SDGs達成に向けた取り組みを進める自治体が徐々に増えてきている。そのためには、むやみに多くの目標を立てるのではなく、各地域の特性を踏まえた社会課題を見極めることが肝要だ。そこで、当連載ではSDGsに関する特徴的な取り組みを進める各自治体で、現場に携わる職員の方々を訪ね、SDGs達成に向けた工夫やプロセスなどを紹介していく。第3回は、資源ごみリサイクル率12年連続日本一を達成したことで一躍有名になった鹿児島県大崎町を取り上げる。SDGs未来都市にも選ばれた同町は、分別リサイクルをベースに「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」構想を打ち出し、大企業を巻き込んで社会問題を解決する新たな環境ビジネスの展開を進めている。その狙いと戦略について担当者、関係者に聞いた。

左から大崎町住民環境課課長補佐兼環境対策係長 松元昭二氏、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会 専務理事/合作代表取締役 齊藤智彦氏、大崎町役場企画調整課課長補佐/一般社団法人大崎町SDGs推進協議会事務局長 中村健児氏(写真:3点とも大崎町)
[画像のクリックで拡大表示]
左から大崎町住民環境課課長補佐兼環境対策係長 松元昭二氏、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会 専務理事/合作代表取締役 齊藤智彦氏、大崎町役場企画調整課課長補佐/一般社団法人大崎町SDGs推進協議会事務局長 中村健児氏(写真:3点とも大崎町)
[画像のクリックで拡大表示]
左から大崎町住民環境課課長補佐兼環境対策係長 松元昭二氏、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会 専務理事/合作代表取締役 齊藤智彦氏、大崎町役場企画調整課課長補佐/一般社団法人大崎町SDGs推進協議会事務局長 中村健児氏(写真:3点とも大崎町)
[画像のクリックで拡大表示]
左から大崎町住民環境課課長補佐兼環境対策係長 松元昭二氏、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会 専務理事/合作代表取締役 齊藤智彦氏、大崎町役場企画調整課課長補佐/一般社団法人大崎町SDGs推進協議会事務局長 中村健児氏(写真:3点とも大崎町)

――大崎町では、ごみを27品目に分別する「大崎リサイクルシステム」を確立しています。これはどのような経緯で生まれたのでしょうか。

松元 多くの自治体がごみ処理を焼却炉で行っていますが、大崎町は焼却炉を持たず、全てのごみを埋立処分してきました。ところが1998年の時点で、2004年まで使用する予定の埋立処分場がこのままでは数年早く満杯になることが判り、対応を迫られました。

 焼却炉の建設には約40億円かかります。毎年の維持管理費だけでも、従来のごみ処理全体にかかっていた経費を上回ってしまう。安易な焼却炉の建設は、次世代へ大きな負担を残すことになります。一方、埋立処分場を新たに建設する案も、臭いなどの問題があるだけに近隣住民の理解を得ることは難しかった。そこで、使用している埋立処分場の延命を図るため、ごみのリサイクルを徹底することにしたのです。

焼却炉のコスト負担と分別の必要性、450回の説明会で住民に理解

――当初から細かく分別していたのですか。

松元 埋立処分場へ行くごみの中で割合が多いものに着目し、住民の声を反映しながら徐々に分別品目を増やしていきました。27品目となった現在では、ごみの82.6%が資源化され、埋立処分場に行くごみは17.4%ほどです。埋立ごみの内訳は紙オムツや下着類、革製品、ゴム製品、ガラス製品などです。

大崎町のごみ分別表。分別のポイントがきめ細かく記入されている(資料:大崎町)
大崎町のごみ分別表。分別のポイントがきめ細かく記入されている(資料:大崎町)
[画像のクリックで拡大表示]

――分別には住民の協力が不可欠です。理解を得るためにどんな取り組みをしたのですか。

松元 焼却炉を建設するといくらかかり、毎年の負担額がどれくらい増えるかといった行政の課題を大崎町の住民組織である「衛生自治会」の役員の皆さんと共有したことで、住⺠の皆さんに⾃分たちの課題として受けとめてもらえたことが大きかったと思います。そして、3カ月の間に150の自治会で延べ450回ほど説明会を開催しました。

 また埋立処分場の現状や、分別の必要性を知っていただくため、役場の環境担当者が分別リサイクルのテクニックなどを紹介した冊子を年4回、衛生自治会*の予算で発行し、分別のルールなどについても周知を行いました。

* 衛生自治会:リサイクル事業を促進するほか、コミュニティ機能を高めるなど多様な役割を担う住民を主体とした組織。

――徹底した分別リサイクルによって埋立処分場の寿命はどれくらい延びたのでしょうか。

松元 現時点で、あと40年使える計算です。2021年度は、大幅にごみ処理経費を削減できました。1998年と比べて、埋め立てごみ量は約84%削減しました。

SDGs未来都市として「教育」も重視

――大崎町は2018年に「ジャパンSDGsアワード」を受賞、19年には「SDGs未来都市」に選定されます。ごみの分別リサイクルから、どのようにしてSDGsという大きな目標に移行していったのでしょうか。

松元 移行したと言うより、もともと大崎町でやってきたことがSDGsなのです。資源ごみの中間処理を担う「そおリサイクルセンター」ができたことで、雇用も生まれています。リサイクルをベースに、社会や経済の方面へ取り組みが広がっていったのです。

 資源ごみの売却益が町に入るようになったことで、その一部を活用して18年にはリサイクル未来創生奨学金制度も創設しました。大崎町の子どもたちの勉学を支援し、故郷の活性化を担う人材に成長してもらおうという試みです。奨学生が大崎町に戻って10年間住み続けると、償還額と同額が補てんされる仕組みです。環境だけでなく、そうした経済、社会への取り組みをSDGsの文脈でまとめ、「ジャパンSDGsアワード」に応募したところ、内閣官房長官賞をいただきました。

曽於市、志布志市、大崎町の資源ごみを集積する「そおリサイクルセンター」(写真:志鎌康平)
曽於市、志布志市、大崎町の資源ごみを集積する「そおリサイクルセンター」(写真:志鎌康平)
[画像のクリックで拡大表示]
草木チップと生ごみを1:4の割合で混ぜる一次発酵の混合場。生ごみ・草木等は堆肥として製品化される(写真:志鎌康平)
草木チップと生ごみを1:4の割合で混ぜる一次発酵の混合場。生ごみ・草木等は堆肥として製品化される(写真:志鎌康平)
[画像のクリックで拡大表示]

――大崎町は「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」と題して「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」構想を打ち出しました。その経緯を教えてください。

松元 SDGs未来都市に選定され、改めて大崎町内の資源の循環について見直し、資源循環を確立するためには大崎町だけではできないことについてもアプローチが必要だという考えに至りました。大崎町でリサイクルしている製品をつくっているのは町外の企業です。ならばその企業に対して過剰包装の廃止や商品の提供方法を変えるよう働きかけていき、資源の消費を極力抑えた社会を実現したい。資源の流れを、社会全体の課題としてとらえ直したのです。そして、課題を外部の民間企業の方々と共に協力して解決していこうと「一般社団法人大崎町SDGs推進協議会(以下、大崎町SDGs推進協議会)」が21年4月に設立されました。

サーキュラーヴィレッジ構想のイメージ図(資料:大崎町)
サーキュラーヴィレッジ構想のイメージ図(資料:大崎町)
[画像のクリックで拡大表示]

――「大崎町SDGs推進協議会」はどのようなメンバーで構成されていますか?

齊藤 大崎町、金融機関(鹿児島相互信用金庫)、放送局(南日本放送)、教育関連(保育園運営などを行うそらのまち)、そして事務局を担当する合作の5社でスタートしました。私は東京の企業から出向して大崎町で政策補佐監を務めた後、大崎町に魅せられ、合作を設立。同協議会の事務局は当社が担当しています。

 「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」を実現するためには、資源が発生するところ――すなわち製造から加工・流通・消費までが循環する仕組みをつくらなければなりません。製造過程の上流を担う企業と一緒になってやっていく必要がある。そのように社会の課題を大崎町から解決することは、大崎町の成長にもつながると考えました。

中村 2020年の4月に大崎町役場で協議会設立の担当になり、以降、齊藤さんとさまざまな企業に話をして回りました。町に欠けていたのが「情報発信力」だったため、より多くの人に訴えかけ、ご協力いただけるよう、まず南日本放送と連携しました。また、多くの企業とパイプを持つ鹿児島相互信用金庫には、企業への働きかけを支援してもらっています。そして、県内で同じく「ジャパンSDGsアワード」を受賞した「そらのまちほいくえん」を運営する企業(そらのまち)にも話を持ちかけ、SDGs教育の分野を担ってもらっています。

2020年10月、⼤崎町SDGs推進協議会設立時の会見の顔ぶれ。写真左からそらのまち代表取締役 古川理沙氏、南⽇本放送代表取締役社⻑ 中野寿康氏、⼤崎町⻑ 東靖弘氏、⿅児島相互信⽤⾦庫理事⻑ 永倉悦雄氏、⿑藤氏(写真:大崎町)
2020年10月、⼤崎町SDGs推進協議会設立時の会見の顔ぶれ。写真左からそらのまち代表取締役 古川理沙氏、南⽇本放送代表取締役社⻑ 中野寿康氏、⼤崎町⻑ 東靖弘氏、⿅児島相互信⽤⾦庫理事⻑ 永倉悦雄氏、⿑藤氏(写真:大崎町)
[画像のクリックで拡大表示]

――SDGs17の目標のうち、ターゲット12以外の扱いに対ついて町はどう考えていますか。

中村 確かにリサイクルや資源循環への取り組みは大崎町のブランドであり、SDGsの中でもゴール12(つくる責任、つかう責任)を重視しています。ただ行政としては、過疎化や少子高齢化など他の課題にも目を向ける必要がある。元来、役場の仕事自体がSDGsのようなところがあり、他のゴールについても目標を達成し、次世代に大崎町をつないでいくことは私たちの責任です。SDGs未来都市に選定された当時、注力すべきテーマとして「教育」も掲げました。大崎町には小・中学校までしかありません。公教育でまかなえないものは、違う形で教育の機会を提供し、これから町の支えとなる子どもたちを支援していきたい。

 例えば、子どもたちが町の取り組みを知り、誇りを持って育ってくれれば、また大崎町のブランド力が強まり、町の持続可能性につながります。そこで学校の授業の一つ、「総合的な学習の時間」を使って、大崎町の環境に関する取り組みを子どもたちに理解してもらう事業も行っています。

紙オムツのリサイクルに向け、官民で実証実験

――大崎町SDGs推進協議会の現在の活動状況について教えてください。

齊藤 今回、協議会では「OSAKINIプロジェクト」を立ち上げ、二つのテーマで協働する企業や団体、エリアの募集をかけています。まず、大崎町の取り組みをより循環型の仕組みにアップデートする企業や団体の募集。もう一つは、「大崎リサイクルシステム」を実際に取り入れてくださる自治体、エリアの募集です。

 前者では様々な企業にこちらからも話を持ちかけている段階です。以前から具体的に話が進んでいるものとしては、ユニ・チャームと協働している使用済み紙オムツから紙オムツ製品への水平リサイクルに関する研究があります。

 実は現在、埋立ごみの3分の1を占めているのが紙オムツです。焼却炉のない大崎町では、長年の課題となっていました。そこで、2016年から隣町の志布志市と大崎町、そおリサイクルセンター、ユニ・チャームの4者で、紙オムツのリサイクルに向け実証実験を始めました。紙オムツの水平リサイクルが実現すれば、世界初の取り組みです。

――ユニ・チャームとはどういう経緯で連携をされたのですか。

松元 日本の多くの自治体は焼却炉を持っているので、紙オムツのごみが注目されにくいのですが、海外では焼却炉が無いところも多く、そういった場所では、ごみとして埋め立てられています。「環境への負荷が大きいのでメーカーの責任としてリサイクルに取り組むべきではないか」と、ユニ・チャームに話をし、理解をいただき連携につながっています。

――後者の「大崎リサイクルシステム」を他の自治体にも広げていく話については?

松元 全国に焼却炉は約1200基あり、その3分の1は更新の時期を迎えています。また、焼却炉には焼却灰が残ります。焼却灰を処理するための最終処分場の寿命も、全国平均で20年を切ると言われています。そこで、焼却炉の更新時期を迎えている自治体に「大崎リサイクルシステム」の導入を提案しているところです。例えば、生ごみや草木は含水量が多く燃えにくいため、プラスチックなど石油製品と一緒に燃やしている現状があります。けれど、生ごみや草木をあらかじめ取り除き堆肥化すれば、燃やすごみも減り、埋め立てる焼却灰も削減できます。ぜひ「大崎リサイクルシステム」をもっと他の自治体にも広げていきたいですね。

――「大崎リサイクルシステム」は海外でも需要がありそうな気がします。

松元 これまでにもJICA事業の一環でインドネシアのごみ処理に関して「大崎リサイクルシステム」のノウハウを伝授してきました。また日本は今、ごみの焼却発電システムを海外に輸出する動きがあるのですが、その際にソフトとして「大崎リサイクルシステム」をセットで提供したらどうかと提案しています。資源化できるものは可能な限り分別し、残りを焼却して発電に使う。日本の焼却炉の数は実に世界の3分の2を占めていると言われています。焼却炉という高コストな廃棄物処理システムを維持するためには多額の税金をつぎ込む必要があることを日本は経験しています。資源循環型の廃棄処理システムの構築を広げていくべきと私は考えています。

インドネシアでのごみ処理事業開始当時の市民向け現地モデル地区説明会の様子。大崎町から派遣した職員が説明を行った(写真:大崎町)
インドネシアでのごみ処理事業開始当時の市民向け現地モデル地区説明会の様子。大崎町から派遣した職員が説明を行った(写真:大崎町)
[画像のクリックで拡大表示]

――大崎町SDGs推進協議会では企業版ふるさと納税の仕組みも活用しているそうですね。

齊藤 2019年にSDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業に採択されて、大崎町のSDGs事業推進に対して国から予算が出ました。検討した結果、人材派遣型の「企業版ふるさと納税」に着目し、大崎町のSDGs事業の中心に据えてやっていこうと考えました。人材派遣型とは、寄付した企業が対象事業に対し人材も派遣して事業を一緒に支援する仕組みです。

 また、21年8月にヤフーが「カーボンニュートラル」をテーマに寄付先自治体を公募していた企業版ふるさと納税に応募し、4600万円ほど寄付をいただきました。大崎町はこの寄付を活用し、「大崎システム」の国内外への展開などで脱炭素化の促進を目指していきます。ただし町としては寄付金に頼るだけでなく、あくまで人材派遣型などを活用することで企業の方々と一緒になって事業を進めていきたいと考えています。

(資料:内閣官房、内閣府)
(資料:内閣官房、内閣府)
[画像のクリックで拡大表示]

企業の投資をどれだけ呼び込めるかがカギ

――SDGsの取り組みについて、今後の展開、目指す方向性を伺います。

松元 個人的な思いとしては、大崎町を「リサイクル国際大学」のような存在にしていきたい。実際、今もリサイクルのことを学びにインドネシアの自治体の方、南米の国の方々が勉強に来ています。交流が広がることで、大崎町も持続可能な町になっていくと思います。

中村 町の職員として地方創生の担当だったときに、地方が抱える課題を解決する糸口がなかなか見つからず、悶々とした経験があります。SDGs推進協議会の担当になり、(合作の)齊藤さんと話を交わしながら「サーキュラーヴィレッジ」の構想の画が描けたとき、やっと私の目指す未来が見えたと思いました。資源の循環と共に、地域の中の仕事も、人と人とのつながりも生まれる。すると、町民が自分の町に誇りを持てるようになる。そうなれば、ずっと大崎町に住み続けたいと思うようになるでしょう。私はこの「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」の実現のために、尽力していきたいと考えています。

齊藤 大崎町SDGs推進協議会の役割は、行政と企業が連携してしっかりとビジネスに乗せることだと思っています。SDGs案件はこれから投資が一番動く分野。その投資をどう呼び込むか。すでに大手企業と連携した商品開発も目途が立ちつつあります。数年のうちに生活をさらに便利にする大崎発の製品が誕生するでしょう。期待で一杯です。また「海外の廃棄物処理に関連したビジネスを進めたい」という企業からの接触もあり、今後の展開が楽しみなところです。

 自治体が官民連携でどういう事業をつくっていくのか。そこにどれだけ投資を呼び込めるのか。大崎町がその一つのモデルになればと考えています。

大崎町(おおさきちょう)
大崎町(おおさきちょう)
鹿児島県東南部・大隅半島の東側に位置する。交通アクセスは鹿児島空港から九州自動車道・東九州自動車道を使用して車で約60分。人口1万2488人(2021年11月末時点)、面積100.67km2。資源リサイクルに力を入れており、2018年、第2回ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞を受賞。
シティラボ東京
シティラボ東京 持続可能な都市・社会づくりを行うためのサステナブルなまちづくりの活動拠点。東京・京橋でスペースを運営するとともに、都市課題解決の知見の集積やコミュニティの提供、プロジェクト創出の支援を行っている。URL: https://citylabtokyo.jp/

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/071300035/112900005/