加工機メーカーを動かして精度を向上

 こうした一連の問題を解決しながら金型製造の自動化を進めるべく金子氏らが開発に着手したのが、ブロック単品を自動的に加工する「FMS」(Fully automated Machining System of module)と呼ぶシステムである(図4)。マシニングセンタ(2018年夏時点で3台)、パレット(同96枚)、パレット自動搬送装置、パレットを待機させておくフローラック、工程管理ソフトウエアなどで構成したシステムで、素材となる鋼材ブロックをパレットに組み付けて投入するだけで、待機用のフローラックを中継しながら、パレットに載せられたブロックが粗加工のマシニングセンタから仕上げ加工のマシニングセンタへと順に搬送され、自動的に加工が終了する仕組みである(図4左)。もちろんCAMデータは自動的にそれぞれのマシニングセンタへと送られ、ブロックの投入と工具の交換以外は原則として人手作業を必要としない。

図4 2018年9月現在のファベストの工程の概略図
左側が金型本体となるブロックを単品ごとに自動で削りだすFMSのライン。右側が鋳造のホルダーを高精度に削りだす大型加工機のライン。両者の作業を並行に進めて、最後に一体化したのち、仕上げを行って完成となる。(図提供・ファベスト)

 FMSは2000年2月から稼働を開始。2014年9月にマシニングセンタの入れ替えも含めて大幅な刷新を行い、現在では前述のように年間平均稼働率96%を達成している。目標はもちろん100%だ。

 ブロックの土台となるホルダーの加工については、鋳造から上がってきたホルダーの実寸を高精度に測定する独GOM社の非接触3Dスキャナを導入した。実寸を3D化してCAMに反映することで、人手によるCAMデータ作成を不要とし、かつ、エアーカットなどのムダな工程を排除した。工程で見ると、従来の106時間が、2009年には24時間にまで短縮された。

 また、ブロックの加工に使う縦型加工機には、自動キャリブレーション機能によって、奥行き5000mmに対して誤差わずか6μmという高い直角精度を実現した三菱重工工作機械の門形五面加工機「MVR・Fx」を導入(図5)。従来の加工機に比べて加工精度を大幅に高めた。これによって加工の終わったブロックを組み付けるだけで完成に近い金型を実現できるレベルにまで精度を向上させ、トライでの合格率は90%近くを達成しているという。この自動キャリブレーション機能は、ファベストの要求に応じて三菱重工工作機械が新たに開発したシステムだ。

図5 ブロック(金型部分)の加工精度向上のために新たに導入した門形五面加工機
写真左に見える箱が新開発の自動キャリブレーション用装置。(撮影:栗原正巳)

 こうした取り組みは顧客納期の短縮にも効果をもたらした。20トンクラスの順送(プログレッシブ)方式の金型の場合で、最終的な顧客納期を8か月から5.5か月に短縮できる見通しを得ている。

「インダストリー4.0」のコンセプトを具現化

 金型製作の自動化のメドが付いたところで、金子氏らは次のステップとして、金型設計の自動化にも取り組み始めている。プレス成形シミュレーションシステムなどを導入して、成形シミュレーション技術を確立しながら設計ノウハウを定量化。併せて、画面の指示に従ってパラメータなどを入力するだけで大枠の設計作業を完了できる設計ウィザード・システムを開発中で、最終的には「専門知識を持たない素人でも金型設計ができる仕組み」を構築していく考えだ。

(撮影:栗原正巳)

 金子氏は次のように展望する。「自動化をさらに進められれば、付加価値が高い設計のプロセスは自社で抱えておきながら、製作は自社工場にこだわらずに済む。つまり、FMSや大型加工機など同じ設備をそろえ、同じ仕組みを構築さえすれば、海外を含めてどこででも金型製作ができるようになる。製造現場での技能レベルを問わなくて済むため人材確保の難易度も下がる」(金子氏)。

 FMSをはじめとする一連の自動化システムを開発する過程で、今、産業界をにぎわせている「インダストリー4.0」や「デジタル化」というトレンドは意識したことがない、と金子氏は言う。だが、新しい技術を駆使しながら製造プロセスの最適化を図り、ものづくりの現場が抱える問題を解決。さらに新しいビジネスモデルの実現を目指すというファベストの考え方は、「インダストリー4.0」や「デジタル化」の概念そのものである。ファベストの取り組みは、最近のキーワードが表す製造業革新に向けた一歩を踏み出すためのハードルが、必ずしも高くはないことをうかがわせる事例と言えよう。

(撮影:栗原正巳)