公益性を重視する行政に対し、民間企業は収益性の確保が欠かせない。PPP/PFI事業を進めていくうえでは、こうした両者の行動原理の違いが、大きな妨げとなるケースもしばしば見受けられる。市庁舎の整備事業などに携わった内谷靖氏は、こうした問題を解決するために、行政が民間の行動原理を理解することが重要だと話す。

千葉市 若葉保健福祉センター 内谷靖氏 (写真:編集部)

――内谷さんは千葉市でどのようなPPP/PFI事業とのかかわりを持ってきたのでしょうか。

内谷 実務としては、1日1万食の供給力を持つ学校給食センターのPFI事業で3年、東日本大震災をきっかけに始まった千葉市の本庁舎整備に7年携わりました。

──携わった事業の違いは、どのようなものでしょうか。

内谷 PFIで整備する給食センターは、市としても2件目で、PFIで整備する方向も決まっていたので、比較的スムースに進みました。一方、新庁舎整備事業は、職員に経験者もいませんし、他都市でも事例も少ないので、手探り状態で始めなければならなかったところが、非常に難しいところでした。

合意形成に3年かけた市庁舎整備

──内谷さんは、新庁舎の建て替え事業に関しては、どこまで関わったのでしょうか?

内谷 本庁舎をどう整備していくのかという合意形成で3年、基本構想から基本設計を終え、事業手法の選定と事業実施の予算を議会に承認していただくまでの4年、計7年間携わりました。

 まずは、市役所本庁舎のあり方を3年間かけて比較検討しました。そもそも新庁舎を整備すべきなのか、改修・増築でよいのではないか、現在の場所で新築してよいのか、なぜ新庁舎が必要なのかといった議論から始め、その後、新庁舎を整備する方向で検討を進めることになりました。

 ただ、実際に費用がいくらかかるのかはわからないので、基本設計を行ってある程度精度の高い費用を算出し、財源や事業手法の検討と併せて、新庁舎整備の最終判断をすることになりました。これに4年かけています。

 施設整備を伴うプロジェクトでは、通常、最初の基本構想に入る段階で、その施設整備を行う方針決定をしますが、千葉市の場合は基本構想の前ではなく、基本設計まで終えて、事業手法も踏まえて財政的な影響を見極めてから、新庁舎を整備するかどうかを判断することとしました。

千葉市新庁舎の完成予想(資料:千葉市)
[施設概要]
名称 千葉市新庁舎
建設地 千葉市中央区千葉港1-1
規模 地上11階、延べ床面積 49,399㎡
構造 鉄骨造(基礎免震構造)
供用開始 2023年度予定

──最初は建て替えが前提ではなかった。

内谷 そうです。市役所の本庁舎は、通常時は市政運営の拠点として、非常時には総合防災拠点として機能しなければならない重要施設です。

 その機能を果たすために、現在の庁舎にどのような課題があり、それに対してどのような対応策が取れるのか、さらに、その対応策をとったときのメリット・デメリットはどのようなものがあるのかなどを、きちんと比較検討して整理しなくてはなりません。

 その上で、行政内部をはじめ議会や市民の方々へ説明し、「なぜその対応策をとるのか」という合意形成をきちんとしておかないと、PFIとかPPP以前の問題で、そもそもの事業のスタートが切れません。

 耐震補強や大規模改修する場合はもちろん、増築・新築する場合は、この場所に千葉市の本庁舎が立地し続けることになるわけですので、まずは「ここに立地し続ける意義は何なのか」について検討を始めました。

 そこでまず、本庁舎周辺にある公共施設や企業などをプロットした地図を作ったのです。ここには様々なインフラ関連の企業の支社や報道機関、医療関係の機関、さらには金融機関の本店など、市民・県民の生活を支える、実に多くの企業・団体が載っています。遠浅の海が埋め立てられ、50年前にいまの市庁舎が建ったときには、周りに何もなかった状態であったものが、気が付くとこれだけの立地環境となっていったことがわかります。

千葉市本庁舎周辺の公共施設や企業などをプロットした地図(資料:千葉市)
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 千葉市は東京湾口から見ると最奥に位置し、その埠頭には耐震強化岸壁が整備されているので、津波被害を受ける可能性は低い。4haある本庁舎敷地と隣接する3haの公園も合わせると、ヘリが着陸できる広い土地もあるので、災害時には海運と空運は確保できるポテンシャルがある。