ローラーでペンキを塗るロボットが登場

 協働以外にもロボットに関連する、様々な新しい技術やソリューションが登場した。例えば、ロボットを用途ごとに最適化するうえで欠かせないハンドに関連する展示では、セイコーエプソンが力覚センサーを応用した様々な技術を披露した(図5)。

 その1つがローラーブラシを使って壁に塗料を塗る6軸ロボットである。壁にローラーブラシを押し当てるときに、その圧力を力覚センサーで適切に制御することで、ムラなく塗料を塗布できるようにした。その他にもキーボードや押しボタンの操作感を検査する装置や、樹脂成形品のゲートカット装置なども展示した。ゲートカット装置は、不要な部分を切るニッパーの操作力を監視することで、切り残しを防ぐなど作業品質を高めている。

図5 力覚センサーでローラを適切な力で壁に押し当てながら塗装するロボット
図5 力覚センサーでローラを適切な力で壁に押し当てながら塗装するロボット
セイコーエプソンの展示。 (撮影:菊池くらげ)

 東芝機械は、ロボットのグリッパーにセンサーを内蔵することで、物をつかみながらセンシングするシステムを展示した(図6)。2種類の大きさのボールを2台のロボットがグリッパーでつかみ上げて移動するもので、つかんだ際にボールの直径を認識して大きさごとに仕分ける。2台のロボットはそれぞれ異なるコントローラーで制御しているが、もう一方のロボットの動作状態も把握できるようにすることで、ロボット同士の衝突を防いでいる。

図6 東芝機械のグリッパーによるボールの仕分けデモ
図6 東芝機械のグリッパーによるボールの仕分けデモ
グリッパーでボールの直径を認識して大きさごとに仕分ける。 (撮影:菊池くらげ)

 三菱電機は、不定形のワークをバラ積み状態からつかみ上げるシステムを展示した(図7)。ロボットのハンドでバラ積み状のものをつかむプログラムを開発する際、現状では対象物のCADデータを活用して、ワークの向きやつかむ位置をロボットに認識させていることが多い。ところが、食品のように形状に個体差があるようなものには適用しづらい。そこで同社はAIを活用し、1つひとつの形状の違いにハンドが自動的に対応できるようにした。あらゆる形状のものを学習させる膨大な作業が不要なので、装置の立ち上げにかかる時間の大幅な短縮が可能になるという。

図7 不定形でバラ積み状態のものをAIで認識しつかみ上げる三菱電機のロボット
図7 不定形でバラ積み状態のものをAIで認識しつかみ上げる三菱電機のロボット
鶏の唐揚げを取り出す作業を例にしていた。 (撮影:菊池くらげ)

作業時間を約20%削減

 搬送システム関連では、ヤマハ発動機のロボット一体型ビジョンシステム「iVY2 SYSTEM」が多くの来場者を集めていた(図8)。ロボットがつかみ上げたワークの向きなどをカメラで認識し、位置補正して必要な場所に搬送する作業を高速で実施する。従来のシステムでは、搬送途中で撮像する際、通常はカメラの前で一度アームの動作を止めて撮影し、再びアームを動作させていることが多い。これに対しiVY2 SYSTEMでは高速搬送中に撮影と認識の作業をこなす。アームを搬送途中で停止させないので作業時間を約20%も削減できるという。

図8 高速で搬送しながら撮像・認識して位置を補正
図8 高速で搬送しながら撮像・認識して位置を補正
ヤマハ発動機のロボット「iVY2 SYSTEM」 (撮影:菊池くらげ)

 DMG森精機は、マシニングセンターとアーム・ロボットを搭載したAGV (Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)を組み合わせて加工作業全体の自動化を進めたシステムを展示した(図9)。加工前のワークを乗せたトレイをAGVでマシニングセンターまで運び、AGV上のロボットがマシニングセンターにワークをセットする。加工が終わるとロボットがマシニングセンターからワークを取り出してAGVで後工程まで搬送する。マシニングセンターで加工そのものは自動化されても、その前後の搬送は人手によっていることが少なくない。この場合、重量が大きいワークでは作業者の負担が大きい。加工の前後の搬送も含めて自動化することで、こうした問題を解決できるという。

図9 マシニングセンターとAGVの連携による自動化システム
図9 マシニングセンターとAGVの連携による自動化システム
DMG森精機の展示。加工前後の搬送まで含めて自動化した。 (撮影:菊池くらげ)

 以上の他に今回の展示会場で目を引いたのが、デンソーウェーブが開催直前に発表した新しい概念に基づくロボット・コントローラー「RC9」である(図10)。従来はロボットに合わせて専用に開発した装置として提供することが多かったロボット・コントローラーをファームウエアとして提供するもの。汎用の産業用PCに実装できる。ハードウエアの開発をサードパーティーに任せることでコントローラーのラインナップを広げ、幅広い用途に対応できるようになるという・

 同社はRC9の性能を十分引き出せる環境として、ベッコフオートメーション製の産業用PCと制御ソフトウエア「TwinCAT」を推奨している。展示ブースではそれらとRC9を組み合わせたシステムで、複数のロボットを制御するデモンストレーションを披露。複数の機器を高精度で同期させながら制御できることをアピールした。

図10 ファームウエアとして提供するデンソーウェーブのロボット・コントローラー「RC9」
図10 ファームウエアとして提供するデンソーウェーブのロボット・コントローラー「RC9」
汎用の産業用PCに実装できる。(撮影:菊池くらげ)

 さらに、もう1つ多くの来場者を集めていたのが、ABBが展示していたマスカスタマイゼーションのデモンストレーションである(図11)。同社が見せていたのは腕時計の組み立てラインで、双腕ロボットなど複数のロボットを使って、時計本体にバンドを組み付けて、箱詰めするまでの一連の作業を実施する。顧客の注文に応じて文字盤やバンドの組み合わせを変えながら作業するのが特徴である。比較的簡単な工程だが、「インダストリー4.0」の概念とともに登場した新しい生産スタイルとして注目されているマスカスタマイゼーションの様子を実際に見せたことで注目を集めたようだ。

図11 ロボットを使ったマスカスタマイゼーションのデモ
図11 ロボットを使ったマスカスタマイゼーションのデモ
ABBの展示。腕時計の本体にベルトを取り付けて、箱に入れるまでの作業を双腕ロボットが実施する。顧客の注文に応じて組み合わせる部品を変える様子を見せた。 (撮影:菊池くらげ)

 長らくロボット活用の一大テーマとして掲げられてきた「協働」が、各社とも技術的に大きく前進したことは間違いない。ただし、人とロボットが生産現場でどのように交わるかという点まで踏み込み、具体的なユースケースを見せる展示はまだ少なかったようだ。技術面をベンダーが整えた今、実際の協働のスタイルを考えるのは、ベンダーよりもユーザなのかもしれない。