起業したい気持ちがあるなら、一度やってみるべき

(写真:鈴木愛子)
(写真:鈴木愛子)
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―― 最後に、起業して間もない人や起業を考えている人にメッセージをいただけますか。

佐竹 起業するとなると、自分の人生を捧げるかのようなイメージがあると思うんですが、私はそういう位置付けにはしていないんです。まず人として、ご飯が食べられて、家族がいて――。私には今、子どももいるんですが、そういうことが幸せなんです。人生の究極の目的は幸せになることで、そのことと起業の成功や失敗は全く別物だと思っています。

 だから、そうした人としての幸せという土台があった上で、さらに人生を楽しむためのツールとして、起業というものを使いこなしてほしいなと思います。起業がうまくいったらハッピーで、うまくいかなかったらアンハッピー。そういうことではなく、生きていることだとか家族だとか、そこに幸せがあって、人生をさらにエキサイティングなものにするツールとして起業があると捉えるといいんじゃないかと思います。

―― 特に、起業を考えている、あるいは迷っている医師に一言もらえますか。

佐竹 いわゆる医局の中でキャリアを歩むとか、医師のキャリアは臨床か研究の二択だとか、そういうマインドセットがあると思うんですが、私のようにそこから離れた立場になってみると、その考え方はただの思い込みだったなとつくづく感じます。

 医師のキャリアパスが臨床、研究、行政、起業など、3つ4つしかないように見えているかもしれませんが、本当はそうではなくて、選択肢が無数にある中のワン・オブ・ゼムが臨床だし、ワン・オブ・ゼムが研究なんですよね。

 自分の医師としてのキャリアやあるべき姿をベースに考えるのではなく、一度、自分が心の底でやりたいと思っていることをベースに考えてみると、もっと柔軟にキャリアを思い描けるのかもしれません。ですから、起業したい気持ちがあるなら、ぜひ一度起業してみてはどうでしょうか、というのがメッセージになるかと思います。

インタビューを終えて
医療のサステナビリティの危うさ、高騰する医療費、なにより個人の健康と幸せのための未病の改善――。こういった社会課題を解決する一つの強力な手段となる可能性がCureAppの治療用アプリにはあります。

医師という立場から医療を社会インフラとして捉えたとき、佐竹さんはそのサステナビリティに危機感を持っていました。事実、現在のコロナ禍により医療のサステナビリティが、いかに危ういかということが顕在化しました。

米国留学中に治療用アプリと出会った佐竹さんは、「医療のサステナビリティの危機を解消できるソリューションになる」と一瞬で腹落ちしたと言います。それは社会課題を解決したいという強い思いを持ち続けていたからこその反応だと思います。

留学の際の英語力判定テストを何度も落ちながら、「これは無理だ」でなく、合格するまで「受験し続ける」ことを選択したという佐竹さんのエピソードにこそ、強い意志で治療用アプリという新しいフィールドを開拓し続けるCureAppの成長の原動力を感じることができました。
高橋博樹(たかはし・ひろき)
日経BP 総合研究所 戦略企画部長/ソリューション・アーキテクト
高橋 博樹(たかはし ひろき) 日経BP入社後、インターネット草創期のビジネスモデルづくり、ICT、建設など幅広い分野を担当。2015年9月、日経BP総合研究所の発足と同時に戦略企画部長に就任、現職。「新・公民連携最前線」「Beyond Health」の2つのメディアを創案して立ち上げた(写真:栗原克己)