2021年は政府が推進する「スーパーシティ構想」の対象地域の選定(関連記事)が行われるなど、スマートシティにとって大きな1年となる。2021年度(令和3年度)の各省庁の予算案を見ても、スマートシティに対する施策が拡充されているのがわかる。新型コロナ禍による新しいニーズを織り込んだものや、3D都市モデル、都市OSの連携など、施策の内容がより具体的になり、他の分野との連携を志向する動きが顕著だ。内閣府、国土交通省、経済産業省、総務省の予算案から、スマートシティ分野への力の入れ具合を見てみよう。

 2021年度の予算案のうち、スマートシティやそこで実装が想定されている技術などに関する項目を省庁別にまとめた(表1、2)。スマートシティに直接関連する主要施策(表1)は、すべて前年度から継続する方針だ。

表1■スマートシティ関連の主要施策(2021年度予算案) →こちらへ
表2■スマートシティに関連がある項目(2021年度予算案) →こちらへ

 内閣府はスーパーシティ構想に関して、21年度は3億円(ほかに20年度の補正予算で7億円)を予算化している(「スーパーシティ構想推進事業」)。21年度は対象地域がいよいよ決定するとあって、選定都市における先端的なサービスの構築に向けた実証調査のほか、データ連携基盤の整備、データ活用の推進、基本構想の作成など、より具体的な支援に踏み込む。内閣府では「未来技術社会実装事業」を21年度も継続する予定だ。21年度はシンポジウム開催などの費用として0.8億円(事業はこの金額の内数で実施)を予算化しているが、事業そのものは地方創生推進交付金をはじめとする各種補助金を活用する。

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スーパーシティの概要(資料:内閣府)

ローカル5Gの本格的な普及へ

 スマートシティに関連する項目が多いのが国土交通省。2020年度に実施していた「スマートシティモデルプロジェクト」は、2.2億円を予算化しており(ほかに20年度補正予算で3億円)、先駆的な取り組みを持つプロジェクトを引き続き支援する。21年度のスマートシティモデルプロジェクトは、3D都市モデルの施策とも連動していく。国土交通省は3D都市モデルの活用を推進する施策を進めている(参考:国交省の3D都市モデル「PLATEAU」の衝撃、地図に建物の高さを記述して浸水対策)。スマートシティにおいては、3D都市モデルを使ってデジタルツイン技術を導入するケースもあり、今後、サイバー空間を活用した新たな事例創出を促して「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」を推進していく考えだ。

 20年度に実施していた「日本版MaaS推進・支援事業」は、「感染症の拡大を踏まえた混雑回避等の新たなニーズに対応したMaaSの推進」という形で予算化した。混雑を分散させたり、接触を避けたりするなど、新型コロナ禍で生じた新しいニーズや課題への対応も推進する形へとアップデートしている。

 経済産業省は、「デジタルを活用した産業の転換」を掲げて、様々な業界の技術革新とスマート化に取り組む方針だ。スマートシティとの関連が深い取り組みとしては、「新スマートモビリティサービス環境整備事業」がある。「地域新MaaS創出推進事業」(予算規模10億円の内数)の後継にあたるものだ。新スマートモビリティサービス環境整備事業は、「高度な自動走行・MaaS等の社会実装に向けた研究開発・実証事業」が5年間の事業期間を終えたことで、新たに57億円規模で予算化した「無人自動運転等の先進MaaS実装加速化推進事業」のなかで展開する。

 総務省は「データ連携推進型スマートシティ推進事業」を5.8億円で予算化(ほかに20年度補正予算で1.1億円)。前年度の2.2億円(前年度は「データ利活用型スマートシティ推進事業」)から拡充した。都市OSの整備に加えて、都市間の連携、都市OSの接続など「データ連携」にフォーカスしていく。総務省では、ローカル5Gを活用した地域課題の解決に予算規模を拡大する点も目に付く。20年度の37.4億円から21年度は60億円へと大幅増となっている(総務省資料「令和3年度総務省所管予算(案)の概要」)。これまでの開発実証の取り組みを踏まえて、「ローカル5Gの柔軟な運用を可能とする制度整備や、低廉かつ容易に利用できる仕組みの構築」に取り組む方針を掲げており、ローカル5Gが実証実験から本格的な普及へと踏み込む段階にあることが見て取れる。

 スマートシティの主要施策以外に、関連が深そうな施策項目を各府省の予算案からピックアップしてみた(表2)。

 観光政策関連を見ると、「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による観光サービスの変革と観光需要の創出」「観光地域づくり法人(DMO)による宿泊施設等と連携したデータ収集・分析事業」などが予算化されており、新しい観光需要を喚起する取り組みが注目できる。

 なかには、総務省の予算案にある「自治体 DX(行政手続オンライン化、AI・RPA の活用、自治体情報システム標準化等) の推進」など、自治体のDX化を支援する項目も目に付く。新型コロナ禍による特別定額給付金の支給で対応に遅れが出た自治体もあったことから行政のデジタル化は喫緊の課題。全国のスマートシティ計画のなかには、行政手続きの「オンライン化」「AIやRPAの活用」を同時に進めようとするものも多い。予算案からも、21年度に行政のデジタル化が加速することがうかがえる。

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スマートシティ・Society 5.0実現に向けた中長期の取り組み(資料:内閣府)