先進的な自治体は、どのように公民連携(PPP)を推進しているのか。流山市の職員時代に多くのPPP事業を手掛け、現在は全国各地の自治体でプロジェクト構築支援を行う寺沢弘樹氏(まちみらい代表社員)が、先進自治体のPPPの進め方を探るコラム「自治体PPP担当者と語り合う!」。連載第2回は、小規模施設のコンセッションなど挑戦的なPPPで注目を集める津山市で総務部財産活用課FM推進係参事兼係長を務める川口義洋氏に話を聞いた。

(写真:日経BP 総合研究所)
(写真:日経BP 総合研究所)

川口 義洋(かわぐち・よしひろ・写真右)
津山市総務部財産活用課FM推進係 参事 兼 係長

1971年岡山県生まれ、1995年明治大学建築学科卒業。1999年津山市役所に入庁以来、建築営繕、建築指導部門の業務に携わる。2015年にFM部門立ち上げに伴い財政課に異動。津山市で実施した2つのコンセッション「旧苅田家付属町家群を活用した施設の管理運営事業」「グラスハウス利活用事業」に関わる。トライアル・サウンディングや民間提案制度など、新たなPPPやFMのルールづくりにも取り組む。

寺沢 弘樹 (てらさわ・ひろき・写真左)
合同会社まちみらい 代表社員

1975年静岡県清水市(現静岡市)生まれ。2001年 東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻修了。流山市役所でファシリティマネジメント推進室長、特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会業務部長などを経て2021年に独立、合同会社まちみらいを設立。著書に『PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本』(学陽書房)

――津山市では、重要伝統的建造物群保存地区(城東地区)の町家をコンセッション(公共施設運営権)方式のPFIでリノベーションし、観光ホテル「城下小宿 糀や(しろしたこやど こうじや。以下、糀や)」として再生させました(2018年に検討開始・2020年7月開業*1。また、津山市ではこの頃を境に、トライアル・サウンディングや民間提案制度、など新しいPPPの取り組みを相次いで実施するようになりました。糀やのコンセッションが、PPPに積極的に取り組む契機になったのでしょうか。

川口義洋(津山市総務部財産活用課FM推進係参事兼係長) 2016年に「公共施設白書」を作成・公表するなど、これまでも僕たちはファシリティ・マネジメント(FM)をかなり本格的にがんばって推進していました。ただ、公共FMって、しんどいんですよね。公共施設の適正化は使命感を持ってやらなくてはいけないんですが、施設を「再編する」「なくす」「廃止する」というのは辛いこともたくさんあって…。

 そんなときに、(講演で市に招いた)寺沢さんの話を聞いたりして、PPPの「一緒に稼ぐ」とか「公民連携で収益を上げていく」みたいな要素をFMと連動できたら「これはめちゃめちゃパワーあるな」と思いましたね。

 それで、本を読んだりセミナーを聴講したりして一生懸命インプットしていたんですが、それをどうやってアウトプットしていいのかよく分からない時期が、最初は結構続いていました。そんなときに新しい市長(現職の谷口圭三市長)に変わって、指定管理者制度で進める予定だった旧苅田家付属町家群を活用した施設の管理運営事業を再検討することになりました。これが一つのきっかけになったのは確かです。


*1 旧苅田(かんだ)家付属町家群を活用した施設の管理運営事業。運営権をホテルニューアワジ(兵庫県洲本市)のグループ会社、HNA津山(津山市)に設定。2020年7月15日に開業した(関連記事12

寺沢弘樹(まちみらい代表社員) 制度をつくった国としても、コンセッションを使うのは空港や水道などもっと巨大なプロジェクトを想定していたはずです。しかも、運営権対価を「最初、ゼロ円でいいです」(2023年3月末日まで無償)とするスキームも普通はやりません。もちろん小規模施設でも制度的にはコンセッションは可能なわけですが、ほとんどの人は想像していなかったと思います。

――田川市(福岡県)で小規模施設におけるコンセッションの活用例はありましたが、500m2規模の伝統的建造物をコンセッションで整備するということで注目を集めた事例ですね。

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コンセッションによる運営が始まった糀やの外観と内観(写真:2点とも津山市)
コンセッションによる運営が始まった糀やの外観と内観(写真:2点とも津山市)
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