ポール・アレン氏の目指した次のステージ

 モーダ・センターがオープンしてから何年か後、アレン氏はトレイルブレイザーズ社長のラリー・ミラー氏(当時)にシンプルな質問を投げかけた、「どうやってトレイルブレイザーズでの取り組みを、ポートランドを超えて社会全体に広げられるか?」と。

2016年ポートランド・トレイルブレイザーズの試合を観戦するポール・アレン氏(左)とジェネラルマネージャー(当時)のネイル・オルシェイ氏(写真:Craig Mitchelldyer/Associated Press)

 「あの時Green Sports Allianceが生まれる最初の火花が散った」とジールナー氏は当時に想いを馳せた。

 ミラー社長はジールナー氏と同僚のジェイソン・トゥイル氏を呼び、スポーツを「グリーニング」する活動を他地域へも広げる仕事にとりかかるように指示した。

 まもなく、NFLのフィラデルフィア・イーグルスと、既にサスティナビリティ活動を行なっていた環境NGO、Natural Resources Defense Council(NRDC)のアレン・ヘルシュコビッツ氏が加わり、さらに、米国プロ野球リーグNBAのシアトル・マリナーズ、北米のプロアイスホッケーリーグNHLのバンクーバー・カナックスを招き、トレイルブレイザーズ、シーホークス、サウンダーズと併せて、「Pacific Northwest Green Sports Alliance」の中核グループが結成され、現在のGreen Sports Allianceとしての活動が始まったのである。2010年のことである。アレン氏の小さな火花は瞬く間に米バルカン社のスタッフを動かし、大きなうねりを作り始めたのである。

(写真:ジェイソン・トゥイル氏)

 Green Sports Allianceの創設者の一人で、現在、日米双方のグリーンスポーツアライアンスの評議員を務めるジェイソン・トゥイル氏は2007年から2013年まで米バルカン社のシニアプロジェクトマネージャーとしてこのプロジェクトに関わっていた。トゥイル氏はこのように語る。

 「アレン氏は組織のためだけでなく、人間社会全体に良い影響を及ぼすことを求めた。『人間として正しいことを求める心』に対する信念は伝播する。アレン氏が、社会に新しいポジティブなインパクトを創出し、かつ、他地域にも展開できる分野として変革に最も情熱を注いだのが、サイエンスやテクノロジー、ミュージック、アートなどをそれぞれ繋ぐことができるスポーツでした。何か壮大な取り組みのように感じるかもしれないが、私たちはその心を感じることができた。そして大いに肚を突き動かされたのだ。私たちは彼が何を求めているかを知っただけなのだ」

 トゥイル氏は最後にこのように締めくくった。

 「ポール・アレンの世界を変えることへの強い想いとリーダーシップが、そして、彼自身が育てた彼の組織が、Green Sports Allianceの誕生を導き、米国オレゴン州ポートランドでの同法人設立から、カナダや欧州の団体の加盟、日本法人の設立、昨年12月国連より発表された「Sports for Climate Action Framework」作成への貢献など、大きく世界に飛び立つ基礎となったのである」

澤田 陽樹(さわだ・はるき)
一般財団法人グリーンスポーツアライアンス代表理事
澤田 陽樹(さわだ・はるき) 1978年生まれ。京都大学経済学部を卒業し、2002年三菱商事株式会社化学品グループ配属。国内での化学品事業を経験後、台湾三菱商事、ドイツ三菱商事など、世界で化学品事業に従事。2017年三菱商事を退職し、一般財団法人グリーンスポーツアライアンス(GSA) を設立し、持続可能な新ビジネス創出に挑戦中。2018年8月国連 Global Climate Action Headより活動に感謝状を受領。12月にはCOP24 Katowiceに招待参加。京都スマートシティEXPO2018や第6回「スポーツ国際開発」国際シンポジウムに登壇。その他、講演多数。
米国Green Sports Alliance
米国Green Sports Allianceは、2010年、マイクロソフト社の創設者の一人であるポール・アレン氏によって設立された非営利法人。スポーツを通じて健康で持続可能な社会を構築することを使命に、スポーツによる社会課題解決・SDGs実現の取り組み事例を広く社会に提供する活動を続けている。創立9年となり、メンバー団体(プロ・アマのスポーツチーム、学生チーム、スポーツリーグ、スタジアム・アリーナ等の運営管理団体、協賛企業、NPO/NGOなど)は600超。加盟プロリーグは15団体を超えている。