ビジネスモデルの構想から技術や人材の調達まで、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を目指す日本のものづくり企業を広範囲で支援するビジネスを展開するINDUSTRIAL-X。同社は、そのサービス基盤を着々と強化している。2020年6月にDXで先行する企業との連携プログラム「INDUSTRIAL-Xパートナーズ」を立ち上げたことを正式に発表。DXを実践するためのソリューションをワンストップで提供するサイト「Resource Cloud」の開発も進めている。これらの施策の背景にある同社のビジョンや、今後の展開について同社代表取締役 八子知礼氏に聞いた。

―― INDUSTRIAL-Xを設立した経緯を教えて下さい。

八子氏 製造業におけるDXは、ICT(情報通信技術)を導入しただけでは進みません。DXを実現するには、現場のノウハウ、人材、資金、デジタル化によって目指す新しいビジネスモデルなど、ICTのほかに広範囲にわたるリソース(資源)が必要です。しかも、それぞれのリソースには、専門家の知見やノウハウに裏打ちされた高いレベルが求められるでしょう。ところが特定の分野に精通した人材は、少子高齢化を背景に減少する傾向にあります。これとともにデジタル化に必要なリソースの確保は、ますます難しくなるはずです。このままでは、製造業におけるDXが停滞することになりかねません。こうした問題を解決するために、INDUSTRIAL-Xを立ち上げることにしました。

(撮影:栗原克己)

 INDUSTRIAL-Xを設立する前の約5年間は、IoT(Internet of things)に関するコンサルティングやマーケティングを手掛けるウフルに在籍していました。同社では、IoTビジネスを構築するためのエコシステム作りに取り組んでいたのですが、このときにかなりの数のIoTソリューションを生み出すことができました。ところが、それらのソリューションが、なかなかお客様の現場に浸透しません。

 例えば、ICTを導入して、ものづくりの現場から収集したデータを様々な形で表示する「可視化」までは実現させるのですが、収集したデータから抽出した情報を使って現場の最適化を図り、さらにビジネス変革につなげるといった、次の段階に進むところで足踏みをする企業は少なくありません。そういった企業の方も、デジタル化の目的が単なる合理化や効率化ではないことは、分かっていると思います。ところが、予算がない、推進する人材がいないといった問題が立ちはだかるわけです。こうした皆さんの課題や疑問を解決する道筋をつけて、DXが速やかに進むようサポートするのが、INDUSTRIAL-Xのミッションだと考えています。

DX後の姿を明らかにすることが起点

―― どのようなサービスを展開するのでしょうか。

八子氏 私たちは最初にDX後の企業の姿を提示します。これがサービスの起点です。つまり、お客様と意見を交わしながら将来像を描くところからコンサルティングを始めるのではなく、私たちがお客様のために描いたDX後の姿を経営陣に説明するところからコンサルティングを始めます。あなたの会社におけるデジタル化のモデルは、こうです。DX後のビジネスモデルは、こうなります、というのを説明し、賛同していただけたら、それを実現するためのプロジェクトを開始します。

 もちろん、DX後の姿を示されただけで、経営陣は投資を決めることはできません。最初の提案の段階で、DXが提案先の企業の経営に与える効果についても説明します。例えば、DXによって商品開発のリードタイムを短縮できれば、それによって新しい商品やサービスを開発する余裕が生まれ、それが売り上げ増につながる可能性があります。株主の評価が上がることも期待できます。こうした効果を具体的に説明すれば、経営陣の方は妥当なファンドの額を割り出し、DXに向けた投資の可否を判断することができるでしょう。このようにしてDXへの一歩を踏み出すかどうかを、最初に決めていただきます。

(撮影:栗原克己)

 DXに取り組むことが決まると、これを進めるうえで足りないリソースが明らかになります。その足りないリソースを揃えて、DXを進める支援をするのがINDUSTRIAL-Xの役割です。DXに必要な技術、ノウハウ、情報の提供はもとより、資金の調達や支払いのスキームもご提案しています。DXプロジェクトをリードする人材がいないというのであれば、CDXO(Chief Digital Transformation Officer:最高デジタルトランスフォーメーション責任者)またはCDXO補佐としてINDUSTRIAL-Xから参画します。こうして、DXを進めるうえで、経営陣の皆さんが懸念されることを1つひとつ解決して状況を整えたら、あとは、最初に明らかにしたDX後の姿を実現することを目指して様々な取り組みを進めるだけです。

 簡単に言うと、DXをやるのか、やらないのかを、まず決めていただいて、やるとなったら足りないところ、弱いところをINDUSTRIAL-Xがサポートさせていただく。そういったサービスを考えています。もっとも、こうしたアプローチをいくら説明しても、DXに興味のないお客様には耳は貸していただけないでしょう。したがって、私たちのサービスに興味を持っていただけるのは、DXに前向きに取り組むマインドを持った企業の皆さんだと思います。

(撮影:栗原克己)