紙オムツのリサイクルに向け、官民で実証実験

――大崎町SDGs推進協議会の現在の活動状況について教えてください。

齊藤 今回、協議会では「OSAKINIプロジェクト」を立ち上げ、二つのテーマで協働する企業や団体、エリアの募集をかけています。まず、大崎町の取り組みをより循環型の仕組みにアップデートする企業や団体の募集。もう一つは、「大崎リサイクルシステム」を実際に取り入れてくださる自治体、エリアの募集です。

 前者では様々な企業にこちらからも話を持ちかけている段階です。以前から具体的に話が進んでいるものとしては、ユニ・チャームと協働している使用済み紙オムツから紙オムツ製品への水平リサイクルに関する研究があります。

 実は現在、埋立ごみの3分の1を占めているのが紙オムツです。焼却炉のない大崎町では、長年の課題となっていました。そこで、2016年から隣町の志布志市と大崎町、そおリサイクルセンター、ユニ・チャームの4者で、紙オムツのリサイクルに向け実証実験を始めました。紙オムツの水平リサイクルが実現すれば、世界初の取り組みです。

――ユニ・チャームとはどういう経緯で連携をされたのですか。

松元 日本の多くの自治体は焼却炉を持っているので、紙オムツのごみが注目されにくいのですが、海外では焼却炉が無いところも多く、そういった場所では、ごみとして埋め立てられています。「環境への負荷が大きいのでメーカーの責任としてリサイクルに取り組むべきではないか」と、ユニ・チャームに話をし、理解をいただき連携につながっています。

――後者の「大崎リサイクルシステム」を他の自治体にも広げていく話については?

松元 全国に焼却炉は約1200基あり、その3分の1は更新の時期を迎えています。また、焼却炉には焼却灰が残ります。焼却灰を処理するための最終処分場の寿命も、全国平均で20年を切ると言われています。そこで、焼却炉の更新時期を迎えている自治体に「大崎リサイクルシステム」の導入を提案しているところです。例えば、生ごみや草木は含水量が多く燃えにくいため、プラスチックなど石油製品と一緒に燃やしている現状があります。けれど、生ごみや草木をあらかじめ取り除き堆肥化すれば、燃やすごみも減り、埋め立てる焼却灰も削減できます。ぜひ「大崎リサイクルシステム」をもっと他の自治体にも広げていきたいですね。

――「大崎リサイクルシステム」は海外でも需要がありそうな気がします。

松元 これまでにもJICA事業の一環でインドネシアのごみ処理に関して「大崎リサイクルシステム」のノウハウを伝授してきました。また日本は今、ごみの焼却発電システムを海外に輸出する動きがあるのですが、その際にソフトとして「大崎リサイクルシステム」をセットで提供したらどうかと提案しています。資源化できるものは可能な限り分別し、残りを焼却して発電に使う。日本の焼却炉の数は実に世界の3分の2を占めていると言われています。焼却炉という高コストな廃棄物処理システムを維持するためには多額の税金をつぎ込む必要があることを日本は経験しています。資源循環型の廃棄処理システムの構築を広げていくべきと私は考えています。

インドネシアでのごみ処理事業開始当時の市民向け現地モデル地区説明会の様子。大崎町から派遣した職員が説明を行った(写真:大崎町)
インドネシアでのごみ処理事業開始当時の市民向け現地モデル地区説明会の様子。大崎町から派遣した職員が説明を行った(写真:大崎町)
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――大崎町SDGs推進協議会では企業版ふるさと納税の仕組みも活用しているそうですね。

齊藤 2019年にSDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業に採択されて、大崎町のSDGs事業推進に対して国から予算が出ました。検討した結果、人材派遣型の「企業版ふるさと納税」に着目し、大崎町のSDGs事業の中心に据えてやっていこうと考えました。人材派遣型とは、寄付した企業が対象事業に対し人材も派遣して事業を一緒に支援する仕組みです。

 また、21年8月にヤフーが「カーボンニュートラル」をテーマに寄付先自治体を公募していた企業版ふるさと納税に応募し、4600万円ほど寄付をいただきました。大崎町はこの寄付を活用し、「大崎システム」の国内外への展開などで脱炭素化の促進を目指していきます。ただし町としては寄付金に頼るだけでなく、あくまで人材派遣型などを活用することで企業の方々と一緒になって事業を進めていきたいと考えています。

(資料:内閣官房、内閣府)
(資料:内閣官房、内閣府)
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企業の投資をどれだけ呼び込めるかがカギ

――SDGsの取り組みについて、今後の展開、目指す方向性を伺います。

松元 個人的な思いとしては、大崎町を「リサイクル国際大学」のような存在にしていきたい。実際、今もリサイクルのことを学びにインドネシアの自治体の方、南米の国の方々が勉強に来ています。交流が広がることで、大崎町も持続可能な町になっていくと思います。

中村 町の職員として地方創生の担当だったときに、地方が抱える課題を解決する糸口がなかなか見つからず、悶々とした経験があります。SDGs推進協議会の担当になり、(合作の)齊藤さんと話を交わしながら「サーキュラーヴィレッジ」の構想の画が描けたとき、やっと私の目指す未来が見えたと思いました。資源の循環と共に、地域の中の仕事も、人と人とのつながりも生まれる。すると、町民が自分の町に誇りを持てるようになる。そうなれば、ずっと大崎町に住み続けたいと思うようになるでしょう。私はこの「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」の実現のために、尽力していきたいと考えています。

齊藤 大崎町SDGs推進協議会の役割は、行政と企業が連携してしっかりとビジネスに乗せることだと思っています。SDGs案件はこれから投資が一番動く分野。その投資をどう呼び込むか。すでに大手企業と連携した商品開発も目途が立ちつつあります。数年のうちに生活をさらに便利にする大崎発の製品が誕生するでしょう。期待で一杯です。また「海外の廃棄物処理に関連したビジネスを進めたい」という企業からの接触もあり、今後の展開が楽しみなところです。

 自治体が官民連携でどういう事業をつくっていくのか。そこにどれだけ投資を呼び込めるのか。大崎町がその一つのモデルになればと考えています。

大崎町(おおさきちょう)
大崎町(おおさきちょう)
鹿児島県東南部・大隅半島の東側に位置する。交通アクセスは鹿児島空港から九州自動車道・東九州自動車道を使用して車で約60分。人口1万2488人(2021年11月末時点)、面積100.67km2。資源リサイクルに力を入れており、2018年、第2回ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞を受賞。
シティラボ東京
シティラボ東京 持続可能な都市・社会づくりを行うためのサステナブルなまちづくりの活動拠点。東京・京橋でスペースを運営するとともに、都市課題解決の知見の集積やコミュニティの提供、プロジェクト創出の支援を行っている。URL: https://citylabtokyo.jp/