5Gのインパクトを業界に啓蒙

 イベント全体を象徴する新しいキーワードがなかなか見当たらなかった今年のHannover Messeのハイライトといえるのが「5G」の展示である。主催者企画として「5G Arena」と名付けた特別展示スペースを新設(図10)。ここで複数の企業がユースケースを披露した。

図10 新設した5G(第5世代移動通信)の特設展示コーナー「5G Arena」
(撮影:Mari Kusakari)

 「高速」「低遅延」「多数同時接続が可能」といった特徴を備える5Gの通信システムを使えば、高精度の制御や遠隔監視がワイヤレスでできるようになる。多数のセンサーからワイヤレスで情報収集することも可能だ。5G Arenaでは、こうした利点を来場者にアピールしていた。

 5G Arenaでは、実際に基地局を設置し、独Bosch Rexroth、独Carl Zeiss、独Festo、独Phoenix Contactなどが5G通信を使ったシステムのデモンストレーションを実施した(図11)。いずれも5G通信には、米QUALCOMMとフィンランドNOKIAが共同開発した端末を利用していた。

図11 5G通信システムの基地局(展示ホール入り口上部の白い箱の中)とデモンストレーションに使われていた5G通信装置
(撮影:Mari Kusakari)

 Bosch Rexrothが展示したのは、産業用ロボットをワイヤレスで非常停止させるシステムである(図12)。産業用ロボットのコントローラと非常停止ボタンを搭載した操作パネルの間を5G通信で接続。重要な制御情報を高速かつ確実に送信できることをアピールした。

図12 Bosch Rexrothのデモンストレーション
(撮影:Mari Kusakari)

 Carl Zeissは、自動車のボディーの加工状態を、画像を使って検査するシステムを展示した(図13)。ロボットアームの先端に取り付けた3次元カメラでボディーを撮影。その画像データを5G通信でカメラから測定システムに送る。

図13 Carl Zeissは3次元カメラとロボットアームを組み合わせた検査装置を展示
(撮影:Mari Kusakari)

 FestoとPhoenix Contactは、稼働状態などのデータを生産ラインからリアルタイムで収集するシステムを、それぞれ展示した(図14)。いずれもPLC(Programmable Logic Controller)が出力するデータを、モニタリングシステムに伝送するのに5G通信を利用した。

図14 Festo(右)とPhoenix Contact(左)は生産ラインからデータを収集するシステムを展示
(撮影:Mari Kusakari)
 

 Bosch RexrothとスウェーデンのEricssonは、自社ブースでも5G通信のデモンストレーションを実施した。Bosch Rexrothは展示ブースの中央に設けたステージで、2台のAGVとロボットアームが5G通信を介して連携して動作する様子を披露した(図14)。Ericssonは、5G通信で接続したコントローラで制御するロボットアームやクモ型ロボットなどを展示していた(図15)。クモ型ロボットは、独立して動く6つの足を備えており、それらの動きを個別に制御することで様々な方向に移動させることができる。

図15 Bosch Rexrothは5G通信を使って2台のAGVとロボットアームが連携する様子を披露(左)。Ericssonは、5G通信で接続したコントローラで制御するロボットアームとクモ型ロボットを展示した(右)
(撮影:Mari Kusakari)

 センセーショナルな話題が少なくなったように見えるHannover Messeだが、ここ数年続いた「ブーム」が過ぎて、このイベントの本来の雰囲気が戻っただけなのかもしれない。こうした変わり目を迎えたHannover Messe。来年は新展開が期待されるところだ。