2030年までに「まるごと未来都市」の実現を目指す「スーパーシティ構想」。公募開始から1年以上の検討を経て、2022年3月にようやくつくば市(茨城県)と大阪市(大阪府)の2地区がスーパーシティの特区に内定した。選定基準は計画の「熟度」。評価されたポイントや両地区が目指すサービスについて解説する。次回の後編では、新設の「デジタル田園健康特区(仮称)」を取り上げる。こちらは同調査会で吉備中央町(岡山県)、茅野市(長野県)、加賀市(石川県)の3地区の指定が内定している。

 スーパーシティは、地域ごとに限定的、かつ大胆な規制緩和を実施しながら住民目線でのデジタル実装に取り組み、地域の課題解決や活性化を目指す構想だ。2022年3月4日、「第3回スーパーシティ型国家戦略特別区域の区域指定に関する専門調査会」が開催され、つくば市の「つくばスーパーサイエンスシティ構想」と、大阪市(提案は大阪府との共同)の「大阪府・大阪市スーパーシティ構想」が特区に内定した(関連記事)

 「まるごと未来都市」を標榜するスーパーシティ構想は、まずはつくば市と大阪市からスタートする。他の自治体の構想も「熟度」が高まれば新たに指定される可能性がある。今回決まった二つの地区が一定の成果を出すことができれば、今後のスーパーシティ候補地の取り組みにも弾みがつくことになる。今回は、この2自治体が評価されたポイントや両地区が目指すサービスについて解説する。

規制改革と先端的サービスの「熟度」を重視

 特区内定までの大まかな流れをおさらいすると、2020年12月から21年4月半ばにかけて公募が実施され、31自治体から提案が集まった。ただ、期待されたような大規模な規制改革が見られないことから、21年8月6日開催の第1回専門調査会で再提案を求めることが決まった。同年10月15日を期限に28自治体から再提案が集まり、改めて選定が行われた。

 最終選定で重視されたのは、各自治体の提案の「熟度」だ。第3回専門調査会で公表された資料(第2回専門調査会議事要旨)によると、「提案内容の『熟度』の高い自治体から、順次、専門調査会及び国家戦略特区諮問会議に付議し、区域指定について具体的に検討する。今回の指定から漏れた場合であっても、落選ではなく、提案の『熟度』が高まり次第、指定についてあらためて検討する」との方針が示されたことが分かる。

 判断基準となった熟度とはなにか。熟度については、1)規制改革、2)先端的サービス(事業)の2点の状況を重視している。それぞれ、具体的には次のような条件を設定している。

●規制改革
  • 規制所管省庁と概ね合意した項目が複数あり、なおかつ議論が可能な具体的な項目が相当数あること
  • 規制所管省庁と今後議論が可能な程度に具体化した項目が相当数あること
●先端的サービス(事業)
  • 概ね5分野以上について、想定している事業者が参画しているなど事業スキームが具体化されていること
  • 事業者などから規制改革による事業の実現に向けた強いコミットメントがあること

 そこで、つくば市と大阪市(提案は大阪府との共同)計画の概要と、各省との合意内容について、あらためて以下にまとめてみた。複数の項目で各省と合意が進んでいることが分かる。

つくば市と大阪府・大阪市の規制改革の提案の具体化状況(内閣府資料「スーパーシティ区域選定の進め方」(令和4年2月9日)より抜粋して作成)
つくば市と大阪府・大阪市の規制改革の提案の具体化状況(内閣府資料「スーパーシティ区域選定の進め方」(令和4年2月9日)より抜粋して作成)
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 次ページ以降、スーパーシティ特区に内定したつくば市と大阪市の計画概要を見てみよう。

つくば市はインターネット投票の導入を目指す

 熟度の高さ以外で両者に共通するのは、計画内に「グリーンフィールド」(既存市街地ではない未開発地域)を抱えていることだ。

 つくば市の「つくばスーパーサイエンスシティ構想」は、市内に数多くの研究機関を抱える立地特性を生かして、「科学」をキーワードに先進的なまちづくりを進める。「移動・物流」「行政」「医療・健康」「防災・インフラ・防犯」などの分野で、ロボットによる荷物の自動配送やインターネット投票、データ連携による医療サービスなど様々な先端的なサービスに取り組む。首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスのつくば駅前に広がる国家公務員宿舎跡地をグリーンフィールドとして、ここでの実証実験の結果を既存市街地に実装していく考えだ。

「つくばスーパーサイエンスシティ構想」の概要(資料:つくば市)
「つくばスーパーサイエンスシティ構想」の概要(資料:つくば市)
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「つくばスーパーサイエンスシティ構想」が実現を目指すサービス(資料:つくば市)
「つくばスーパーサイエンスシティ構想」が実現を目指すサービス(資料:つくば市)
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 第3回専門調査会にはつくば市の五十嵐立青市長が出席し、主な規制改革の項目として、「インターネット投票の導入」「パーソナルモビリティの最高速度の緩和」「マイナンバーの利用拡大」について説明した。

 インターネット投票については、2021年に市内の中高一貫校2校の生徒会選挙で主権者教育を兼ねて実証実験を行っており、2年後の市長市議会議員選挙での導入を検討している。さらに、「ロボットの歩道通行に係る道路交通法」「補助金等交付財産の目的外使用手続」「外国人起業家の在留資格」「研究開発施設設備に係る国立大学の土地等の貸付」などの規制緩和についても、各省庁とおおむね合意を得ているという。

空飛ぶクルマの実装目指す大阪市

 一方、大阪市のスーパーシティ構想は「移動」「物流」「医療」「まちづくり」「防災」といった分野において、「自動運転バスによる貨客混載運送」や「データとAI分析を活用した健康プログラム」「空飛ぶクルマでの観光周遊」などの新たなサービスの社会実装を進める。梅田駅前に位置する「うめきた2期地区」、2025年開催の大阪・関西万博の会場となる「夢洲地区」というグリーンフィールドを生かしながら、先端的なサービスを展開する予定だ。

「大阪府・大阪市スーパーシティ構想」の概要(資料:大阪府・大阪市)
「大阪府・大阪市スーパーシティ構想」の概要(資料:大阪府・大阪市)
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「空飛ぶクルマ」の実現に向けたロードマップ(資料:大阪府・大阪市)
「空飛ぶクルマ」の実現に向けたロードマップ(資料:大阪府・大阪市)
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 専門調査会に出席した大阪府の吉村洋文知事は、必ず実現したいサービスとして「空飛ぶクルマ」「国際医療」などを掲げた。特に、次世代モビリティとして期待が高まる「空飛ぶクルマ」の社会実装は大阪市のスーパーシティの目玉事業の1つだ。2025年の大阪・関西万博での運航を目指し、3月23日にロードマップを公表した(関連記事)。また、すでに2025年日本国際博覧会協会が事業実施者を募集しており、2023年度末までにすべての運行事業者を決定する見込みとなっている。

 「国際医療」では遠隔での診療・投薬をはじめ、AIやロボットによる診療支援、再生医療など、先端技術による医療サービスが国籍や場所を問わず日常的に享受できる環境を整備する。インバウンド需要として、訪日外国人客の医療サービスの利用も見込む。2026年以降には、データ連携基盤によって健康・医療・介護など複数分野のサービスをつないで高度化を図る「次世代PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)」の展開も見据えている。

 このほか、「AIによる気象予測」「ローカル5Gの広域利用の先行モデル実施」「大阪万博関連の仮設建築物等」でも、各省とおおむね規制緩和についての合意ができている。

 後編では、スーパーシティに並んで、デジタル田園都市国家構想を先導する取り組みとして新設される「デジタル田園健康特区(仮称)」のポイントと、特区に内定している吉備中央町(岡山県)、茅野市(長野県)、加賀市(石川県)の取り組みのポイントについて解説する。

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