調査研究分野の施設整備はPFIに不向き

──人形博物館は、施設整備をデザインビルド(設計施工)にて行い、運営は市の直営です。PFIを採用する選択はなかったのでしょうか。

川田 博物館という施設自体の運営が、PFIや指定管理にはそぐわないと思います。博物館業務の根幹である「調査研究」は、やればやるほどコストがかかります。収益性を考えると民間事業者に運営をすべて任せるのは難しいでしょう。ちなみに2010年開業の大宮盆栽美術館も私が担当したのですが、こちらの施設整備は通常の発注方式(設計者と施工者をそれぞれ入札で選定)で手がけました。

──運営面では、例えば調査研究部門に限って直営とし、それ以外を民間が手がけるという選択肢はありませんか。

川田 公益財団法人に運営を任せるやり方はあるでしょう。横浜市歴史博物館や金沢21世紀美術館などは、いずれも財団法人が運営しています。たださいたま市には、そこまで運営力のある財団法人が、まだありません。

──新たにオープンした新大宮図書館はPFIで進めています(大宮区役所新庁舎整備事業)。さいたま市のPFI第1号である複合施設、プラザノース(後述)にも図書館が入っていますね。図書館は、「調査研究分野」とはまた別の性質の事業ということでしょうか。

川田 博物館の調査研究業務はレファレンスを中心とした図書館のものとは性質が異なります。一概には言えませんが地区図書館における調査研究業務は、博物館ほど費用や労力はかからないのではと思っています。それに新図書館は新区役所と一体の施設で、延べ床面積は約2万4000m2、プラザノースも約1万9845m2と規模の大きな施設です。

  一方の人形博物館は、延べ床面積2000m2程度で、その中に収蔵庫も設けなければなりませんし、空調も恒温恒湿のものが必要になる。建設コストを削減しようにも、選択肢が限られますし、この面積の中に全ての機能を収めるにはもう職人芸の世界です。建設の際にある程度スケールメリットが出る大規模な施設でないと、PFIは難しいと思います。

(写真:編集部)
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──完成後の運営を工夫して、施設の収益力を高めることで、そうしたデメリットを補えませんか。

川田 少なくとも規模の小さな施設では難しいでしょう。それに、そもそも人形博物館は、「人形のまち」という歴史を持った岩槻の、地域アイデンティを形成するツールと位置付けています。収益性を重視したアミューズメント施設のようなものにする考えはありません。ここだけで収益を上げるのではなく、ここを一つのエンジンとして、地域のみなさんと協力しながら、まち全体のブランド化を図っていこうと考えています。

──地域との連携は、どのように進めてらっしゃいますか。

川田 岩槻地区では、地域の人たちが中心になって、人形にちなんだイベントが、いろいろと行われています。「NPO法人岩槻・人形文化サポーターズ」や商工会議所などの若手メンバーで組織する「岩槻まちの戦略会議」などのグループも生まれており、市としてもこれらのグループと連携・協力しながら、岩槻地区の人形文化をPRする活動に取り組んでいます。

 一方で、中心部に空き店舗が増えたり、歴史的な町並みが失われつつあったりするなど、地域社会も様々な課題を抱えています。これらを解決するために、民間のまちづくり会社が主導するリノベーション事業を、岩槻地区でも導入する予定です。まずはリノベーションスクールを開催して、参加者にアイデアを出してもらい、そこで生まれた事業計画を不動産オーナーに提案して、事業化を目指していきます。

(資料:さいたま市)
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