事業デザイン(2):エリアマネジメント業務をPFIに組み込む

①なぜPFI事業としたのか

 まず、この事業をPFIという手法で実施した一番の理由は、行政と民間が長期の契約を結ぶことができるという点です。DBOで整備し、管理運営において指定管理者制度を活用しようとすると、北九州市の場合、原則「5年を基本」する指定期間に縛られることになるからです。

 資金力や各種のネットワークを豊富に有する大手企業との長期のパートナーシップ関係を築くことで小倉駅北地区のまちづくり・エリアマネジメントにつなげたいということが、市がこの事業をPFI事業としたことの最大の理由なのです。

 北九州市スタジアム整備等PFI事業は、「まちづくり」のためのスタジアム整備事業であるとの基本的な考え方がありました。市では、「まちづくり」のためのパートナーとの契約がたった5年間で良いのかと考えました。また指定管理者制度は厳密には契約関係ではなく、行政指導ですのでパートナーシップではありません。この事業のように、SPCと市との間で対等なPFI事業契約が結ばれている場合、まちづくりにおいて、より民間側が主体的にコミットしやすくなるといえるでしょう。

②ギラヴァンツ北九州の位置づけ

 事業化準備プロセスにおいて特にスポーツチームであるギラヴァンツ北九州(当時はJ2)と北九州市との情報共有に努めました。ホームスタジアムとするスポーツチームがスタジアムの運営に関与することが望ましいと考えていたからです。当時そのような形態となっていたスタジアムはまだ少なく、下表のように4スタジアムしかない状況だったのです。

■2013年度におけるJクラブのスタジアム運営参加の状況
チーム名 スタジアム
(使用名・愛称)
収容人数
(人)
所有者 指定管理者
鹿島 県立カシマサッカースタジアム 40,728 茨城県 株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー
日立柏サッカー場 15,349 日立柏レイソル ※日立柏レイソル
横浜F・M 日産スタジアム 72,327 横浜市 横浜市体育協会・横浜マリノス・管理JV(ハリマビステム・東京ビジネスサービス・シンテイ警備・西田装美・協栄)共同事業体
新潟 東北電力ビッグスワンスタジアム 42,300 新潟県 アルビレックス新潟・都市緑化センターグループ
※民間所有施設であり指定管理者ではない
(北九州市資料)
* その後、スポーツ庁により「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック」が示され、行政、ホームスタジアムとするスポーツチーム。経済界、学識等による「官民連携協議会」のような組織体を組成し、事業化に取り組むことを推奨しています。この事業はスタジアム・アリーナ改革の動きより以前のプロジェクトでしたので、「官民連携協議会」は組成していませんが、同様の方向性を目指した事業といえます。

 そこで、ギラヴァンツ北九州の意向(スタジアム運営に将来的には参加すべきであるが、当時は人的リソース等の余裕がない)を踏まえ、PFI事業の実施に際しては、公募の枠外に位置づけ公平性を担保することとしました。

2 入札参加者の構成等
(1) (2)省略
(3)Jリーグ公式戦において施設を優先利用する株式会社ギラヴァンツ北九州(以下、「ギラヴァンツ北九州」という。)との関わりは、公正な入札を図るため以下のとおりとする。
ア ギラヴァンツ北九州は、事業者募集段階(入札公告から落札者の決定まで)においては、入札参加グループに参加しない。
イ 入札参加グループ(代表企業、構成企業、協力企業)は、入札事項に関してギラヴァンツ北九州に接触してはならない。
ウ SPC設立後、ギラヴァンツ北九州は本施設の優先利用者として、SPCと協議の上、本施設の維持管理・運営において、連携・協力(一部業務を受託する等)することができる。
(入札説明書より抜粋)

 結果、ギラヴァンツ北九州SPCに参画せず、現在もスタジアムの利用者という立場を継続していますが、2020シーズンにはJ2に昇格、今後はJ1も視野に入ってくることから、クラブの経営規模拡大とともにスタジアム運営への参画も現実味を帯びてくるのではないかと考えられます。

③エリアマネジメント業務を事業範囲に組み込み

 当初より北九州市は小倉駅新幹線口地区の活性化、まちづくりにスタジアムが寄与することを目論んでいました。とはいえ、すでにいくつかのまちづくり団体も設立されていた状況でしたので、事業者公募では以下のようにエリアマネジメント業務を事業者の業務範囲として明確化しました。

4.小倉駅新幹線口地区のエリアマネジメントに関する業務
(1) 業務の目的
事業者は、本施設の運営にあたり、本施設周辺の公共空間、関連施設等の連携・協力を図りながら、小倉駅新幹線口地区全体の活性化ならびに賑わいの創出を図ることを目的に、小倉駅新幹線口地区のエリアマネジメントに協力するものとする。
(2) 業務の内容
事業者は、小倉駅新幹線口地区全体の活性化と賑わい創出を図るため、様々な取り組みを市に提案するとともに、エリアマネジメントについて周辺施設の地権者、運営事業者、利用者、市、まちづくり団体等との綿密な連携・協力を行うものとする
(3) 要求水準
本業務は、小倉駅新幹線口地区全体の活性化と賑わい創出、本施設の有効活用に向け、取り組むこと。事業者は、積極的に小倉駅新幹線口地区の関係者と連携・協力を図り、様々な取り組みを展開すること。また、市が別途実施すれば高い効果がある取り組みについても継続的かつ積極的に提案を行い、イベント誘致等に協力するものとする。(民間自主事業として自ら実施することを妨げない。)
(要求水準書より抜粋)

 2019年のラグビーワールドカップ開催時には、北九州市でウェールズ代表チームの事前キャンプが実施され、練習施設としてこのスタジアムが使われ、隣接する国際会議場で関連レセプションの開催、近接するあさい汐風公園で関連イベントの開催、小倉駅南の商店街も巻き込み、大きな盛り上がりを醸成できたことは「スタジアムを核としたエリアマネジメント」のひとつの形態として評価できる取り組みであったと言えます。

 とはいえ、まちづくりは一朝一夕に出来るものではなく、あと10年あまり続くPFI事業期間においてさらなる成果が期待されるところです。