AIやビッグデータなど先端技術を活用して地域課題の解決や生活全般の利便性向上を図り、2030年までに「まるごと未来都市」の実現を目指す「スーパーシティ構想」。その皮切りとして内閣府が2021年4月16日を期限に実施した公募には、北は北海道、南は沖縄まで31の自治体から事業計画の提案が集まった(関連記事)。将来的なまちづくりを見据えて、地域のニーズに沿ったさまざまな取り組みが盛り込まれている。各自治体の計画を眺めると、ここへきて注目度を増している「カーボンニュートラル」「ウェルビーイング」といったテーマに取り込んだものが目に付く。また、近年、相次いでいる大規模災害を受けて「レジリエンス」(復元力)を高める取り組みが見られるほか、サービスを円滑に提供するために「住民ID」の充実を図る計画も多い。この4つのキーワードを軸に、主な計画案を見てみよう。

 スーパーシティでは、都市OSと呼ばれるデータ連携基盤を構築し、「移動」「物流」「支払い」「行政」「医療・介護」「教育」「エネルギー・水」「環境・ごみ」「防災」「防犯・安全」といった複数の領域を横断的に連携させた新たなサービスを提供していく。

スーパーシティ内で展開するサービスのイメージ(資料:内閣府「スーパーシティ構想について」)
スーパーシティ応募31団体。複数団体による提案の場合は1団体とカウントした(資料:内閣府)
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 これを一挙に推し進めるため、個別の先端技術の実証にとどまらず、地域ごとに限定的な規制緩和を実施しながら住民目線での社会実装に挑戦する自治体を国が支援する。キャッシュレス化や遠隔医療、自動運転、ドローン配送、行政DXなどのサービスや技術は、あと10年足らずで未来都市での住民の暮らしの中で実現し、地域の課題解決や活性化の進展も期待できる。

 今回スーパーシティに応募した31の提案を見ると、今後の未来都市を占ううえで様々なキーワードが見られる。ここでは、複数の提案がテーマとして掲げている「カーボンニュートラル」「ウェルビーイング」「レジリエンス」「住民ID」の4つのキーワードに着目して、スーパーシティ候補都市の傾向を見てみよう。

キーワード1:カーボンニュートラル

 政府が掲げる脱炭素社会の実現に向けて様々な取り組みが進められている。環境省では、2050年までにCO2の排出量を実質ゼロにすることを目指す自治体を「ゼロカーボンシティ」と位置づけ、広く参画を呼びかけている。2021年6月14日時点で408自治体(40都道府県、243市、7特別区、98町、20村)が参画を表明している。

 スーパーシティの計画においても「カーボンニュートラル」「ゼロカーボン」「カーボンフリー」といったキーワードで脱炭素化に取り組む動きが目立つ。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を、森林による吸収量など別の削減策で相殺して実質ゼロにする手法だ。

 例えば三重県多気町など6町が共同で進める「三重広域連携スーパーシティ構想」では、バイオマス、風力、太陽光、バイオガスなどの複数の再生エネルギーによる発電・供給体制を整備し、段階的に公共施設や家庭での利用を拡大していく計画を打ち出している。再生可能エネルギーのインフラ整備とともに、発電した電気をグリーンスローモビリティや電気自動車(EV)、防災用蓄電池、公共施設などに活用して地産地消を目指す事業は多くの自治体で取り組まれている。

三重広域連携スーパーシティ構想のエネルギー分野の取り組み概要(資料:三重県多気町「スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する提案書」)

 長野県松本市もまた再生可能エネルギーの導入・普及を進める。同市は全国でも珍しく、発電・供給する山間部とエネルギー需要の高い市街地で電力の周波数がそれぞれ50Hz、60Hzと異なる環境にある。そこで電気バスや蓄電池を活用した周波数変換装置で電力を融通する考えを持っている。バーチャルパワープラント(VPP:仮想発電所)*も導入し、広く売電できるようにする計画もある。

*VPP:電力の需給管理を行うネットワークシステムを活用して、点在する再生エネルギー発電、蓄電池、燃料電池などをまとめて制御し、1つの発電所のように機能させる仕組み

異周波数エリア間の電力融通のイメージ(資料:松本市)

 愛知県と常滑市が共同で中部国際空港島において進める「あいち・とこなめスーパーシティ構想」では、2019年に島内で開所した水素ステーションを核に、水素エネルギーの利活用モデルの構築を目指す。FC(燃料電池)モビリティやEV、蓄電池での水素利用とともに、最適制御を可能にするエネルギー管理システムを導入し、有事の際に最大1時間は自立稼働できるようにする。

愛知県と常滑市が共同で進める「あいち・とこなめスーパーシティ構想」で提供されるサービスの概要(資料:愛知県、常滑市)

 カーボンニュートラルに関する取り組みは、福島県会津若松市、茨城県つくば市、神奈川県鎌倉市、愛知県幸田町、和歌山県・すさみ町共同、広島県東広島市などの計画でも構想に挙がっている。和歌山県・すさみ町共同の「南紀熊野スーパーシティ構想」はワーケーションや観光を主要テーマに掲げる計画で、FCV(燃料電池自動車)、電気自動車のシェアなどによる「観光の脱炭素化」にも取り組む考えだ。

南紀熊野スーパーシティ構想の脱炭素化の取り組み(資料:和歌山県)