最新の工作機械や関連機器を一望できる展示会「日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」が2018年11月1日から6日にかけて東京ビッグサイトで開催された。前回の「JIMTOF2016」から2年が経った今回、市場ニーズの変化やテクノロジーの進歩を背景に、工作機械メーカーの取り組みはどう進化しただろうか。広大な展示会場からその一端を紹介する。(取材・文:関行宏)

 世界をリードする日本の工作機械は、日本のものづくりを支えるだけではなく、産業としても日本経済を牽引する重要な存在である。一般社団法人 日本工作機械工業会が2018年4月に発表した統計値によれば、2017年の受注総額は前年度比36.1%増となる過去最高の1兆6455億円を記録するなど、きわめて好調な状況だ。

 日本の産業の鍵を握る最新の工作機械や関連技術が一堂に会する展示会が、同工業会が2年ごとに主催する「JIMTOF(ジムトフ)」だ(図1)。各社のソリューションを一望できるだけではなく、工作機械メーカーが提案するものづくりの近未来の姿が窺えるとして、毎回多くの来場者で賑わう。2018年11月1日から6日にかけて開催された「JIMTOF2018」には前回の約5500人増となる15万3103人が訪れた(速報値)。

図1 東京ビッグサイトの東ホールおよび西ホールを使って開催された「JIMTOF2018」(日本国際工作機械見本市)
(撮影:栗原克己、関行宏)

 2016年に開催された前回の「JIMTOF2016」では、ドイツで提唱されたインダストリー4.0の流れを受けて、IoTや産業用ネットワークなどの展示が注目を集めた。それから2年が経った2018年は、IoT関連の展示は引き続き多く見られた一方で、「省人化」あるいは「省スキル化」を実現するソリューションが各社で目に付いた。少子化と熟練作業員の高齢化を背景に、外国人を含めて誰もが従事できる現場づくりが急がれており、そうした社会ニーズに対して機械工作メーカーそれぞれが様々なアイデアを具現化しはじめていると見ることができる。

 また、IoTのサービス化の動きも盛んになってきた。工場内データの、収集、分析、活用といった一連のサイクルを、工作機械や設備を熟知した機械メーカーが担うことで、顧客の負荷を減らそうという提案である。

スキルを問わず誰もが働ける現場へ

 まず「省人化」や「省スキル化」に関わる展示をいくつか紹介しよう。オークマは次世代ロボットシステム「STANDROID(スタンドロイド)」をJIMTOF2018でお披露目した(図2)。同社のマシニングセンタ「MB-46」に横付けしたデモシステムを展示したが、5軸制御マシニングセンタなどにも取り付けられるという。「革新的ロボット操作系」と名づけたインタフェースによって、マシニングセンタ側からロボットをティーチングレスで制御できるようにしたのが特徴で、ワークの設置や取り出しなどを自動化できる。

図2 オークマが展示したロボットの新製品「STANDROID」
マシニングセンタ「MB-46」の横に組み込まれ、ワークの設置や取り出しなどを自動化する。ロボットアームには安川電機製を用いている(撮影:関行宏)

 ブースには2018年10月に発表したロボットシステム「ARMROID(アームロイド)」の展示もあった。同社のCNC旋盤の内部にロボットアームを内蔵させることで、昼間は人の介在を必要とする少量品の加工を行い、夜間や休日には単純な量産加工をARMROIDに行わせる、などの使い方を想定する。それぞれ外部のシステムインテグレーターに構築を依頼する必要がない点もメリットとして訴求する。

 音声インタフェースやヘルプ機能に力を入れるのは牧野フライス製作所だ。米iTSpeexが提供する音声インタフェース「ATHENA(アテナ)」を国内で初めて(同社調べ)採用した(図3)。クーラントのオン・オフなど、工作機械の付随的な機能を制御するM-codeを音声入力で代行させることで、M-codeを知らない作業者でも操作できるようにした。ATHENAによって認識されたコマンドは、いったん音声合成によって発話され、「はい」または「いいえ」での確認プロセスを設けることで安全性を高めている。

 ヘルプ機能の拡充も進めている。例えば工作機械の診断画面で「ヘルプ」ボタンをタッチすると、該当メッセージに対する説明が表示され、さらにヘルプ画面内のQRコードをスマートフォンあるいはタブレットで読み込むと、機種、号機、使用中の言語、機械の状態などに応じて、より詳細な説明や動画がインターネット経由で表示される(図3)。同社の「Key Technology Professional 6」シリーズ全機種でサポートを予定しており、最終的には20言語に対応していくという。こうした取り組みで、工作機械を活用するハードルを下げるとともに、工作機械の導入から生産立ち上げまでの期間の短縮を図っていく。

図3 牧野フライス製作所が展示したユーザーインタフェース
工作機械の付随コマンドであるM-codeの代わりに自然言語で指示できるシステム(左)と、QRコードを介してスマートフォンやタブレットでも閲覧可能なヘルプ機能(右)。(撮影:関行宏)

 アマダは、「省段取り」をコンセプトにしたベンディングマシン「HG-1003ATC」(図4)やレーザーマシン「ENSIS-3015AJ」を紹介した。HG-1003ATCは型番のとおり自動金型交換装置(ATC)を組み込んだ曲げ加工機である。重量のある金型の交換を人手で行う必要がなく、「力のない女性でも作業に従事できる」(同社)として提案する。共通の金型で多品種の曲げに対応し、ガイダンスのとおりに材料をセットしてペダルを踏めばよい。ENSIS-3015AJはファイバーレーザーによる切断加工機である。板厚や材料に応じてビーム径を制御する同社独自の技術を搭載。アシストガスによる吹き飛ばし効率を高めて断面品質の向上を実現するとともに、レンズユニットの交換作業(段取り)を不要にして扱いやすくした。

図4 自動金型交換装置(ATC)を組み込んだアマダのベンディングマシン「HG-1003ATC」
右側のユニットがATCで、汎用の金型を組み合わせて多品種の曲げに対応する。作業者は材料(鋼材)をセットするのみでよい。(撮影:関行宏)

IoTをサービス化する動きが活発に

 IoTをサービスに結びつけた出展も多く見られた。客先に納入した機械からデータを収集して稼働状態などの見える化を図るとともに、ディープラーニング(深層学習)などのテクノロジーを応用して予防保守を提案する。「お客様からすると、機械や設備のデータを集めるところまでは自社で対応できたとしても、予防保守の仕組みを構築するのは難しく、そこを有償サービスとして提供することを考えたい」(ある工作機械メーカーの説明員)。

 ヤマザキマザックはシスコシステムズと共同で開発した「Mazak iCONNECT」のコンセプト展示を行った。客先の機械のデータをシスコシステムズの技術を用いてセキュアにクラウドに転送。稼働履歴レポート、遠隔診断、アラームや加工完了の通知、パラメータバックアップなどの機能を提供する。2019年4月からのサービスインを予定するが、いずれは予防保守の実現も目指す計画だ。なお同社では業界標準プロトコルであるMTConnectにも対応しており、ゲートウェイ「Mazak SMART Box」を介して、他社の機械を含めた工場内のIoTネットワークの構築を支援する(図5)。

図5 MT Connectに対応したヤマザキマザックのゲートウェイ「Mazak SMART Box」(左)
「Mazak iCONNECT」でも同様のゲートウェイが用意される見込みだ。技術を結集したメカで人々を救うサンダーバードをブースコンセプトに据えて来場者の目を引いていた(右)。(撮影:関行宏)

 三菱重工工作機械は工作機械のモニタリングシステムである「DIASCOPE」上で予防保守のサービス化を計画中である(図6)。現在提供している稼働モニタリングやリモートアクセスなどの機能に加えて、主軸の振動や電流値などの変化をディープラーニングによって特徴抽出し、故障の前兆を予測する仕組みだ。共通のニューラルネットワークモデルをベースに、機能ごとの推論エンジンで構成する。

図6 三菱重工工作機械の「DIASCOPE」の画面例
リモートモニタリング(無償)と稼働モニタリング(有償)は既にサービスとして提供中。ディープラーニングを用いた予防保守の実用化を予定する。(撮影:関行宏)

 コマツNTCは、品質工学の手法であるMT(マハラノビス・タグチ)システムとエッジコンピューティングとを組み合わせた予防保守システムを展示した(図7)。上限値や閾値などの単純な切り分けでは信頼性が十分ではないとの考えのもと、あらかじめ学習させた正常な状態に対して現在の状態のマハラノビス距離を多変量で解析し、変化を検出する。クラウドを介さずにエッジ側で処理を行うことで、正常または異常を1秒以内に判定する高速性が特徴である。親会社である小松製作所の研究部門や生産部門の協力を得ながら、4年間の研究を経て、高速かつ高信頼な特徴抽出アルゴリズムを開発したという。

図7 品質工学で有名なMT(マハラノビス・タグチ)システムを用いて予防保守の実用化を目指すコマツNTC
1ms周期でサンプリングを行い、1秒以内に判定するという高速処理を実現した。(撮影:関行宏)

 IoTプラットフォーム「Field Systemサービスツール」をお披露目したのはファナックである(図8)。同社が従来から展開する工場向けオープンプラットフォーム「Field System」上にパートナーが提供する様々なアプリケーションソフトウエアを実装して、工場内のデータ活用やクラウド上の情報との統合管理を実現するアーキテクチャだ。10社以上のパートナーが、装置監視、異常検知、加工装置管理、工具管理、振動解析などのアプリケーションを展示した。

図8 見える化や分析などのパートナーアプリケーションを実装できるファナックのIoTプラットフォーム「Field Systemサービスツール」
(撮影:栗原克己)

とどまるところを知らない精度向上や性能向上

 機械の高性能化および高機能化も進む。業界最大手の一社であるDMG森精機は、ガントリータイプの大型5軸加工機の最新モデル「DMU 200 Gantry」と「DMU 340 Gantry」の実機を日本で初披露した(図9)。このうちDMU 340 Gantryの最大移動距離はY軸2800mm×X軸6000mm×Z軸1500mmと大きく、しかも高速なリニアドライブによって加工時間の30%短縮を実現している。

 同社はアディティブマニュファクチャリングにも力を入れており、パウダーベッド方式の金属3Dプリンター「LASERTEC 30 SLM 2nd Generation」や、ジェネレーティブ・デザイン法を用いて試作したコンセプトモックなどを展示した。前者はカートリッジ式の採用により、2日から3日程度を要するパウダーの交換をわずか2時間に短縮したのが特徴である。また、ディープラーニングによってXYZ各方向の熱変位を補正する「Ultra Thermal Precision」(ターニングセンタ「NLX2500SY」に搭載)などの紹介もあった。

図9 DMG森精機が国内で初披露したガントリータイプの大型5軸加工機「DMU 200 Gantry」(左)
広いテーブルを生かし、三つのワークを置いて切削するデモを実施。右はジェネレーティブ・デザインで作った金属3Dプリンターの構造モックアップ。同社の「LASERTEC」で製造した。(撮影:関行宏)

 門型加工機「MVR・Fx」シリーズで「ゼロへの挑戦」を謳うのは三菱重工工作機械である(図10)。最高で毎分2万回転にも達する主軸の温度を冷却機構によって一定に保ち、熱変位によるZ軸方向の伸びを抑制。また、工具の刃先を画像認識し、工具の交換の前後での段差を解消する「撮像式工具長測定システム」を搭載した。テーブル周囲に設置した基準ゲージを自動的に計測して空間誤差を補正しテーブルの直角精度を高める「空間誤差補正システム」もオプションで提供する。

図10 三菱重工工作機械の大型門型加工機「MVR・Fx」(左)
テーブル左奥に、工具の刃先高さを一定に保つ「撮像式工具長測定システム」のカメラが見える。工具の角度を変えながら加工した金属ブロックも展示し、工作精度をアピールしていた(右)。(撮影:関行宏)

 工作機械ではないが、AGV(自動搬送装置)も進化を遂げつつある。センシング、画像認識、AIによるフロアマップ作成などの機能を得て、磁気テープの貼付などを必要としない自律的な移動が実現されている。DMG森精機や牧野フライス製作所は、AGVにロボットアームを搭載し、ピッキングと搬送を自動化するロボットを展示した(図11)。この分野は今後さらに進化を遂げていくだろう。

図11 DMG森精機のAGV「RV3」(左)と牧野フライス製作所の「iAssist」(右)。
「RV3」ではロボットアームの先端に3Dビジョンを搭載することで、AGV本体の位置ずれによらず±0.5mmの位置決め精度を実現。「iAssist」のロボットアームはファナック製。(撮影:関行宏)

IoT導入のハードルを下げる手軽なソリューション

 そのほかIoT関連の展示をいくつか紹介しよう。ジェイテクトが2018年9月に発売した「JTEKT-SignalHop」は、機械設備などの稼働状態を示すシグナルタワーをIoT化するユニットである(図12)。緑・黄・赤のそれぞれに光センサーを取り付け、ワイヤレスネットワークのZigBeeを介して点灯状態を収集する。1つのSignalHopで最大50基のシグナルタワーを監視できる。原理は単純で、しかも既存設備への導入が容易である。オプションとして、点灯が変化した前後20秒を動画として記録したり、作業者の作業内容とのひもづけなども可能である。

図12 既設のシグナルタワーをIoT化する「JTEKT-SignalHop」(左)と作業者のスキルを見える化する「スキルアップNAVI」(右)
ジェイテクトが展示した「JTEKT-SignalHop」はバッテリーで動作し、ZigBeeで通信するため、給電を含めて配線の必要がない。(撮影:関行宏)

大幅な投資を行うことなく既存設備をIoT化するこうした展示はほかの出展企業にも見られた。バルブなどの空気圧機器を主に手がけるCKDは防水型のIoT端子台を展示した(図13)。圧縮空気で動作するシリンダー、チャック、バルブなどの状態をユニット近くで集約し、EtherCATやCC-Link IEなどのネットワークを通じて上位システムに伝送する役割を担う。デジタル入力とアナログ入力を備える。併せて、IO-Linkコミュニティ ジャパンが推進する業界標準の「IO-Link」に準拠するセンサーユニットなども展示した。

図13 防水型IoT端末(左)とIO-Link対応のセンサーユニット(左)
防水型IoT端末は食品加工工場など水を扱う現場がターゲットで、IO-Linkの入力を集約してEtherCATやCC-Link IEで上位に送出する。2019年に製品化する予定。(撮影:関行宏)

 インダストリー4.0や第4次産業革命を契機に、工場のデジタル化が始まっている。工作機械各社が提案・提供するソリューションによって、モノづくりのさらなる革新が進み、ビジネス全体のデジタライゼーションへとつながっていくことが期待される。そのような萌芽が垣間見られたJIMTOF2018であった。