2020年来のコロナ禍で、一気に採用が広がったテレワーク。東京都心部のオフィスへの通勤が不要になり、不動産価格の高い東京23区内の住居を引き払って郊外や地方に移住する人が増えている――。それは本当なのか。総務省のデータを見る限り、新型コロナの感染拡大後の2020年、人口が増えた都道府県は1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)と沖縄県だけだ。一極集中の様相は変わらない。ただし、1都3県の中で見ると、郊外への人口移動が見て取れる。
新・公民連携最前線で今年9月に掲載した全国自治体の「人口増減率ランキング2021」は、コロナ禍の影響か、昨年までとは傾向が異なっていた。その1つが、人口増減数を基にしたランキングで、上位の顔ぶれが大きく変わっていたことだ。
2015年~2020年の調査では、TOP10の顔ぶれの大半は東京23区の自治体が占めており、1位は5年連続で東京都世田谷区だった。しかし2021年の調査では、TOP10にランクインした東京23区の自治体は3団体にとどまり、1位も千葉県流山市に明け渡した。東京都の人口は相変わらず増えているが、その “引力”は低下していると言えそうだ。
調査年 | TOP10の中の 東京23区の数 |
1位の自治体 |
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2015 | 8団体 | 江東区(東京都) |
2016 | 10団体 | 世田谷区(東京都) |
2017 | 10団体 | 世田谷区(東京都) |
2018 | 7団体 | 世田谷区(東京都) |
2019 | 7団体 | 世田谷区(東京都) |
2020 | 8団体 | 世田谷区(東京都) |
2021 | 3団体 | 流山市(千葉県) |
●全国自治体・人口増減数ランキング2020
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●全国自治体・人口増減数ランキング2021
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前年はTOP10独占の東京23区、半数で生産年齢人口が減少に転じる
さらに、人口の「コア」の部分である生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の増減率ランキングでも、似たような傾向が見られた。2020年調査では人口増減数のTOP10をすべて東京23区の自治体が占めていたが、その10団体のうち5団体で、2021年には生産年齢人口が減少に転じたのだ。
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この「2020年調査」と「2021年調査」の間に起こった出来事が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大だ。
2020年調査は2020年1月1日時点での過去1年間の人口増減、2021年調査は2021年1月1日時点での過去1年間の人口増減を表しているので、それぞれ新型コロナの国内感染者が確認される前(以下、「コロナ前」)、感染拡大した後(以下、「コロナ後」)のデータということになる。この2カ年のデータを比べれば、人口動態に与えたコロナ禍の影響を読み取ることができそうだ。
そこで次ページ以降では、1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)を対象に、人口動態にコロナ禍が与えた影響について考えてみる。特に、出生・死亡ではなく転居などによる変化を際立たせるために、各自治体の転入超過数(転入者数-転出者数)をベースにした人口動態の変化について、詳しく見ていこう。