“いい意味で緩い”から、風通しが良くなる

指定管理者公募に先立ち公募概要パンフレットを公開、さらに民間から意見を募った(資料:常総市)
指定管理者公募に先立ち公募概要パンフレットを公開、さらに民間から意見を募った(資料:常総市)
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――「あすなろの里」の指定管理者を公募するときには、事前に、「公募概要パンフレット」を公開してさらに意見を募るなど、計画の立て方も柔軟ですね。

寺沢 常総市の公民連携事業の姿勢の大きな特徴だと思うんですが、“いい意味で緩い”ということが挙げられると思います。

 常総市では、採択された場合に随意契約を保証する民間提案制度による提案募集を実施しています。「公共施設マネジメントに関することなら自由な提案が可能」という条件なのですが、2019年度に、綜合警備保障(ALSOC)の提案した「乳酸菌を活用した地域特産の開発及び地域の活性化」という事業を採択しています。

 この案件の事前相談の内容を聞いたとき、僕はアドバイザーの立場として「面白い提案ですが、これはさすがに公共施設マネジメントとは関係がないし、万が一、そのことが理由で審査に落ちたらもったいない。これはこれで提案制度とは別に切り分けて、協定などで処理した方がよいのでは?」といった提案をしました。でも結局「面白いから提案制度に乗っけちゃいましょうよ」となって審査も満場一致で通りました。提案制度の枠組みに当てはまっていなくても、内容がよければ「イエス」と判断する。こういった“いい意味での緩さ”が官民の風通しをよくしているんだと思います。

――常総市の公民連携の取り組みは「スピード」と「いい意味での緩さ」がポイントと言えそうですね。こういった“文化”が根付いたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

堀井 常総市でファシリティマネジメント(FM)や公民連携(PPP)に本格的に取り組み始めたスタートは2017年ですから、遅い方だと思います。最初は企画課行政改革推進係という組織で職員2人の体制でした。現在は、資産活用課施設マネジメント係で営繕の業務も含め職員3人で担当しています。

 前年の2016年に公共施設白書を公表し、本格的に動き始めた2017年は、FMやPPPの職員研修を集中的に行いました。紫波町(岩手県)でオガールプロジェクトを担当している鎌田さん(鎌田千市・紫波町企画総務部企画課企画課長)や、アドバイザーの寺沢さんに講演に来ていただいたり、あるいは市長と職員10人でオガールに視察に行ったりといった活動が中心でした。最初の頃はなかなか大きな動きはできなかったんですが、いろいろな形で職員にFMやPPPの考え方を浸透させることができた年だったのではないかと今では思っています。

寺沢 アドバイザーの立場から見ると、就任した最初は研修ばっかりやっていて「これで本当に大丈夫なのかなあ」と思ったりもしていました。動きが出てきたのは、翌年(2018年)、市が持っていた旧自動車学校跡地を民間事業者(センスタイムジャパン)に売却できたときからではないでしょうか。

ずっと売れなかった旧自動車学校跡地が「AI・自動運転パーク」に(資料:常総市)
ずっと売れなかった旧自動車学校跡地が「AI・自動運転パーク」に(資料:常総市)
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 2011年に閉校になってからずっと売れずに塩漬けになっていた市有地が2億円以上(2億1736万円)で売れました。しかも、自動運転、画像認証などの非常に優れた技術を持っている事業者さんが来てくれて、教習所のコースを生かした「AI・自動運転パーク」として生まれ変わりました。土地が売れただけでなく、市にとって“スマートシティ”といった文脈でのPRにもつながるわけですから、特に幹部職員の人たちには、FMやPPPへの理解が大きく進んだのではないかと思います。

堀井 そうですね。幹部職員の人たちの理解は、この市有地売却がきっかけで進んだと思います。ただ、一般の職員はそうでもない、というのが実感です。繰り返し行ってきた研修や「公共施設マネジメント協議」などで、内部・外部の人たちといろいろな人との対話を積み重ねて、徐々に変わっていったのかなと思っています。やっぱりいきなりは変われないですからね。