機械要素技術展(M-Tech)は機械部品や加工技術を対象にした展示会で、東京、名古屋、大阪で毎年開催されている。ここ数年は、4月が名古屋、6月が東京、10月が大阪の順で開催されてきたが、2019年は東京が先陣を切る形で2月6日(水)~8日(金)に東京ビッグサイトで開催された。本稿では数ある展示の中から、「デジタル化」のトレンドを先取りして、新たな付加価値を提供することを狙った製品や技術をいくつかピックアップする。(取材・文・撮影:関 行宏)

はじめに、機械部品や機構部品にセンサーを取り付けて付加価値を高めた製品を取り上げる。
ケーブルキャリアの大手メーカーであるイグス(本社:ドイツ)は、樹脂で構成した「エナジーチェーン」と呼ぶケーブルキャリアにセンサーを組み合わせたソリューションを紹介した。ひとつが予防保守を目的としたソリューションで、エナジーチェーン先端部にジャイロセンサーと加速度センサーを付けて動きをセンシングし、データをドイツ本社のサーバーに上げて、寿命予測計算に補正をかける仕組みである。磨耗部品のメンテナンスまでの日数の精度を高めるのが目的だ。ヨーロッパでは自動車産業を中心に導入が進んでいるそうで、近いうちに国内での販売も開始する予定だという。
エナジーチェーンの機構部にワイヤーを組み込み、ワイヤーの引っ張り力を末端のセンサーで測定し、キャリアの引っかかりや異物の噛み込みを検出するソリューションも展示した。突発的な異常を検知するのが目的である。

ボッシュ・レックスロス(本社:ドイツ)は締め付けトレーサビリティを実現するコードレス型ナットランナー(自動締結機)「NEXO」シリーズを展示した。類似の製品は他社にもあるが、「コントローラまで内蔵したのはおそらく世界初」(同社説明員)という。締め付けトルクなどの情報はWi-FiまたはSDカードに出力する。ナットランナー単独では締めたボルト位置までは特定できないが、例えば上方にやぐらを組んでカメラ映像と組み合わせることでトレーサビリティが実現できるとする。海外では自動車業界や航空機業界で採用されているという。

CKDは測長センサーを内蔵したスライドハンドLSH-HP2を展示した。すでに販売しているLSP-HPシリーズと合わせて、同社では「進化系リニアスライドハンド」と位置づける。LVDT方式のセンサーとアンプを内蔵し、ワークの長さを繰り返し精度±0.02mmで測定できるため、把持と検査とを同時に処理できるのが特徴だ。把持部分の磨耗の検知にも使える。ロボットアーム先端などに取り付けられるスライドハンドは一般に消耗品として扱われるが、内部の摺動部品や潤滑剤などを厳選することで耐久性を高めており、「当社の従来品に対しておよそ2倍」(CKDの説明員)の長寿命化を実現した。また、スライドレールなどの機構によって交換時間を短縮し、設備の停止時間を最小限に抑えるよう工夫している。

コンベアチェーンやマテハン用部品を展開するつばきグループは、「IoT対応ギヤモータ」を参考展示した。電力、温度、振動(XYZおよび加速度)をUSBを介して出力するのが特徴である。電力を見ることで、電流だけを見る従来のギアモーターに比べて、負荷を精度高く検知できるという。IoTに対応したシーズ型のソリューションとしてユーザーに提案していく考えだ。
