スポーツからサスティナビリティ実現へのアプローチを

 サスティナビリティ実現への取り組みは、「新しい機会」だとスコット・ジェンキンス氏は常日頃から単純明快に語っている。

 「新しい機会」とは、必ずしも社会課題への気付きを醸成する機会やオペレーションコストを削減する機会ということのみにとどまらず、クラブチームとして、あるいは、施設管理企業として、正しいことをするという社会責任、未来の世代により良い環境を残すという使命感を形成する機会、更には、既存パートナーシップの活性化、新しいパートナーシップ構築の機会にもつながることを意味する。

 彼自身のサスティナビリティとの最初の出会いは、NFLフィラデルフィア・イーグルスの本拠地リンカーンフィナンシャルフィールドにて2004年から始まった「Go Green」プロジェクトにチームの一員としてかかわったことに遡る。

 「球場管理の仕事に10年以上携わり、華やかなゲームの裏で米国スポーツが沢山の消費とともに廃棄物を生み出していることに気づき、学生時代にサイエンスを学んだこと、幼いころから自然に強い愛敬の念を持っていたことが相まって、より良い施設運営の在り方を常に模索してきた」(ジェンキンス氏)。

スタジアムの大規模な貯水設備が地域を守る

 メルセデス・ベンツスタジアムのハード面での取り組みの代表例が以下の通りである。ただし、以下で列記した以外にも、効率的な空調設備や最新式オペレーティングシステムの導入などを行っており、常時より良い運営システムの在り方を模索している。

  1. できるだけ雨水が隣接地域に流れ込まないようにするユニークな屋根のデザイン
  2. 敷地内には4000を超える太陽光パネルを設置
  3. LEDライトやLEDビデオボードを採用
  4. 電気自動車専用の充電装置付き駐車場(48台)
  5. 約200万ガロン(757万824リットル)の雨水貯水設備による水の有効利用
  6. 自転車用バレットパーキンングスペース(250台)
スタジアム駐車場屋根に敷かれた太陽光パネル(写真提供:メルセデス・ベンツスタジアム)
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電気自動車専用の充電装置付き駐車場(写真:提供:メルセデス・ベンツスタジアム)
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 上記の対策により、オペレーション面では、通常の27%の節電(NFLアトランタ・ファルコンズの10試合分で必要とする電力の節電)経済効果を生み出している。また、60万フィート(5.57ヘクタール)もの貯水設備は、雨水を貯め再利用するとともに、アトランタの西側の洪水の危険のある地域を保護。さらに街中の木々のために灌漑源として機能させている。スタジアム内では、雨水の利用のほか無水便器も採用し、水の利用量を通常の基準より47%削減する経済効果を得ている。

 ハード面のみならず、ソフト面においても、環境への配慮は怠りない。建設時から廃棄物分別促進のプログラムに取り組み、スタジアム完成後は、公共交通機関(地下鉄)の利用を促進する従業員プログラム、様々なパートナーと連携したゴミの分別・リサイクル活用の推進プログラム、および、紙カップ・生分解樹脂製カップ・リユースカップの使い分けなどに取り組んでいる。