「プロボノ」に着目して支援を受けられる枠組みを構築

 人づきあいが少ないとされる都市部でも、はたして健康なまちづくりは可能だろうか。それを検証するために、東京都に隣接する人口約50万人の千葉県松戸市で、2016年度から産官学民が協働して高齢者の社会参加を促すまちづくりとその介護予防の効果評価を行ってきた。この「都市型介護予防モデル『松戸プロジェクト』」の取り組みと成果を紹介する。

 都市部は人口が多く、行政と住民ボランティアだけでは、高齢者の社会参加を促すための「通いの場」を十分に運営できない可能性がある。松戸プロジェクトの特徴は、都市部ならではの豊富な資源を生かして多部門―企業、行政、大学、NPO、住民ボランティアなど―が連携し、地域活動の直接的な担い手を間接支援してきたことにある*1

 例えば、松戸プロジェクトでは、企業退職者や医療専門職などの職業スキルや専門知識を持つボランティアである「プロボノ」に着目し、その支援を受けられる枠組みを構築した。「通いの場」の運営支援や代表者向け交流会の開催、ニュースレターや特設ウェブサイトによる広報など、プロボノのスキルを生かした多くの活動支援が行われている。

松戸プロジェクトの特設ウェブサイト(https://www.matsudo-project.com/)
松戸プロジェクトの特設ウェブサイト(https://www.matsudo-project.com/)

 企業・事業者との連携にも積極的に取り組んだ。説明会を設けて協賛を募った結果、例えば生活協同組合コープみらいによる「防災・食育」無料体験会や、一般社団法人チーム医療フォーラムによる啓発活動「メディカル・ウォーキング(医歩)のすすめ」などの共同企画を展開した。

高齢者の社会参加が3ポイント増加

 松戸プロジェクトの多面的な取り組みにより、市内の「通いの場」と高齢者の社会参加は増えたのだろうか。それを明らかにするため、千葉大学および一般社団法人日本老年学的評価研究機構(JAGES)が評価を担った(図1)。

図1 松戸プロジェクトのロジックモデル(出典:松戸プロジェクト成果報告会の資料を基に筆者作成)
図1 松戸プロジェクトのロジックモデル(出典:松戸プロジェクト成果報告会の資料を基に筆者作成)
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 松戸市の「通いの場」である「元気応援くらぶ」は、2016年度から2019年度の3年間で22カ所から67カ所と約3倍に増えた。松戸市で社会参加(スポーツの会、趣味の会、ボランティア、経験伝達、学習・教養サークルのいずれかに月1回以上参加)する高齢者割合は、2016年度から2019年度の3年間で50.8%から53.8%と3.0ポイント増え、JAGESによる同じ調査に参加した18市町村の中で最も増えていた*2

社会参加で高齢者の要介護リスクが低下する

 次に、社会参加する高齢者で要介護リスクが低下したのかも検証した。その結果、元気応援くらぶ参加者では、地域組織活動に参加していない人と比べ、1年後に要介護リスク点数が3点以上増えた(3年以内に要介護認定を受ける確率が約8%高いことに相当)人が減っていた。特に女性では35%、後期高齢者では46%と統計学的にも有意に少ないことが明らかとなった(図2)*3

図2 松戸市「元気応援くらぶ」への参加で要介護リスクの上昇を4割抑制(出典:阿部紀之(千葉大学予防医学センター)JAGES Press Release No: 311-21-49)
図2 松戸市「元気応援くらぶ」への参加で要介護リスクの上昇を4割抑制(出典:阿部紀之(千葉大学予防医学センター)JAGES Press Release No: 311-21-49)
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 このことから、都市型のまちづくりでも「通いの場」と高齢者の社会参加が増え、社会参加する高齢者では要介護リスクが低下していたことが確認できた。