IoTをサービス化する動きが活発に
IoTをサービスに結びつけた出展も多く見られた。客先に納入した機械からデータを収集して稼働状態などの見える化を図るとともに、ディープラーニング(深層学習)などのテクノロジーを応用して予防保守を提案する。「お客様からすると、機械や設備のデータを集めるところまでは自社で対応できたとしても、予防保守の仕組みを構築するのは難しく、そこを有償サービスとして提供することを考えたい」(ある工作機械メーカーの説明員)。
ヤマザキマザックはシスコシステムズと共同で開発した「Mazak iCONNECT」のコンセプト展示を行った。客先の機械のデータをシスコシステムズの技術を用いてセキュアにクラウドに転送。稼働履歴レポート、遠隔診断、アラームや加工完了の通知、パラメータバックアップなどの機能を提供する。2019年4月からのサービスインを予定するが、いずれは予防保守の実現も目指す計画だ。なお同社では業界標準プロトコルであるMTConnectにも対応しており、ゲートウェイ「Mazak SMART Box」を介して、他社の機械を含めた工場内のIoTネットワークの構築を支援する(図5)。

三菱重工工作機械は工作機械のモニタリングシステムである「DIASCOPE」上で予防保守のサービス化を計画中である(図6)。現在提供している稼働モニタリングやリモートアクセスなどの機能に加えて、主軸の振動や電流値などの変化をディープラーニングによって特徴抽出し、故障の前兆を予測する仕組みだ。共通のニューラルネットワークモデルをベースに、機能ごとの推論エンジンで構成する。

コマツNTCは、品質工学の手法であるMT(マハラノビス・タグチ)システムとエッジコンピューティングとを組み合わせた予防保守システムを展示した(図7)。上限値や閾値などの単純な切り分けでは信頼性が十分ではないとの考えのもと、あらかじめ学習させた正常な状態に対して現在の状態のマハラノビス距離を多変量で解析し、変化を検出する。クラウドを介さずにエッジ側で処理を行うことで、正常または異常を1秒以内に判定する高速性が特徴である。親会社である小松製作所の研究部門や生産部門の協力を得ながら、4年間の研究を経て、高速かつ高信頼な特徴抽出アルゴリズムを開発したという。

IoTプラットフォーム「Field Systemサービスツール」をお披露目したのはファナックである(図8)。同社が従来から展開する工場向けオープンプラットフォーム「Field System」上にパートナーが提供する様々なアプリケーションソフトウエアを実装して、工場内のデータ活用やクラウド上の情報との統合管理を実現するアーキテクチャだ。10社以上のパートナーが、装置監視、異常検知、加工装置管理、工具管理、振動解析などのアプリケーションを展示した。

とどまるところを知らない精度向上や性能向上
機械の高性能化および高機能化も進む。業界最大手の一社であるDMG森精機は、ガントリータイプの大型5軸加工機の最新モデル「DMU 200 Gantry」と「DMU 340 Gantry」の実機を日本で初披露した(図9)。このうちDMU 340 Gantryの最大移動距離はY軸2800mm×X軸6000mm×Z軸1500mmと大きく、しかも高速なリニアドライブによって加工時間の30%短縮を実現している。
同社はアディティブマニュファクチャリングにも力を入れており、パウダーベッド方式の金属3Dプリンター「LASERTEC 30 SLM 2nd Generation」や、ジェネレーティブ・デザイン法を用いて試作したコンセプトモックなどを展示した。前者はカートリッジ式の採用により、2日から3日程度を要するパウダーの交換をわずか2時間に短縮したのが特徴である。また、ディープラーニングによってXYZ各方向の熱変位を補正する「Ultra Thermal Precision」(ターニングセンタ「NLX2500SY」に搭載)などの紹介もあった。

門型加工機「MVR・Fx」シリーズで「ゼロへの挑戦」を謳うのは三菱重工工作機械である(図10)。最高で毎分2万回転にも達する主軸の温度を冷却機構によって一定に保ち、熱変位によるZ軸方向の伸びを抑制。また、工具の刃先を画像認識し、工具の交換の前後での段差を解消する「撮像式工具長測定システム」を搭載した。テーブル周囲に設置した基準ゲージを自動的に計測して空間誤差を補正しテーブルの直角精度を高める「空間誤差補正システム」もオプションで提供する。

工作機械ではないが、AGV(自動搬送装置)も進化を遂げつつある。センシング、画像認識、AIによるフロアマップ作成などの機能を得て、磁気テープの貼付などを必要としない自律的な移動が実現されている。DMG森精機や牧野フライス製作所は、AGVにロボットアームを搭載し、ピッキングと搬送を自動化するロボットを展示した(図11)。この分野は今後さらに進化を遂げていくだろう。

IoT導入のハードルを下げる手軽なソリューション
そのほかIoT関連の展示をいくつか紹介しよう。ジェイテクトが2018年9月に発売した「JTEKT-SignalHop」は、機械設備などの稼働状態を示すシグナルタワーをIoT化するユニットである(図12)。緑・黄・赤のそれぞれに光センサーを取り付け、ワイヤレスネットワークのZigBeeを介して点灯状態を収集する。1つのSignalHopで最大50基のシグナルタワーを監視できる。原理は単純で、しかも既存設備への導入が容易である。オプションとして、点灯が変化した前後20秒を動画として記録したり、作業者の作業内容とのひもづけなども可能である。

大幅な投資を行うことなく既存設備をIoT化するこうした展示はほかの出展企業にも見られた。バルブなどの空気圧機器を主に手がけるCKDは防水型のIoT端子台を展示した(図13)。圧縮空気で動作するシリンダー、チャック、バルブなどの状態をユニット近くで集約し、EtherCATやCC-Link IEなどのネットワークを通じて上位システムに伝送する役割を担う。デジタル入力とアナログ入力を備える。併せて、IO-Linkコミュニティ ジャパンが推進する業界標準の「IO-Link」に準拠するセンサーユニットなども展示した。

インダストリー4.0や第4次産業革命を契機に、工場のデジタル化が始まっている。工作機械各社が提案・提供するソリューションによって、モノづくりのさらなる革新が進み、ビジネス全体のデジタライゼーションへとつながっていくことが期待される。そのような萌芽が垣間見られたJIMTOF2018であった。