SDGs達成に向けた取り組みを進める自治体が徐々に増えてきている。そのためには、むやみに多くの目標を立てるのではなく、各地域の特性を踏まえた社会課題を見極めることが肝要だ。そこで、当連載ではSDGsに関する特徴的な取り組みを進める各自治体で、現場に携わる職員の方々を訪ね、SDGs達成に向けた工夫やプロセスなどを紹介していく。

第2回は、条例に基づいて独自に定めたまちづくりのルール「美の基準」を起点としてSDGsへの取り組みをスタートさせた神奈川県真鶴町を取り上げる。目標をどう具現化していくのか、アプローチの方法について担当者に聞いた。

真鶴町役場政策推進課長補佐 卜部直也氏(写真:真鶴町)

――2021年3月に策定された「第5次真鶴町総合計画」では、各施策分野にSDGsの17のゴールが紐付けられていますね。

卜部 2019年策定の長期的なまちづくり指針である「真鶴町グランドデザイン」でSDGsの視点を取り入れ、町が具体的にSDGsに取り組んでいくことを示したのが「第5次総合計画」です。

 そして、その出発点となるのが、真鶴町が25年以上にわたり大切にしてきた「美の基準」です(1994年施行)。美の基準は、建物外観の美しさではなく、生活景の美しさ―例えば漁師が網を繕ったり、小さな商店のベンチで和む人だまりの風景など人々の営みの美しさを大切にしています。この考え方は、SDGsが目標として掲げている17の目標のうち、「3.すべての人に健康と福祉を」や「8.働きがいも経済成長も」「11.住み続けられるまちづくりを」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」など多くの要素を内包しています。

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真鶴町第5次総合計画。各分野の施策のページに関連するSDGsのゴールが示されている(資料:真鶴町)

「美の基準」をSDGsの視点とつなげていく

――美の基準とは、具体的にはどのようなものですか。

卜部 「真鶴町まちづくり条例」(通称「美の条例」)のルールの一つです。美の条例は「土地の利用に関するルール」「美しさを導くルール」、そして開発を行う場合に行政や地元住民とどう話し合って問題を解決していくかを定めた「話し合いのルール」の3つから成ります。

 このうち2つ目の「美しさを導くルール」が、全国的に知られることになった真鶴町の「美の基準」です。「敷地の特徴を尊重する」「周囲や自然と調和する」「コミュニティを守り育てる」など8つの美の原則と、それを具現化する69のキーワードから成るデザインコードを有しています。

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真鶴町の「美の基準ルールブック」。キーワードのひとつ「静かな背戸」。このページは静かに散策できる背戸道の要素や特徴を示している。自然の生態系を保全し、活きづくような演出が求められている(写真:シティラボ東京)
「美の基準」をモチーフに建設された公共施設、「コミュニティ真鶴」の様子。住民の方々がサークルやまちづくりに関する活動などで活用している(写真:真鶴町)
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――美の基準はSDGsの目指すゴールのいくつかを内包しているとのことですが、既によく知られた美の基準というゴールがある中で、なぜ総合計画にあえて「SDGs」という言葉や視点を取り入れたのでしょうか。

卜部 美の基準は、時間をかけて都市計画や建築のルールを超えた真鶴町のアイデンティティになってきています。一方で世界的な潮流としてSDGsへの対応は不可欠となっており、真鶴町において持続可能な地域をつくっていく上で基盤となる双方の視点をつなげて考えていくことは、地域にとっても住民にとってもプラスになると考えています。