コロナ禍で新作をつくれない中で考えたサステナビリティ

――自社商品のケア・修理・回収を行うサービス「ソーシャルビンテージ」*2を7月にスタートさせました。中でも、ユーザーが使わなくなった商品を回収・解体して、そこから別の新たな商品をつくるというサステナブルな取り組みは、マザーハウスにとって新たな挑戦といえます。今回、どうして回収サービスをスタートさせようと思ったのですか。

山口 新型コロナウイルスの感染拡大で、今年の2月~3月ごろから、私たちは新作がつくりたくてもつくれないという状況になっていました。当社の生産地は途上国6カ国なのですが、すべての国がロックダウンされてしまっていたので…。

 3月というのは、新作を投入する時期ではあるんですが、一方で私自身としては「買い物どころじゃないよ」とも思っていました。お客様もそんな心情なのだとすれば、「新しい買い物」ではなく、今クローゼットにあるものを新しく活用して何かできないだろうか――。そんなことを考えていました。

(写真:加藤康)
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 同時に、私たちは40店の直営店舗を持っているので、以前からとても多くのお客様とのインタラクション(相互のやり取り)があります。「マザーハウスのバッグは20個も30個も持ってます」とおっしゃる方もたくさんおられます。そして、そんなお客様たちから「次のバッグを買いたいんだけど、もうクローゼットがいっぱいだから…」という声を何度も聞いていたんですね。「買いたいけど買えない気持ち」みたいなものがお客様にはあるんだな、と思っていたんです。

 それからもう一つ、マクロ的に「これからのファッション業界はどうなっていけばいいんだろう」ということも、すごく考えたりしていたんですよね。

 (ファッションの本場である)フランスなどでは、サステナブルということが既に1つのキーワードになっています。ただ、売り手はサステナブルと言ってはいるけれど、つくっている途上国の工場では環境についてあまり意識されず、廃棄物をかなり出しているということがあったり…。これでは一般の消費者も、やっぱり疑問を抱きますよね。

 なので、私としては「つくった人がきちんと最後まで責任を持つサイクルって何だろう」ということを考えていました。「その商品の終わり方まできちんとデザインできるはず」と、ずっと思っていたんです。


注)
*2 「SOCIAL VINTAGE(ソーシャルビンテージ)」は、バッグをきれいに使い続けるための「ケア」、経年劣化で発生するほつれや破れを修理する「修理」、そして使われなくなったマザーハウスのレザーバッグの「回収」という3つのサービスの総称。回収は同社では初の試みとなる。そして、回収されたバッグを解体した部材などを再利用して生まれ変わった商品のブランド名が「RINNE(リンネ)」だ。

――いろいろな角度で日頃から考えていたことが結びついて、回収サービスにつながっていったわけですね。

山口 私は「先が見えにくいときは、自分自身が感じることに従った方がいい」と思うタイプなんですね。コロナ禍の中で、私としてはやっぱり「お客様のクローゼットがいっぱいになってしまって、もう使わなくなった商品のその後のことも考えたい」と思ったんです。