2021年9月8日、オンラインシンポジウム「身近な所から始める市民協働とデジタルスマートシティ ~My City Reportの取組を通じて~」(主催:東京大学空間情報科学研究センター、東京大学デジタル空間社会連携研究機構)が開催された。公園や道路の損傷やごみの不法投棄など、まちで見つけた問題点を市民がアプリを通じて投稿することで、簡単に自治体と情報共有ができる市民協働プラットフォーム「My City Report(MCR)」の取り組みを中心に、「デジタルスマートシティにおける行政と市民の役割」について、活発な議論が交わされた。特にパネルディスカッションで提出された論点や議論の内容は、スマートシティにおける市民協働の在り方について考えるきっかけとなるだろう。

パネルディスカッション
「デジタルスマートシティにおける行政と市民の役割」登壇者


宮坂 学氏(東京都副知事)
関 治之氏(一般社団法人Code for Japan代表理事)
関本 義秀氏(東京大学空間情報科学研究センター教授)
瀬戸 寿一氏(駒澤大学文学部 准教授)
齋藤 拓麻氏(東京都建設局道路管理部 保全課通信技術担当課長代理)
吉原 睦氏(千葉市市民局市民自治推進部広報広聴課)
堀田 諭氏(尼崎市都市整備局土木部道路維持担当課長)
瀬崎 好聡氏(大津市建設部道路・河川管理課管理係主任)
前田 紘弥氏(UrbanX Technologies代表取締役社長、東京大学生産技術研究所特任研究員)

<モデレーター>庄司 昌彦氏(武蔵大学社会学部教授)

 スマートシティでの新しいサービスの実装には、市民との協働が重要となる。協働には様々な形がある。市民は、行動履歴や個人情報などデータ提供元となることもあれば、シビックテック(市民自らがITなどのテクノロジーを活用しつつ身近な困りごとや地域社会の課題解決に取り組む主体的な活動)の推進者にもなる。

 「My City Report(MCR)*」の取り組みも、スマートシティにおける「市民協働」の1つの形といえる。MCRは、公園や道路の損傷やごみの不法投棄など、まちで見つけた問題点を市民がアプリを通じて投稿することで、いつでも簡単に自治体と情報共有ができる市民協働プラットフォームである。

(資料提供:駒澤大学文学部 瀬戸 寿一准教授)
(資料提供:駒澤大学文学部 瀬戸 寿一准教授)

「My City Report(MCR)」は、スマートフォンアプリを利用した自治体と市民をつなぐサービスで、市民向けの「MCR for citizens」と道路管理者向けの「MCR for road managers」で構成される。2019年度に発足したMCRコンソーシアム(事業主体:東京大学生産技術研究所、ジオリパブリックジャパン、アーバンエックステクノロジーズ、社会基盤情報流通推進協議会)を母体として参加自治体の会費制による自主財源で運営されており、2021年6月時点で全国14の自治体で導入されている。

参考資料:「MCRコンソーシアムにおけるMy City Reportの活動」(提供:駒澤大学文学部 瀬戸 寿一准教授)

 MCRは、市民の協力で行政事務を効率化するだけでなく、行政と市民のコミュニケーションが進むことで市民の中に「まちづくりに参加する」当事者意識を醸成することも可能となる。今回の産・官・学のキーパーソンが集まったパネルディスカッションでは、MCRの取り組みを軸に、主に次の三つのテーマで議論が進んだ。「1.どのようなアプローチで市民に働きかけるか」「2.参画する市民のモチベーションをいかに維持するか」「3.サービスの展開エリアをいかに広げるか」である。スマートシティにおけるこれからの市民協働を考えていくうえで、多くの気づきを得られる議論が展開されていった。

(資料提供:駒澤大学文学部 瀬戸 寿一准教授)
(資料提供:駒澤大学文学部 瀬戸 寿一准教授)

 「MCR for citizens」は、公園や道路の損傷やごみの不法投棄など、まちで見つけた問題点を市民がアプリを通じていつでも簡単に自治体と共有できる投稿サービスだ。画像、位置情報なども送れるため、行政DXにもつながり、自治体職員の業務効率化にも役立つという。一方の「MCR for road managers」は、道路損傷検出サービスで、アプリを搭載したスマートフォンやドライブレコーダーを取り付けた車を走らせると、AIによって自動で道路の損傷箇所が検出され、画像と位置情報がサーバーに自動アップロードされる。蓄積したデータをもとに専用のダッシュボードで道路状態の評価や更新費用の予測が可能だ。