回収事業でお客様の愛着のバトンをつなぐ

――商品のケアや修理については、マザーハウスでは以前から手掛けていました。

山口 私たちは今まで、店舗でかなり徹底してケアをしてきました。「レザーが傷つくのは当たり前。商品がお客様に渡った後も責任を持つのは当たり前。だから無料でケアしよう」ということでやってきたんですが、「ケアだけではだめだ」とも思っていたんです。実は回収にトライしたこともあったんですが、解体コストがめちゃくちゃ高くて、その時は断念しました。しっかりつくればつくるほど、解体するにはすごい力が必要になるので、コストも高くなってしまうんですね。

――それが今回、どうして可能になったのでしょうか。

山口 国内のある修理工場にお願いしたら、すごく上手に解体できたんです。私はよく工場に出ているので何となく分かったのですが、直すことと解体することって、非常にスキルが似ているんです。新型コロナの影響で、百貨店などからの修理の仕事が減っていたこともあって、(その修理工場に)仕事を請けてもらうことができました。

 まず事務所にあった不良品の在庫を10個ほど修理工場に送りました。それで、解体時間を計算してください、解体コストを出してくださいとお願いしたんです。それと並行して、私は解体されたパーツからつくるリメイク商品のデザインを型紙に起こして、工場に渡したんですね。そうしたら、できたものが、あまりにもかわいくて(笑)

――あまりにもかわいかった、と(笑)

山口 はい。それで、これはいけるんじゃないかということで、5月から回収キャンペーンを始めたんです。すると私たちのところに不要になったバッグや、使わなくなった私たちの在庫含めて、1000個くらい集まりました。修理工場もすごく一生懸命に仕事をしてくれて、全部解体して、パーツごとに素材を段ボールに入れて、色ごとに仕分けていって。で、配色がすごく重要なので、そこは私が指示を出させてもらって、バッグと小物が出来上がりました。

「ソーシャルビンテージ」サービスから生まれた「RINNE」シリーズ。回収・解体したレザーバッグの素材を組み合わせ、新たな商品を生み出した(写真:加藤康)
[画像のクリックで拡大表示]

 このときに私が一番感動したのは、お客様が商品を戻してくれるときに、その商品の入った段ボールには、必ずと言っていいくらい手紙が一緒に入れてあるんですよ。このバッグをどこで、どの店員さんから買って、このバッグで娘とあそこに行ったんです…みたいな思い出がぎっしりで。「だから絶対メルカリに出したくなかったんです」って書いてある(笑)

 ほかにも、「このカバンで就活頑張りました」とか――。ああ、これはもう、お客様の愛着のバトンを一生懸命つないできたいな、と思いました。

――それぞれストーリーがあるわけですね。

山口 本当にそうなんですよ。すごく泣けますよ(笑)。商品を売っている意味について、つくっている意味について、本当に考えさせられました。手紙はスキャンして(途上国の)工場にも送ろうかなと思っているんです。翻訳も付けて。工場でもきっとモチベーションが上がると思っています。

(写真:加藤康)
[画像のクリックで拡大表示]

――「ソーシャルビンテージ」は、素材や出来上がった商品へのこだわりがあったからこそ、生まれた企画といえそうです。

山口 バングラデシュのジュートという素材で、かわいいバッグをつくって売りたい――。私は、そんなふうにモノから入って起業をしたので、それはありますね。コロナ禍もモノが突破するんじゃないかって、信じているところがあるんです。

――「モノで突破」ですか。

山口 苦しいときはいつも、工場に何か答えがある気がしていて――。やっぱり私は需要を喚起するサプライヤーの力をすごく信じているんです。それは商品になったジュートのバッグを見たときの感動だったりだとか、多分そういったところから来ていると思うんですけど。

 コロナ禍のこの時代、確かにコスト削減とかいろいろな努力は必要ですが、「最後は面白いものがつくれるかどうかだ」といつも思っています。だから私はデザイナーという肩書きと経営者を一緒にやっているんです。