暮らすまちによって要介護リスクは2.6倍に

 要介護リスク者が多いまちがある。JAGES(日本老年学的評価研究)は2019年度に64市町村と共同し、市町村間比較をした。その結果、例えば「暮らすまちによってフレイル該当者(要介護リスク者)の割合が2.6倍も多いまちがある」ことが分かってきた(図1)。

 フレイルとは、要介護の前段階で可逆性がある段階である。フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント*1によれば、「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態」(同学会ホームページより)である。その早期発見と対応が重要とされ、2020年度から高齢者医療広域連合が市町村と連携して、フレイル対策の保健事業が充実されている。

 フレイル該当者の割合が高いまちは、高齢化が進み75歳以上の後期高齢者が多い地域に多いのではないかとの疑問が湧くが、このデータは前期高齢者(65~74歳)のみを対象とした集計結果なので、高齢化の違いのせいではない。

図1 市町村別にみたフレイル該当割合(出典:JAGES HEART 2019)
図1 市町村別にみたフレイル該当割合(出典:JAGES HEART 2019)
[画像のクリックで拡大表示]

 これまで、要介護リスクや予防に関する研究の多くは、運動・身体活動、栄養、社会参加など、個人のライフスタイルに着目した研究が大半であった。しかし、これほどの市町村格差があるのであれば、地域・環境要因の違いによるのではないか。そう考えて取り組んで来た研究の一端を紹介しよう。

健康なまちの条件とは

 図1に示したような市町村格差が生まれる理由は何だろう。それが解明でき、その要因が多くのまちに導入可能なものであれば、暮らしているだけで要介護リスクを持つ人が少なく、健康長寿なまちづくりに応用できる。

 まずは、フレイル該当者割合と相関関係を示す要因を探索した。その結果の一例を図2に示す。調査対象は、要介護認定を受けていない64市町村の高齢者約19万人弱である。集計単位は市町村で、点は64市町村を表す。縦軸はフレイル該当者割合である。横軸はスポーツや趣味グループへの参加頻度を尋ね、いずれかに年数回以上参加している者の割合を示したものである。市町村によって3~6割と大きく異なることが分かる。そして、これらのグループに参加している人が多い市町村ほど、フレイル該当者割合が少ないという負の相関を認めている(r= -0.7192)。

図2 市町村別にみた社会参加とフレイル該当割合(出典:JAGES HEART 2019)
図2 市町村別にみた社会参加とフレイル該当割合(出典:JAGES HEART 2019)
[画像のクリックで拡大表示]

 ほかにも、表1に示したように、様々な社会参加や歩行時間・交流・社会的サポートが多いとフレイルは少ない。これらが重要と分かれば、社会参加や歩行時間・交流・社会的サポートが多いまちづくりを進めれば、フレイルが少ないまちができるかもしれない。

表1 様々な変数とフレイルの相関係数 (出典:JAGES HEART 2019)
表1 様々な変数とフレイルの相関係数 (出典:JAGES HEART 2019)
[画像のクリックで拡大表示]