IoTだけではデジタル化で終わってしまう

―― 製造業はDXに関心の高い業種の一つと思います。製造業はどうDXに取り組めばよいのでしょうか。

村上氏 製造業のDXと言うと、IoTで現場のデータを集めてそれを制御に生かすという話がよく出てきます。もちろんIoTやそこから集めたビッグデータなどは、DXを進めるうえでの必要条件であるのは確かです。しかしそれだけではDXではなく、単なるデジタル化で終わってしまいます。データで制御は効率的になりますが、ビジネスのやり方は変わっていないからです。DXを進めたいなら、取得したデータでどういうビジネスを行うかまで踏み込まなくてはなりません。

(撮影:若宮祐)

 DXが現実的になった大きな要因の一つに、スマホなどで最終消費者と容易につながることが可能になった点があります。今まで部品メーカは、直接の顧客であるセットメーカのニーズさえ満たせば事が足りました。しかしセットメーカの顧客すなわち最終消費者がどういう使い方をしているか、どういうことを望んでいるかを部品メーカが直接知ることができる手段があるのなら、それを生かさない手はありません。DXでそれを真っ先に実現できた部品メーカは、セットメーカへの提案でも競合を大きくしのぐことができるはずです。

 集めたデータそのものを新規ビジネスにする手もあるでしょう。データを自社内で使うことしか考えていないうちは、コストをかけて多様なデータを集めることはできません。データを外販できればコストの回収も進みます。

 製造業は自社のデータを外部に出すことには後ろ向きと言われていますが、それはデータに機密情報が含まれるからというよりも、データが乱雑で「汚い」からという自覚から来るものではないかと思います。汚いのが理由で外販できないのなら、きれいにすればいいのです。AIなどでクレンジングを行う手法を確立すれば、データをもとにした新規ビジネスを立ち上げられるでしょう。

「内科的療法」でDXを進める

―― DXに取り組む企業の支援には、さまざまなコンサルティング会社が乗り出しています。それらの会社との違いはどう打ち出していく方針ですか。

村上氏 欧米のコンサルティング会社は、ツールを作ったり、ファイブフォースやSWOTなどの分析手法を駆使したりして、外部から組織変革を進めていくアプローチが多いようです。意外と精神論的なものが多いのが実情で、どんな会社にも万能かというと必ずしもそうではないのではないかと思っています。

(撮影:若宮祐)

 それに対して当社は、内部から企業の体質を変えていくというアプローチを取ります。DXの科学の最初のステップを「アセスメント」や「レシピ」と呼んでいるのは、この考えに基づいています。欧米のコンサルを「外科的療法」と例えるならば、当社の手法は「内科的療法」とでも表現すべきものかもしれません。医者の科学的な治療に患者が安心できるように、当社は科学的な手法で企業が安心してDXを進められるようにしたいと思っています。

―― DXラボでチームを組む10社のサポーター企業それぞれが、企業がDXを進めていくうえでの医者みたいな存在になるわけですね。

村上氏 ただチームに任せっきりでは絶対にダメです。医者の科学的な治療と並行して患者が日常生活を改める努力をしなくては病が完全には治らないのと同じように、チームのもとでDXを進めたい企業は、自らもチームに有能な人材を送り込むなど、積極的に関与しなくてはなりません。一般的な情報システム構築では、外部のSIベンダに「丸投げ」しても目的を達成できることはありますが、それが通用しないのがDXなのです。リスクを負いながらも将来を見据えてチャレンジャーとなれる企業でなければ、DXは成功しません。

(撮影:若宮祐)