エアーを「噴き出して吸着する」

 ロボットでモノを取り上げる方法には、ハンドでつかむ方法の他にエアーによる吸着もあるが、吸着はモノの表面に力がかかってしまい、繊細な商品の場合は傷めてしまう恐れもある。その問題を解消するものとして、カンタムエレクトロニクスが出展したのが、逆にエアーを高速で噴き出すことで把持する「KUMADE」だ。エアーを円柱状のハンドの先端に送り込み、ハンド内部で高速の旋回流を発生させる。竜巻の上昇気流のように旋回流の中心部に負圧(大気圧よりも低い圧力)が生まれるため、ハンドの下にあるモノを吸い寄せることができる。デモでは、通常の吸着方法では形が崩れてしまう板海苔を吸着させたほか、穴が開いているために吸着できないメッシュ状の素材やスポンジなどを吸着させる様子も披露していた。

カンタムエレクトロニクスの「KUMADE」は通常の吸着とは逆にエアーを噴き出して負圧によって吸着
(撮影:栗原克己)

 ハンドを固定的に装着するのではなく、各種のハンドをハンドでつかむアプローチを提案したのがデンソーウェーブだ。同社の小型ロボット「COBOTTA」の先端のグリッパで、バルーンハンドやポンプグリッパ、エアチャックなどをつかみ、対象物に応じてハンドをその場で使い分ける手法を展示した。それぞれのハンドをつかむハンドは汎用的なもので事足りるため、ロボット活用の自由度を高められる。

デンソーウェーブは対象物に応じてハンドを使い分けるシステムを展示
(撮影:栗原克己)

AIで対象物の3次元形状を認識

 ロボットにAIを組み合わせたシステムの提案も見られた。芳賀電機は、麺類や果物など形が一定でないモノを一定量つかんで搬送するシステムを展示。8本の爪から成るハンドでつかむ前に、4眼のステレオカメラで対象物の3次元形状を認識し、一定量をつかむのに適した把持位置を判断。つかんだ後は持ち上げながら重さを量り、次につかむ際の爪の動作へのフィードバックを繰り返すことで精度を高める。デモでは小分け状態でバラ積みにされている菓子をつかみ、量りの上に移動させて重さを量り、ほぼ指定通りの量をつかんでいることをアピールしていた。

左の菓子の山から一定量をつかみ出して重さを計測する芳賀電機のデモ
(撮影:栗原克己)

 カメラによる3次元計測の認識を、粉体の搬送に生かすシステムを展示していたのがAIベンチャーのエクサウィザーズだ。デモではトレイに盛られた塩を、ロボットハンドの先に取り付けたスプーンで一定量すくい取り、別のトレイに移す様子が披露された。塩をすくい取る前に、塩がどのような形状で盛られているかを上部のカメラから認識し、スプーンをどの位置からどのように動かせば指定した量をすくい取れるかを判断する。すくい取るたびに粉体の盛られ方は変わるため、同じ動作では毎回すくい取れる量は変わってしまうが、形状を都度認識することで、一定量を維持するのがポイントだ。薬の調剤作業の自動化などへの適用を想定しているという。

一定量すくい取るのに最適な方向でスプーンをロボットで動かすエクサウィザーズのデモ
粉体の盛られ方を上部のカメラで3次元計測しながら動作を最適化する。(撮影:栗原克己)

 ヤマハ発動機もAIによる画像認識を生かし、細胞のピッキング作業を自動化したシステムを展示した。薬品の開発の際に指定した細胞を吸着して搬送するもので、人の眼では見分けのつかない直径数十~数百μmほどの小さな細胞を、カメラで撮影した画像とAIで認識する。チップマウンタの技術を応用したものだ。

ヤマハ発動機が展示した細胞ピッキングシステム
直径数10~数100μmほどの細胞を見分けて搬送する。(撮影:栗原克己)

違うメーカーのロボット2台を協調動作

 画像認識で実現する典型的な機能に外観検査があるが、デクシスはそれを双腕ロボットに組み込んだシステムを展示した。作業者が組み付けた基板を片方のアームでつかみ、カメラの前に移動させて撮影。もう片方のアームで、合格、不合格のトレイにそれぞれ仕分ける。1回の撮影でバリや傷、凹凸など複数の項目を検査できるという。

双腕ロボットを使ったデクシスの外観検査システム
(撮影:栗原克己)

 双腕ロボットのような機能を2つのロボット、それも異なる2つの異なるメーカーのロボットで実現したユニークなシステムを展示したのが佐鳥電機だ。デモでは三菱電機のロボットと安川電機のロボットが、相互に協調しながら作業する様子が披露された。可搬重量など特性やカテゴリが異なるロボットを組み合わせることで、単一の双腕ロボットではなしえないような協調作業が可能になるという。

佐鳥電機は違うメーカーのロボット2台による協調作業をデモ
(撮影:栗原克己)

人間の動作を手本に再現

 業種ごとのロボット活用提案では、シンテックが食品工場での弁当ふた閉め作業を自動化するシステムを展示した。コンビニエンスストアなどで販売する弁当の場合、容器は簡素で強度が十分でないため、単にふたをのせて上から力で押し込むだけでは容器が壊れてしまう。同社が展示したシステムでは、人間が両手を使って片方ずつ押し込む作業を手本にし、双腕ロボットの先に付けた2つのバーを片方ずつ動かして押し込む。それにより、容器を変形させることなくふた閉めを完了する。コンベア上を流れてくる皿の位置は画像認識で把握しており、吸着したふたをのせる作業も含めて2個ずつ進めることで、作業効率も追求している。

シンテックの弁当ふた閉め自動化システム
人間が行う作業を手本にした動作で、容器を壊すことなく作業を完結させる。(撮影:栗原克己)

 MUJINは物流業界向けに、同社のコントローラをベースにした荷降ろし自動化システムを展示。荷物を載せたパレットをAGVで運ぶ機能と、ロボットでパレットから荷降ろしをする機能を連携させたシステムを、3カ月で立ち上げることができるという。

MUJINの物流業界向けシステムのデモ
ロボットとAGVが協調し、荷降ろしの自動化を実現する。(撮影:栗原克己)

 展示を見ていたある来場者は、「ロボットは正直どこも変わらない。システムを決めるのは、ハンドとセンサだね」とつぶやいていた。ロボットによる自動化システムの主役が、ロボット本体からハンドなど周辺装置に移りつつあることを実感させた2019年のロボデックスだった。