメージ図に示したように、足立区が区民向けに配信している「防災情報」を弊社側のサーバで受け取り、電力センサーを介してモニターの住宅内に設置する「タブレット機器」へと転送します。確実な情報伝達を行うために、タブレットへ機器における通知は「文字による画面表示」に加えて、「着信音」や「読み上げによる通知」も検討しています。

 将来的には、モニター宅にて何かしらのトラブルが発生した場合に、消防や自治体など、外部へ「安否情報」を発信する機能も付与し、その効果や利便性の検証も行ってみたいと考えています。

事業の進捗や今後のスケジュール(資料:東京電力ホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

 現在までの事業の進捗ですが、2022年1月25日に足立区、東京電力ホールディングス、東京電力パワーグリッドの三者で、本事業に伴う評定の合意締結をいたしました。これを皮切りとして現在、実証にご参加いただけるモニターの調整を進めております。

 今後のスケジュールについては、今年度内に電力センサーを5件設置し、来年度(2022年度)にはさらに95件設置することで、合計100件の設置を目指します。設置後は「電力データの収集・分析」や「防災情報の配信に必要なシステムの開発および技術検証」、さらに「モニターへのアンケート調査」などを実施します。そこで得られたデータやニーズから、「さらなるシステム改善」「防災サービスの発掘」などの実現につなげていきたいと考えております。

各採択事業者の取り組みについて、コメントする安達功氏(写真右)と野中賢氏(写真左)

野中:「防災にIoTを活用する」というアイデア自体は、一般的にはこれまでもあったように思うのですが、この事業では初めて登場しました。

安達:そうですね。「IoTを防災・減災に活用する」というのは、非常に社会的意義が高い試みです。一方で、例えば「個人の在宅・不在を特定する」といった、個人情報そのものではないのですが、かなり個人情報に近いような情報がビッグデータから得られてしまう。そのあたりをどのように扱うのかという議論が評価委員会でもありました。

 そうした問題を解消する手立てとして、「足立区という自治体と協定を結んで進めていく」というやり方には納得感がある。このようなやり方でフィールド調査を進めていただけると、社会的意義がより高いものとなると感じました。

野中:まさにこれからという事業なので、こちらも見守っていきたいと思います。これで近年の既採択事業6プロジェクトの概要と、進捗状況についての紹介を終わらせていただきます。ありがとうございました。