2017年度の自治体職員・議員による視察の受け入れ件数が最も多かった事業は、昨年の調査に引き続き、岩手県紫波町が取り組んだ民間主導型の駅前開発事業「オガールプロジェクト」だった。2位には、昨年度と比べ視察数を大幅に伸ばした富山市の「コンパクトシティ政策」が入った。ランキング上位には、まちづくりとの相乗効果を狙う図書館・文化交流施設や都市整備、地域経済活性化施策などが並び、自治体の現在の関心事を浮き彫りにしている。

 日経BP総研(日経BP社)が運営するウェブサイト「新・公民連携最前線」は、全自治体を対象に行政視察の受け入れに関する実態を尋ねるアンケート調査を実施し、結果を「視察件数ランキング」として取りまとめた(調査概要・ランキング算出方法はこちら)。本記事では、総合ランキング、人口規模別ランキング、インバウンド視察ランキングを紹介する。

 全回答事業の団体別一覧は、本特集内の「視察の多い事業一覧2018(東日本編)」「同(西日本編)」をで報告する。

2年連続1位「オガールプロジェクト」への行政視察は年間151件

 岩手県紫波町「オガールプロジェクト」への視察数は、前回調査時(270件)より減少しているものの、今回の調査でも151件で総合ランキング1位となった。

 オガールプロジェクトの特徴は、人口約3万3000人の小規模な自治体でありながら、PFI、代理人方式、定期借地といった多様な公民連携手法を用いて、JR紫波中央駅前の町有地10.7ヘクタールを開発し、にぎわいを創出することに成功した点にある。これが人口規模を問わず幅広い自治体の関心を集めている理由といえるだろう。

オガールプロジェクトで整備した施設の一つ「オガールプラザ」の外観。紫波の農畜産物や加工品などを販売する「紫波マルシェ」、カフェ、居酒屋、眼科・歯科医院、図書館、各種スタジオなどが入居する複合施設(写真:日経BP総研)

 開発した「オガール」には、役場の新庁舎、官民複合施設、サッカー場、多目的スポーツ施設、図書館、宿泊施設、保育園、住宅地、パーク&ライド駐車場などが並ぶ。紫波町は2007年4月から10年をかけてオガールを整備した。

 紫波町はオガールの視察プログラムとして4つのコースを用意しており、オガールのウェブサイトから簡単に申し込める。こうした点も視察数が多い一因とみられる。「オガール標準コース」は、公有地活用や複合開発、デザインガイドライン、公民連携手法、施設概要といったオガール全般について。「役場庁舎コース」は、役場庁舎、PFIに関する視察研修。「図書館(情報交流館)コース」はオガールプロジェクトにおける図書館の役割と運営、「循環型まちづくり・環境コース」は地域熱供給や紫波型エコハウスについてである。

2位、富山市「コンパクトシティ政策」への視察件数が前回調査から急増

 総合ランキング2位は、富山市が10年以上にわたって取り組んできた「コンパクトシティ政策」だ。2017年度の視察件数は140件となり、昨年の調査における視察件数(56件)を大きく上回った。富山市におけるコンパクトシティ政策の特徴は、公共交通を軸として市内に点在する地域拠点をつなぎ「コンパクトなまちづくり」を進めている点にある。

【2位】富山市「コンパクトシティ政策」(出所:「富山市都市整備事業の概要」(パンフレット)の目次ページ)

 同市は公共交通の活性化を最も重要な施策と位置付けており、第三セクター方式によるJR富山港線の路面電車(LRT)化、公設民営型による市内電車(路面電車)の環状線化、既存鉄道の増便、幹線バス路線への新型車両の投入や停留所の整備を進めてきた。

 さらに、北陸新幹線の開業を契機とした一連の富山駅周辺整備によって市内中心部の活性化に取り組んでいるほか、利便性や市内回遊性を高めた公共交通網の沿線と市内中心部をそれぞれ「公共交通沿線居住推進地区」「都心地区(まちなか)」に指定し、助成によってこれらの地域拠点へと居住者をゆるやかに誘導している。その結果、公共交通が便利な地域に住んでいる市民の割合は、2005年の28%から2017年の37%へと増え、コンパクトなまちづくりが着実に進んでいることがうかがえる。

■ 全国自治体・視察件数ランキング2018 ■ 視察の多い事業一覧2018