「最初のビジネス事例成立」が企業の参加を集めた

 ジョージア・パワーとの契約により、スタジアム建設プロジェクトは、街のサスティナビリティ実現のフラッグシップとして知られることになった。このことが、参加を希望する事業者たちとの商談に追い風を吹かせた。

 「事業者たちはシンボリックなスタジアムのイメージを求め、その一部になろうとしたのです。彼らは、納入した製品のリサイクル率、産地といったサスティナビリティに関わる情報を開示する取り組みを開始しました。アトランタは多くの業者が3〜4時間で繋がることのできる好立地でもあったのです」(ジェンキンス氏)。

上空から見たメルセデス・ベンツスタジアム。シンボリックなデザインのスタジアムに、サステナブルな製品を納入したいと考える事業者が増えることで完成した。カメラのシャッターのように回転して開閉する屋根が目を引く(写真提供:メルセデス・ベンツスタジアム)
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 このプロジェクトの成功には、スポーツの持つ「可視性の高さ」という特性が大きく寄与したと言えるだろう。メルセデス・ベンツスタジアムというスポーツ施設への注目の高さが、地域の事業者同士をつなげる力へとつながっていったからだ。こうしたスポーツの持つ力が、スコット・ジェンキンス氏の活動の大きなエネルギーになっている。

 ジェンキンス氏は、日本に向けて最後にこう付け加えた。

 「新設、あるいは、旧施設の改修いずれの場合でも、サスティナビリティ実現への取り組みを施設管理のトッププライオリティに置いて事業をデザインすべきです。オペレーションコストを削減できるというビジネス上の経済効果のみならず、施設管理に関わる従業員にとってもその業務の社会に対する使命感を明確にし、取り組みの可視化により自社のプライドを形成することが非常に大きな力になります。サスティナビリティ実現への取り組みは、『新しい機会』であり、未来への投資です」

 「よって、施設完成後ももちろんのことながら、たゆまぬ日々の運営のハードワークが必要になります。私たちは環境負荷の少ない、非常に効率的なスタジアムを所有していますが、プロジェクトはまだ進行中です。私たちはスタジアムをとりあえず作り上げて、試運転をしているようなものなのです。すべてのシステムを正しく稼働させ、従業員教育を行い、彼らの行動をベンチマークして、軌道に乗せるまでに長いプロセスを要するでしょう。そして、私たちが細かい検討を経て、より良い運営方法を見つけ出し、スタジアムの外にまで進出していくために、あと1〜2年は最優先の課題として取り組んでいきます。参加企業のサプライチェーンを利用して、いくつかの資材についてライフサイクル分析を行なうことができれば、もっと現状を改革することができます。扱われている資材についても、また、CO2排出量についてもっとチェックするべきだと思っています」

澤田 陽樹(さわだ・はるき)
一般財団法人グリーンスポーツアライアンス代表理事
澤田 陽樹(さわだ・はるき) 1978年生まれ。京都大学経済学部を卒業し、2002年三菱商事株式会社化学品グループ配属。国内での化学品事業を経験後、台湾三菱商事、ドイツ三菱商事など、世界で化学品事業に従事。2017年三菱商事を退職し、一般財団法人グリーンスポーツアライアンス(GSA) を設立し、持続可能な新ビジネス創出に挑戦中。2018年8月国連 Global Climate Action Headより活動に感謝状を受領。12月にはCOP24 Katowiceに招待参加。京都スマートシティEXPO2018や第6回「スポーツ国際開発」国際シンポジウムに登壇。その他、講演多数。
米国Green Sports Alliance
米国Green Sports Allianceは、2010年、マイクロソフト社の創設者の一人であるポール・アレン氏によって設立された非営利法人。スポーツを通じて健康で持続可能な社会を構築することを使命に、スポーツによる社会課題解決・SDGs実現の取り組み事例を広く社会に提供する活動を続けている。創立9年となり、メンバー団体(プロ・アマのスポーツチーム、学生チーム、スポーツリーグ、スタジアム・アリーナ等の運営管理団体、協賛企業、NPO/NGOなど)は600超。加盟プロリーグは15団体を超えている。