ロボットとその関連機器を集めた展示会「2019国際ロボット展」が、2019年12月18日から4日間にわたって東京ビッグサイトで開催された。今回の国際ロボット展を特徴付けたのは、人とロボットが協働する具体的なシーンを見せる展示が増えたこと。協働に必要な汎用性や使いやすさの面で様々な進歩が見られ、生産システムの進化にロボットが本格的に貢献できる時代が近づいていることを実感させた。(取材・文:松尾康徳)

 長期的に進む労働力不足など社会が抱える課題を解決するアプローチの1つとして、人と一緒に同じ空間で作業ができる「協働ロボット」に対する期待感が様々な分野で高まっている。こうした期待に応える形で2019国際ロボット展では、産業用ロボット・メーカーを中心に多くの企業が、協働ロボットに関連する展示やデモンストレーションを繰り広げた。

(撮影:菊池くらげ)
(撮影:菊池くらげ)

ティーチングの作業を容易に

 今回、多くの企業が展示していたのが、作業に応じたロボットの動きをプログラミングするティーチングの作業を容易にする技術や製品の展示である。ティーチングは、協働ロボットの普及を図るうえで大きな問題の1つだ。ティーチング作業が複雑だとプログラミングのスキルを備えた技術者がいない現場以外では、なかなか導入が進まないという事態になりかねないからだ。

 三菱電機は、アームのボタン操作やアームを直接手で動かすことで、ロボットに作業を覚え込ませることができるようにした産業用ロボット「MELFA ASSISTA」の試作機を披露した(図1)。これまでのように専門の技術者に頼ることなく生産現場の担当者が、ロボットの制御プログラムを変更できる。またハンドなどのアクセサリをロボット本体に装着したときに、対応したドライバ・ソフトウエアを自動的にインストールするなど制御システムのセッティングを自動化する機能も組み込んだ。同社は、展示ブース内に同社の産業用ロボットの模型を作る生産ラインを設けて、この技術を使ってティーチングを実施したロボットと人が共同で作業するシーンを来場者に見せていた。

図1 三菱電機が展示した協働ロボット「MELFA ASSISTA」
図1 三菱電機が展示した協働ロボット「MELFA ASSISTA」
人が取り出した部品をロボットが結合する。 (撮影:菊池くらげ)

 ファナックは、ロボットに始点と終点だけを覚えさせるだけで、具体的な動作はロボット自身がプログラミングするシステムを展示した(図2)。マシニングセンターにワークを搬入するロボットに対し、ワークの保管位置とマシニングセンター内に置く場所を指定すると、3Dビジョン・センサーがマシニングセンターの形状を認識し、最適な搬入方法を自動的に割り出す。

図2 3Dビジョンセンサーで認識したマシニングセンターの形状をもとにロボットがワーク搬入に最適な方法を自ら考える
図2 3Dビジョンセンサーで認識したマシニングセンターの形状をもとにロボットがワーク搬入に最適な方法を自ら考える
ファナックの展示。 (撮影:菊池くらげ)

 ファナックはこの他にも、ロボットと人が連携して、約20kgと重たいワークに対する加工作業における人の負荷を軽減する仕組みのデモンストレーションも見せていた。ロボットが、重いワークを持ち上げるだけでなく、人が自然な姿勢で正対できる位置や向きにワークを移動させる。

台車一体型で移設が容易なロボット

 川崎重工業は双腕のスカラロボット「duAro」のティーチング作業を体験できるブースを設置。初めて同ロボットに触れる来場者でも、短時間でプログラミング作業ができることをアピールした。duAroはコントローラーも含めて台車と一体化しており、簡単に移動させることができるようになっている。このため、日ごとに場所を変えてプログラムを変更しながら、1つのduAroに異なる作業を任せるといったことも可能だという。

 安川電機も、台車と一体で様々な現場に設置できる協働ロボットを展示した(図3)。その1つで食品工場向けの協働ロボットは、全部の軸がIP67相当の防塵・防水性能を備える。食品工場にとって大きなトラブルとなりうる異物混入を防ぐため、ロボットの表面は塗装ではなくめっき処理を施している。ロボット本体の洗浄が可能な点も、衛生管理が特に重要な食品業界での利用を想定したものだ。

図3 安川電機が展示した食品工場向け協働ロボット
図3 安川電機が展示した食品工場向け協働ロボット
防塵・防水性能に加え、本体の洗浄が可能。 (撮影:菊池くらげ)

 オムロンは、部品供給からネジ締め、検査などの工程から成る生産ラインを展示ブース内に設置し、ロボットを活用した協働の例を展示した(図4)。ネジ締めは2つの工程に分かれており、最初の工程では人、次の工程ではロボットがそれぞれネジ締め作業を実施する。この工程を担当する作業者は、ネジ締め作業をこなしながら、ライン全体を監視しており、ネジ締め以外の工程でトラブルが発生すると、ネジ締め作業から外れてその対応に当たる。その間はロボットが、人が担当していたネジ締め作業を代行するようにして、ライン全体のスループットを維持できるようにした。この仕組みは生産ラインを管理に要する人員の削減に役立つ。

図4 状況に応じてロボットが人の作業を補う
図4 状況に応じてロボットが人の作業を補う
オムロンの展示。作業者はネジ締め作業をしながらライン全体を監視できる。 (撮影:菊池くらげ)

ローラーでペンキを塗るロボットが登場

 協働以外にもロボットに関連する、様々な新しい技術やソリューションが登場した。例えば、ロボットを用途ごとに最適化するうえで欠かせないハンドに関連する展示では、セイコーエプソンが力覚センサーを応用した様々な技術を披露した(図5)。

 その1つがローラーブラシを使って壁に塗料を塗る6軸ロボットである。壁にローラーブラシを押し当てるときに、その圧力を力覚センサーで適切に制御することで、ムラなく塗料を塗布できるようにした。その他にもキーボードや押しボタンの操作感を検査する装置や、樹脂成形品のゲートカット装置なども展示した。ゲートカット装置は、不要な部分を切るニッパーの操作力を監視することで、切り残しを防ぐなど作業品質を高めている。

図5 力覚センサーでローラを適切な力で壁に押し当てながら塗装するロボット
図5 力覚センサーでローラを適切な力で壁に押し当てながら塗装するロボット
セイコーエプソンの展示。 (撮影:菊池くらげ)

 東芝機械は、ロボットのグリッパーにセンサーを内蔵することで、物をつかみながらセンシングするシステムを展示した(図6)。2種類の大きさのボールを2台のロボットがグリッパーでつかみ上げて移動するもので、つかんだ際にボールの直径を認識して大きさごとに仕分ける。2台のロボットはそれぞれ異なるコントローラーで制御しているが、もう一方のロボットの動作状態も把握できるようにすることで、ロボット同士の衝突を防いでいる。

図6 東芝機械のグリッパーによるボールの仕分けデモ
図6 東芝機械のグリッパーによるボールの仕分けデモ
グリッパーでボールの直径を認識して大きさごとに仕分ける。 (撮影:菊池くらげ)

 三菱電機は、不定形のワークをバラ積み状態からつかみ上げるシステムを展示した(図7)。ロボットのハンドでバラ積み状のものをつかむプログラムを開発する際、現状では対象物のCADデータを活用して、ワークの向きやつかむ位置をロボットに認識させていることが多い。ところが、食品のように形状に個体差があるようなものには適用しづらい。そこで同社はAIを活用し、1つひとつの形状の違いにハンドが自動的に対応できるようにした。あらゆる形状のものを学習させる膨大な作業が不要なので、装置の立ち上げにかかる時間の大幅な短縮が可能になるという。

図7 不定形でバラ積み状態のものをAIで認識しつかみ上げる三菱電機のロボット
図7 不定形でバラ積み状態のものをAIで認識しつかみ上げる三菱電機のロボット
鶏の唐揚げを取り出す作業を例にしていた。 (撮影:菊池くらげ)

作業時間を約20%削減

 搬送システム関連では、ヤマハ発動機のロボット一体型ビジョンシステム「iVY2 SYSTEM」が多くの来場者を集めていた(図8)。ロボットがつかみ上げたワークの向きなどをカメラで認識し、位置補正して必要な場所に搬送する作業を高速で実施する。従来のシステムでは、搬送途中で撮像する際、通常はカメラの前で一度アームの動作を止めて撮影し、再びアームを動作させていることが多い。これに対しiVY2 SYSTEMでは高速搬送中に撮影と認識の作業をこなす。アームを搬送途中で停止させないので作業時間を約20%も削減できるという。

図8 高速で搬送しながら撮像・認識して位置を補正
図8 高速で搬送しながら撮像・認識して位置を補正
ヤマハ発動機のロボット「iVY2 SYSTEM」 (撮影:菊池くらげ)

 DMG森精機は、マシニングセンターとアーム・ロボットを搭載したAGV (Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)を組み合わせて加工作業全体の自動化を進めたシステムを展示した(図9)。加工前のワークを乗せたトレイをAGVでマシニングセンターまで運び、AGV上のロボットがマシニングセンターにワークをセットする。加工が終わるとロボットがマシニングセンターからワークを取り出してAGVで後工程まで搬送する。マシニングセンターで加工そのものは自動化されても、その前後の搬送は人手によっていることが少なくない。この場合、重量が大きいワークでは作業者の負担が大きい。加工の前後の搬送も含めて自動化することで、こうした問題を解決できるという。

図9 マシニングセンターとAGVの連携による自動化システム
図9 マシニングセンターとAGVの連携による自動化システム
DMG森精機の展示。加工前後の搬送まで含めて自動化した。 (撮影:菊池くらげ)

 以上の他に今回の展示会場で目を引いたのが、デンソーウェーブが開催直前に発表した新しい概念に基づくロボット・コントローラー「RC9」である(図10)。従来はロボットに合わせて専用に開発した装置として提供することが多かったロボット・コントローラーをファームウエアとして提供するもの。汎用の産業用PCに実装できる。ハードウエアの開発をサードパーティーに任せることでコントローラーのラインナップを広げ、幅広い用途に対応できるようになるという・

 同社はRC9の性能を十分引き出せる環境として、ベッコフオートメーション製の産業用PCと制御ソフトウエア「TwinCAT」を推奨している。展示ブースではそれらとRC9を組み合わせたシステムで、複数のロボットを制御するデモンストレーションを披露。複数の機器を高精度で同期させながら制御できることをアピールした。

図10 ファームウエアとして提供するデンソーウェーブのロボット・コントローラー「RC9」
図10 ファームウエアとして提供するデンソーウェーブのロボット・コントローラー「RC9」
汎用の産業用PCに実装できる。(撮影:菊池くらげ)

 さらに、もう1つ多くの来場者を集めていたのが、ABBが展示していたマスカスタマイゼーションのデモンストレーションである(図11)。同社が見せていたのは腕時計の組み立てラインで、双腕ロボットなど複数のロボットを使って、時計本体にバンドを組み付けて、箱詰めするまでの一連の作業を実施する。顧客の注文に応じて文字盤やバンドの組み合わせを変えながら作業するのが特徴である。比較的簡単な工程だが、「インダストリー4.0」の概念とともに登場した新しい生産スタイルとして注目されているマスカスタマイゼーションの様子を実際に見せたことで注目を集めたようだ。

図11 ロボットを使ったマスカスタマイゼーションのデモ
図11 ロボットを使ったマスカスタマイゼーションのデモ
ABBの展示。腕時計の本体にベルトを取り付けて、箱に入れるまでの作業を双腕ロボットが実施する。顧客の注文に応じて組み合わせる部品を変える様子を見せた。 (撮影:菊池くらげ)

 長らくロボット活用の一大テーマとして掲げられてきた「協働」が、各社とも技術的に大きく前進したことは間違いない。ただし、人とロボットが生産現場でどのように交わるかという点まで踏み込み、具体的なユースケースを見せる展示はまだ少なかったようだ。技術面をベンダーが整えた今、実際の協働のスタイルを考えるのは、ベンダーよりもユーザなのかもしれない。