トライアル・サウンディングで、未来の風景を見る

――トライアル・サウンディングではどんな事業を行ったのですか。

堀井 「あすなろの里」で実施していただいたトライアル事業は4件あるのですが、その中で2つほど紹介したいと思います。

 トライアル第1弾となったのが、かけっこ教室×1泊2日の親子キャンプイベント「かけっこキャンプ」(2019年5月2日~3日、事業主体:スペースキー)です。この時は、スピードという面では驚異的な速さでした。募集を開始して3日後の4月4日にお申し込みをいただいて、5日後には使用許可を出し,そこからキャンプの参加者を募集して5月2日・3日に開催されました。以前からいろんな意見を頂いていた事業者の方ではあったんですが、民間のスピード感、集客力、価格設定など本当に勉強になりました。従来だと、あすなろの里の使用料3000円ぐらいしかお金が入ってこないんですが、家族単位1泊するこの企画だと一組3万円。「(同じ場所で)こんなに収入が得られるのか」と、市としてもびっくりしましたし、公民連携による効果というものが非常に実感できた事業でした。

トライアル・サウンディングで実施した「かけっこキャンプ」の様子(写真:常総市)
トライアル・サウンディングで実施した「かけっこキャンプ」の様子(写真:常総市)
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 もう一つが、本×音楽×キャンプをテーマにしたアウトドアイベント「森の生活」(2019年11月16日~17日、事業主体:日本出版販売 YOURS BOOK STORE、Wonder Wanderers)です。本や食などをテーマとしたコンテンツを用意した1泊2日のキャンプイベントなんですが、こうした発想でのコンテンツづくりは、なかなか行政ではできません。こちらは、もともとは別々の形でサウンディングに参加していただいていたのですが、いろいろ話をしていく中で、2社共同で実施していただいたものです。

――「トライアル」は、その後の事業につながっていますか。

堀井 「あすなろの里」のロッジ棟とキャンプ場の指定管理者を公募したのですが、今回は年間300万円の固定納付金と提案による付加還元額を納めていただくスキームで公募しています*4。これは、サウンディングやトライアル・サウンディングで施設のポテンシャルを確認できていたからだと思っています。おそらく従来の流れで指定管理に出すとしたら、市から指定管理料を払って管理運営をしてもらう、という形になっていたと思います。

寺沢 トライアル・サウンディングは、庁内外のいろいろな人たちに対して、その場所の暫定的な「未来」を見せることができるのが大きな魅力です。「森の生活」を見に来た市長さんはノリノリで楽しそうにしていましたよね(笑)。だからこそ、トライアルからきちんと丁寧に組み立てている事業は、市の意志や市場とかけ離れたものにならず、空間やコンテンツの充足度が圧倒的に違ってくるんです。

堀井 そもそも、「あすなろの里」自体にそれほど魅力があるのかというと、「正直、ちょっと難しいかな」と、私も含め、職員は皆、そう感じていたと思います。ところが実際に民間事業者がトライアルで事業をしてみると、集客力といったことだけでなく、行政だけではつくり上げられないような非常に素敵な風景を見せてもらえました。市としてもその「あすなろの里」のポテンシャルを確認できた。トライアル・サウンディングは民間事業者に市場性を確認してもらうという意味合いが強いわけですが、市にも自信を与えてくれたかな、と思っています。


*4 7月26日、優先交渉権者にRecamp(東京都目黒区)を選定(市の発表資料)