事業デザイン(1):「まちづくり」の観点を重視

①スタジアムの考え方

 PFI事業の実施に先立ち、北九州市では、新幹線駅である小倉駅新幹線口地区(駅から7分という至近距離)の立地条件を勘案し、次の4つのスタジアムコンセプトを策定しました。

  1. みんながつどい、にぎわいを生む“海ちか・街なか”スタジアム
  2. 夢と感動を生み出す“ダイナミック”スタジアム
  3. 環境未来都市にふさわしい“エコ”スタジアム
  4. ものづくりの街北九州を発信する“街かどショールーム”
北九州スタジアムの位置(資料提供:北九州市)
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 ここで注目すべきは、通常スポーツ施設のコンセプトに含まれることの少ない「街なか」や「ものづくり」といったキーワードが含まれている点です。

 通常、自治体のスポーツ施設の整備はスポーツ部局が担当します。スポーツ部局は「スポーツの振興」「スポーツ競技団体の支援」そして、「(市民が)するスポーツ」の環境整備が主たる仕事となっています。しかしながら、北九州市スタジアム整備等PFI事業については、北九州市の建築都市局(都心・副都心開発室)が進めた事業です。北九州市では、スタジアムの整備に際して「スポーツの振興」はもとより「まちづくり」の観点を重視した結果、建築都市局を主管部局として事業を進めました。この「まちづくり」の観点は、国が進める「スタジアム・アリーナ改革」を先取りしたものであり、国内の先駆的事例いえるでしょう。

②北九州市スタジアム整備等PFI事業の詳細

 この事業は、民間のノウハウを活用することで、より質の高い市民サービスの提供、整備費の縮減、維持管理の効率化を図るため、施設の設計・建設から維持管理・運営を一事業者が一括して実施する「PFI事業」により実施しました。

 スタジアムという事業は、民間のみによる独立採算可能な事業収益構造を持っていません。国はスタジアム・アリーナ改革を目指していますが、国内の公共施設のスタジアム・アリーナにおいては、独立採算による運営は、天然芝の養生の観点から利用日数制限があること、施設の安定的ユーザーであるJクラブのホームゲームは年間30試合もないことなどの要因により難しいのが現状です。こうした背景に鑑み、北九州市ではBTO(Build Transfer Operate)方式によるPFI事業による施設整備を採用しました。スタジアムの設計・施工・管理・運営を行う民間事業者がSPCを組成し、15年間の管理運営を公の施設の指定管理者として行っています。

1.PFI事業者について

 新しいスタジアムを設計・建設・維持管理・運営する予定事業者は平成26(2014)年7月15日、落札者は、九州において複数のPFI事業経験を有する(株)九電工を代表企業とするグループが選定されました。その後、SPCである株式会社ウインドシップ北九州と事業契約が締結されました。SPCの構成(SPC設立当初)は次の通りです。

担  当 企業名
代表企業 九電工
構成企業 建設 奥村組
若築建設
九電工
運営、維持管理、エリアマネジメント、民間自主事業 美津濃
日本施設協会
協力企業 設計・工事監理 梓設計
(資料:北九州市)
2.事業期間と事業費

 PFI事業期間(整備・運営管理期間)は2014年9月から2032年3月まで(管理・運営期間は15年間)となっています。総事業費は約115.4億円となっており、内訳などは下表に示すとおりです。

PFI総事業費 115億3763万円
内訳
設計・建設費 99億8676万円
維持管理・運営費(15年間) 15億5087万円
設計・建設費の財源内訳
totoくじ助成金 30億円
社会資本整備総合交付金 1億3500万円
一般財源 1776万円
市債 68億3400万円
(北九州市資料)
3.事業スキーム

 北九州市スタジアム整備等PFI事業はBTO方式によるPFIが採用されていますが、民間資金を投入する方式とはなっていません。下図のように、SPCが借り入れるのは建設期間中の短期借り入れのみとなっています。厳密にいえば、DBO方式に近い事業スキームと言えます。

 また、SPCは同時にスタジアムの指定管理者となり15年間の管理運営業務を実施することになっています。

(資料:北九州市)
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